お酒で赤ら顔は注意⁉「食道がん」のリスクが高まる日常習慣

健康の3大要素といわれる「快食・快便・快眠」に深く関わっている臓器が「胃」と「腸」です。今回は、食道がんのリスクと腸の構造について見ていきます。本記事では、藤田胃腸科病院理事長・院長の本郷仁志氏が、胃腸の健康に関する正しい知識や、氏が普段の診療の中でアドバイスしている健康維持の秘訣等を紹介します。

エックス線検査では早期発見が難しい「食道がん」

【心得その1】

お酒で赤ら顔は食道がんのリスクを疑え

 

前回食道の病気を取り上げましたが、ついでに「食道がん」についても触れておきましょう(関連記事『「思っていたより楽」が60%…胃カメラを怖がってはいけない』参照)。まず、お酒を飲んで顔が赤くなる人は食道がんにかかるリスクが高いと肝に銘じてください。毎日3合以上(1合=180ml)飲み続けると、そのリスクは77倍にもなるのです。

 

なお、男性は女性の6倍、喫煙者は非喫煙者の9倍、アルコールを飲む人は飲まない人の4~8倍のリスクがあります。

 

食道はご存じのように、口から入った食べものを胃に運ぶ役割を担っています。消化や吸収といった機能は持たず、まさに「食の通る道」です。

 

ただ、この道は「蠕動運動」という働きがあり、食べものが逆流しないようにしています。横になってものを食べても胃に運ばれていくのはこの蠕動運動のおかげです。

 

食道がんは胃がんと同じように、初期の段階では自覚症状がほとんど見られません。自覚症状があるとしたら、食道にしみるような感覚があるといった程度。大病が潜んでいるとまでは思いにくい点が厄介です。

 

症状が進むと食べものがつっかえているような感覚を覚えるようになります。食道が狭くなるので、食べものが通りにくくなり、さらに進行すると水を飲むことにも困難を覚えるようになってしまいます。

 

食道がんにかかる人は胃がんや大腸がんに比べてそれほど多くはありませんが、確率が少ないからと油断してはいけません。食道がんには転移が早いという特徴があり、またバリウムを用いるエックス線検査では早期発見が難しいという面もあります。可能な限り、飲酒・喫煙習慣などリスクのある方は内視鏡検査で定期検査を行うようにしてください。

 

[図表1]消化管がんの頻度

栄養吸収だけでなく「免疫力」も備える小腸

【心得その2】

全長およそ7メートル!その長さにはわけがある

 

ここからは腸の病気について見ていきましょう。まずは胃の次につながっている「小腸」から。小腸の長さは、個人差はあるもののだいたい6~7メートル。細かく見ると、胃に近い順から「十二指腸」「空腸」「回腸」に分けることができます。

 

[図表2]小腸の各部の名称

 

小腸がこれほど長い理由は「栄養をしっかりと吸収するため」です。胃でドロドロになった食べものは小腸に送られ、アミノ酸やブドウ糖、グリセリド、脂肪酸といった成分に分解され、吸収されます。

 

小腸の内側(粘膜)は「腸繊毛(ちょうせんもう)」という細かいひだがびっしりと覆っており、その先端にもまたさらに細かなひだ(微繊毛)があります。言うなれば絨毯(じゅうたん)のようになっているわけですが、このことで全体の表面積が大きくなって栄養成分をあますところなく吸収できるのです。ちなみに、小腸の表面積はテニスコート1面に匹敵するといわれています。

 

近年、腸には「免疫」の働きがあることが分かってきました。「免疫」とは外部から侵入してきた細菌やウイルスなどから身を守る働きのこと。例えば風邪をひきやすい人がいますが、こういう人は「免疫力」が低く、ウイルスなどから身を守る力が弱いために風邪になるということです。

 

逆に免疫力が高いと、風邪やインフルエンザにかかりにくい傾向があります。また、近年では、がん治療の現場でも「免疫」が注目を集めています。免疫の「疫」とは疫病のこと。悪性の伝染病といった方が分かりやすいかもしれません。この「疫」から「免れる力」を腸は備えているわけです。

 

小腸は栄養成分を吸収するのが主な役割ですが、栄養成分と一緒に細菌やウイルスまで吸収してしまうと健康に影響が出てしまいます。そこで、小腸の粘膜には多くの免疫細胞が存在し、体に害を与えるものをうっかり吸収してしまわないよう、常に見張っているわけです。

腸内環境の維持が全身の健康に繋がる

【心得その3】

全身の健康を司る「腸内細菌」を大切に

 

次に「大腸」ですが、大腸は長さが約1.5メートル。主な役割としては「便をつくる」ことが挙げられます。小腸から送り込まれた食べもののカスは栄養分を吸収されたといっても、水分が残っています。その水分を大腸はゆっくりと吸収していき、固形の便にするわけです。

 

大腸は細かく分けると「盲腸」「結腸」「直腸」から構成されています。

 

[図表3]大腸の各部の名称

 

盲腸は小腸との結合部。よく「盲腸の手術を受けた」といいますが、この場合の「盲腸」は、盲腸から飛び出している袋状の臓器(虫垂)を指します。実は、虫垂は長らく、どのような働きをしているのかが分かりませんでした。役割が分からないうえに虫垂炎を引き起こすことから、「無用の長物」と見られていたこともありますが、最近では、研究によって「腸内細菌の状態を良好に保つ働きをしている」という説が出ています。虫垂もようやく日の目を見られるかどうか、今後の研究の成果が待たれるところです。

 

結腸はさらに「上行」「横行」「下行」「S状」に分かれますが、食べもののカスはこの結腸の中を上下左右に移動しながら、徐々に水分が吸収されて、やがて便になります。

 

便が直腸に届くと、直腸は脳に信号を送ります。それが「便意」となって肛門から便が排泄されるというわけです。

 

大腸には約100兆個もの腸内細菌がいて、顕微鏡で覗くとその分布はまるで花畑([英]flora)のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれています。腸内細菌には体に良い働きをする「善玉菌」と悪い働きをする「悪玉菌」、どちらでもない「日和(ひより)見菌」があります。これらは、善玉菌が2、悪玉菌が1、日和見菌が7の割合が良いとされ、バランスが取れていれば、体にプラスの働きをしてくれます。プラスの働きの一つが「免疫」です。外部から大腸に侵入してきた「新参者」を追い払おうとします。害をもたらす菌はもちろんですが、体に有効な菌であっても快く受け入れようとはしません。

 

これは自分たちのいる腸内の環境を保とうとするためです。さしずめ「よそ者に自分たちの世界をかきまわされたくない」といったところでしょうか。結果として菌やウィルスは体外に排出されて健康を保つことができるというわけです。

 

ただ、腸の機能が弱ると腸内細菌たちの働きもにぶってしまいます。「腸活」に励んでいる人はご存じでしょうが、腸内の環境が乱れるとお腹の不調や肌荒れの原因になります。健康維持のためにも、腸を大切にし、腸内細菌に活発に働いてもらえるようにしましょう。

藤田胃腸科病院 理事長・院長

1963年生まれ。1989年、大阪医科大学を卒業。2003年より藤田胃腸科病院院長に就任。2009年より理事長も兼務。2019年より、大阪医科大学臨床教育教授。胃腸科および内科の専門病院として「早期発見・早期治療により患者様の信頼に応える」を基本理念に、日々診療に励む。地域での啓発活動も積極的に行っており、セミナーやイベント、講演会等で発表多数。胃がん・大腸がん検診に長年携わり、大阪府がん対策推進委員、病院のある大阪府高槻市では胃内視鏡検診導入・検討委員長や高槻消化器疾患談話会代表世話人を務めている。

著者紹介

連載快食・快眠・快便を実現!不調・病気知らずの「胃腸」をつくるための心得

胃腸づくり50の心得 悩める現代人へ、専門医が贈る正しい胃腸の知識と守り方

胃腸づくり50の心得 悩める現代人へ、専門医が贈る正しい胃腸の知識と守り方

本郷 仁志

幻冬舎

食物繊維の取りすぎで便秘が悪化⁉ 間違った情報をうのみにしていると不調が引き起こされることも…。阪府高槻市で50年間にわたり地域の健康を守り続けてきた専門医による胃腸のバイブル。年間1万2000件の内視鏡検査を行う藤田…

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