1つの銘柄の上昇力には「限り」がある
株を買うときには、株価を押し上げると何らかの材料がある銘柄を選んでいるはずです。「こういう材料があって、このように評価されるから株価が上がっていくはず」というストーリーを描いて、購入後は予想どおりに株価が上がっていったとします。
では、株価はどこまで上がるのでしょうか? 買うときに注目した材料や描いたストーリーで、どの程度株価を上昇させることができるのでしょうか。
株価が永遠に上がっていくことは、残念ながらありません。もちろん、業績への影響力が大きく、長い期間、株価を押し上げていくようなインパクトのある材料もあります。たとえば、中国株のテンセント(インターネットサービス大手)は10年間上がり続けて株価は当初の100倍を超えました。世界中の投資家からの注目度も非常に高く、世界中から資金が集まり株価が大きく上昇し続けたのです。
ただ、テンセントは一般的な例とは言えません。ほかの多くの銘柄の場合は、そこまで長期間、上がり続けることはないと言ってもよいでしょう(もちろん、全体相場の状況などでも異なります)。通常は、ある程度株価が上昇すると、その後はもっと緩やかな上昇になっていくか、上昇が止まって横ばいになるか、下がり始めるというケースがほとんどです。
少ない資金を大きく増やしていこうというときに、株価の上昇力が弱まっている銘柄を保有し続けることは得策ではありません。1つの銘柄の上昇力には限りがあることを理解して、同じ銘柄でいつまでも利益を得ようとするのでなく、次々と上昇力の高い銘柄に乗り換えていくことが必須です。
ちなみに、かつて日本経済が高度成長期にあった頃には、日本株の成長期待の大きい銘柄を買ったら、あとは持ち続けるだけで株価がどんどん上昇したという例もいくつもありました。
しかし、それは経済成長率が10%以上あったような時代の話で、現在の投資環境とは大きく異なります。成熟した日本においては、企業も過当競争に巻きこまれやすいからです。そのため、「乗り換え」を前提とする必要があるのです。
限りある資金を有効活用できる「乗り換え」
1つの銘柄の上昇力には限りがあるので銘柄の乗り換えは必須、と前の項目で説明しました。とは言え、「まだまだ上がる」「もう上がらない」の間に明確なラインがあるわけではありません。
株価の上昇ペースが鈍ったとしても、「まだ上昇が期待できるのではないか、今利益を確定してはもったいない」と思えるような銘柄も、実際にはよくあります。資金に余裕があるのならば、「もっと上昇するだろう」と考える銘柄については保有を継続し、しばらく様子を見ても構わないと思います。その上で、より上昇が期待できそうな銘柄も、新たな資金で追加購入すればよいだけです。
しかし、30万円からスタートしてまだあまり利益も出ていないという状態では、「今持っている銘柄をそのまま保有して、その上でもう一銘柄を買う」、つまり両方持つというのは資金的に難しい場合が多いのではないでしょうか。
そうなると、どちらかを選ぶしかありませんから、より上昇が期待できそうな銘柄に乗り換えたほうが、限りある資金を有効活用することになります。資金が少ない間こそ、資金を増やすために上がる銘柄への乗り換えをしっかり行わなくてはいけないのです。
もちろん、乗り換えた銘柄が「結果的にはそれほど上昇しなかった」ということもあるかもしれません。乗り換えないほうが利益が得られたということもあります。乗り換えも、100%成功するわけではないのです。でも、そのときはまた乗り換えればよいだけです。失敗を恐れずに、必要だと思った乗り換えはやっていきましょう。