「思っていたより楽」が60%…胃カメラを怖がってはいけない

胃がんの早期発見には定期検査が有効であると認識しながら、実際には自覚症状が出るまで受診しない患者が多くいます。今回は、胃がん発見動悸のデータから、定期検査の重要性を再確認します。※本記事では、藤田胃腸科病院理事長・院長の本郷仁志氏が、胃腸の健康に関する正しい知識や、氏が普段の診療の中でアドバイスしている健康維持の秘訣等を紹介します。

医療機器の進歩で胃カメラの苦痛は少なくなっている

【心得その1】

胃カメラを怖がってはいけない

 

当院を訪れた患者さんを対象に、胃がんが見つかったきっかけについてデータをまとめたところ、興味深い事実が浮かび上がりました。

 

胃がんの発見動機は、定期検査が38%、検診が13%。自覚症状が約半数。 藤田胃腸科病院調べ
[図表1]胃がん発見動機 胃がんの発見動機は、定期検査が38%、検診が13%。自覚症状が約半数。
藤田胃腸科病院調べ

 

慢性胃炎などの経過観察時の胃カメラによって見つかった方は37%、検診(胃バリウム検査)をきっかけに胃カメラ検査で見つかったのが13%、残りは50%です。「腹痛を感じたから」が29%を占めていて、次に「腹部に不快感を覚えたから」が15%、そして「吐血・下血をしたから」が6%となっています。これらはいずれも自覚症状が出ているということです。

 

胃がんは早期のときは自覚症状がほとんどないと説明しました。これは逆にいえば、自覚症状が出たときには、かなり進行している可能性が高いということ。実際、こうした自覚症状によって来院した患者さんのなかには「すでに手遅れ」と言わざるを得ない人もいました。

 

前回ご紹介した、5年以上にわたって内視鏡検査を受けておらず胃がんが見つかった人の約半数が進行がんだったことを併せて考えても、検査を受けることの重要性がお分かりいただけるはずです(関連記事『ピロリ菌除菌の5年後に「胃がんで死亡」の患者に学ぶこと』参照)。

 

また、当院では「がんの早期発見のために定期検査が必要だと思いますか?」というアンケートも行っています。それによると「はい」と答えた方が74%を占めました。「分からない」と答えた方は11%、「いいえ」と答えた方は4%です(無回答は11%)。

 

ほとんどの方が胃がんの早期発見のために定期検査の必要性を感じていることが分かります。しかし現実には検査を受けない方が少なくありません。その理由についてもアンケートをしました。

 

それによるとダントツで多いのが「検査が苦痛」で半数以上。続いて「時間がない」「受診が面倒」「費用が高い」といった理由が並びます。

 

確かに、昔の胃カメラは苦しいものでしたから、「胃カメラはこりごり」と感じる人がいたと思います。しかし、医学の進歩と同様に医療機器も進化していますから、現在では胃カメラは細径化し、鎮静剤(眠り薬)を使えばほとんどの方が苦痛を感じることが少なくなっています。

 

実際、私の病院のアンケートでも、半数以上の方が「苦痛はなかった」と答えていますし、初めて胃カメラを経験した患者さんでは、「思っていたより楽」と答えた人が60%を占めています。「思っていたくらいの苦痛」は31%、「思っていたよりつらい」が9%です。さすがに「苦痛がゼロ」とは言えませんが「そこまでつらいものではないですよ」とは言っておきたいところです。

 

藤田胃腸科病院調べ
[図表2]内視鏡についてのアンケート結果①苦痛の有無 藤田胃腸科病院調べ

 

 

藤田胃腸科病院調べ
[図表3]内視鏡についてのアンケート結果②検査が初回の人 藤田胃腸科病院調べ

 

準備は当日の朝食を抜くぐらい(飲水は可)で、検査に要する時間はわずか5分から10分。胃カメラは口から挿入するものと鼻から挿入するものとがありますが、どちらを選ぶかは本人次第。鼻のほうはレンズが小さいため解像度が若干低くなりますが、飲み込むのが苦手という人はこちらを選んでも構いません。医師のアドバイスも参考にしながら選択してください。

食生活の欧米化が「胃食道逆流症」の増加の原因に⁉

【心得その2】

朝になんだか胸がムカムカ。「胃食道逆流症」は生活次第で改善できる

 

近年、テレビなどで「逆流性食道炎」という言葉を耳にするようになりました。これは「胃食道逆流症」のうちの一つで、病名からも察しが付くように、胃液が食道へと逆流することで不快な症状が起きてしまう病気です。

 

具体的にはみぞおちのあたりがじりじりする胸焼け、酸っぱいもの(胃液)がこみあげてくる呑酸(どんさん)、食道の粘膜が傷つく食道炎等が挙げられます。胃食道逆流症は、次の3つのタイプに分けられます。

 

1.自覚症状はあるのに、(胃カメラ上)食道炎はない

2.自覚症状があって、(胃カメラ上)食道炎もある

3.自覚症状はないのに、(胃カメラ上)食道炎がある

 

1のタイプを「非びらん性胃食道逆流症」、2と3を「逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)」と呼びます。非びらん性胃食道逆流症は機能性疾患で、逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)は器質的疾患ということになります。

 

胃食道逆流症は肥満の人のほうがリスクは高く、欧米に多いとされる病気でした。しかし、現在では食生活の欧米化や病名が周知され診断の付く人が増えるなどの理由で、日本の成人の1割から2割がこの病気に悩んでいるといわれています。また、ピロリ菌に感染している日本人が少なくなり、胃の酸をたくさん分泌するようになったことも理由として指摘されています。

 

進行してもすぐに命を落とすようなことはありませんが、食事を楽しめなくなったり、睡眠にも支障を来したりと、健康に不可欠な「快食」と「快眠」が奪われてしまうので、なるべく早めに対応したいところです。

 

ちょっと症状が気になる程度であれば、基本は、胃液がたくさん出るような食事スタイルを改めること。具体的には、食べ過ぎや寝る前の食事の禁止です。また、脂っこいものやチョコレート、コーヒー、炭酸飲料、柑橘類、アルコールは人によっては遠ざけた方がいいでしょう。

 

なかなか症状が改善されなければ、食生活の改善に合わせて病院にも行くようにしましょう。その際にはできれば内視鏡検査を受けてほしいです。なぜなら、胃食道逆流症以外の病気である可能性も考えられるからです。

 

[図表4]胃がん対策のまとめ

藤田胃腸科病院 理事長・院長

1963年生まれ。1989年、大阪医科大学を卒業。2003年より藤田胃腸科病院院長に就任。2009年より理事長も兼務。2019年より、大阪医科大学臨床教育教授。胃腸科および内科の専門病院として「早期発見・早期治療により患者様の信頼に応える」を基本理念に、日々診療に励む。地域での啓発活動も積極的に行っており、セミナーやイベント、講演会等で発表多数。胃がん・大腸がん検診に長年携わり、大阪府がん対策推進委員、病院のある大阪府高槻市では胃内視鏡検診導入・検討委員長や高槻消化器疾患談話会代表世話人を務めている。

著者紹介

連載快食・快眠・快便を実現!不調・病気知らずの「胃腸」をつくるための心得

胃腸づくり50の心得 悩める現代人へ、専門医が贈る正しい胃腸の知識と守り方

胃腸づくり50の心得 悩める現代人へ、専門医が贈る正しい胃腸の知識と守り方

本郷 仁志

幻冬舎

食物繊維の取りすぎで便秘が悪化⁉ 間違った情報をうのみにしていると不調が引き起こされることも…。阪府高槻市で50年間にわたり地域の健康を守り続けてきた専門医による胃腸のバイブル。年間1万2000件の内視鏡検査を行う藤田…

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