甲府駅周辺は「マンション価格」が下がりにくい
都心を中心にタワーマンションブームが続いています。都心を歩けばしばしば建設中の建物があり、マンションのモデルルームの案内も目に入ります。これほどまでに多くの人を魅了するマンションですが、最近のマンション事情はどうなっているのでしょうか?
以前ご紹介した記事、『通勤圏の地方都市へ! 家計改善&戸建て所有を「移住」で実現』では、地方移住のいわば「住居編」として、土地価格について東京と山梨を比較し、地方移住が最適な投資になりうるかを検証しました。ここではその続きとして、マンションにスポットをあてて見ていきましょう。
<東京都のマンション事情>
まず、以下の図表をご覧ください。国土交通省の平成30年度住宅経済関連データによる、首都圏のマンション価格、住宅地価格、住宅建設工事費、消費者物価指数の累積変動率のグラフです。昭和50年の指数を100として各データの推移を表したものですが、まず目を引くのが、マンション価格の推移です。平成3年の数値に迫る勢いで、マンション価格が上昇し続けています。
上昇要因としては、相変わらずのタワーマンション人気が影響し、億ションと言われる高価格帯のマンションの登場も牽引しています。そしてそのマンション建設コストも上昇傾向にあります。
どの業界でもいえることですが、原材料と人件費の高騰は費用に影響を与えています。マンション価格と相反して、住宅地価格はピーク時と比較すると割安となっています。マンション購入からシフト変更し、「土地+戸建て」の購入を検討するのもいいかもしれません。
<山梨県のマンション事情>
タワーマンション熱が継続中の東京都ですが、地方都市のマンション事情はどうでしょうか。土地価格の安い地方の場合、東京にくらべると戸建ての購入費用はずっとリーズナブルです。そのような場所に、あえてマンションを購入するメリットはあるのでしょうか?
現在、山梨県内で分譲型の新築マンションの建設が行われているのは、山梨県の県庁所在地となっている甲府市です。そして甲府市のなかでも、JR中央線の甲府駅に近いエリアで建築が行われています。数でいえば、指で数えることができる程度で、それ以外の地域では新築分譲マンションは建設されていません。東京都と地方でのマンションの建築状況とは大きく違います。
甲府駅に近い新築分譲マンションの価格帯は、70㎡で約3,000万円台といったところでしょうか。山梨県在住の私としては、マンションでなくても新築の土地付き一戸建てが購入できると思える価格設定ですが、売れ行きは順調です。
その理由のひとつとして、東京都に本社のある企業に勤める方が山梨に転勤した際に購入するというケースがあげられます。山梨県内のなかでも、甲府駅付近はJRやバス・タクシーなどの交通機関の集約所となっており、JRが使える東京出張が多い方には人気のエリアとなっています。それだけでなく、食料品スーパーから教育機関に至っても、駅周辺に集中しています。
もし別の地域への転勤があった場合には、中古マンションとして売却を検討することになりますが、この地域はそもそもマンションの総数が少なく、そのため、築20年以内の物件であれば、大きく資産価値を落とすことなく、市場に流通します。
マンションのリノベブームも追い風に
広い庭付き一戸建てのマイホームにこだわりがある方には、地方のマンションは魅力の少ない不動産かもしれません。ただ、山梨の甲府駅周辺のマンションの場合、売却のしやすさという点が大きなメリットとなっています。山梨県のマンションの需給バランスは、現状では明らかに「需要>供給」となっています。東京に近く、駅周辺の開発も進んだ利便性の高い地域でありながら、マンションの総数自体が少ないことが、市場での流通を容易にしています。
もうひとつメリットをあげるなら「資産価値」です。土地つきの中古戸建てと中古マンションの価値を比較した場合、土地付きの戸建ては築年数にもよりますが、建物の価値が売却価格に反映しづらく、「土地の価格+おまけ」という傾向になりがちです。その点、マンションに限っては、そもそも土地の価値というよりも、「一部屋」としての価値を比較的長く維持することが可能です。また、近年の中古マンションのリノベーション人気も追い風となっています。
東京都と山梨県での戸建て・マンション事情について解説しましたが、筆者は地方移住を「投資」のひとつとして考えることを提唱しています。もちろん、投資として考える以上、投資に見合ったリターンがなければなりません。
本記事で解説したように、地方であれば、東京都で購入するより大幅に低い金額で、戸建てやマンションを購入することが可能です。都内への通勤も可能で、場所を選べば生活の利便性も高く、そして、マンションの値崩れも少なく売却も容易…。筆者がご紹介したのは山梨の物件についてですが、ほかの地方都市であっても、同様の価値を持つ物件がきっとあることでしょう。
少ない資金で都市部と変わらない利便性が享受できる地方移住。生活費の抑制を投資に置き換えるという視点だけでなく、自然豊かなストレスの少ない環境に身を置くことも含め、多忙な現代人の新しい資産形成のかたちとなるのではないでしょうか。
たまねぎFP
奥山 茂仁
ファイナンシャルプランナー(AFP)