中間層を核に拡大するベトナムの消費市場
現在、ベトナムの中間層は約1000万人(国民の約10%)にのぼり、その半数がハノイとホーチミンに集中しています。この中間層の数は、2020年までに3000万人(国民の約30%)を超えると予想されています。この数は現在のタイの中間層の数に匹敵します。
今後、中間層が増えていけば、消費財の普及率が高まる事が予想されます。現在の消費財の普及率は下記のようになっております。
[図表]世帯当たり耐久消費財普及率(2009年)
少しデータは古いですが、ベトナムでの各消費財の普及率は非常に低く、エアコンは20世帯に1台、冷蔵庫は3世帯に1台、乗用車に至っては100世帯に1台しか普及していません。
人口が9000万人を超え、購買力のある中間層が増大し、各消費材の普及が加速するベトナムは、有望なマーケットと位置付けられるでしょう。
もちろん、中間層が増えれば、不動産市場においても追い風になる事は必至といえます。TPPによる関税メリットを活かす企業が注目をされがちですが、内需の恩恵を受けるべくベトナム進出を考えている企業も数多く存在している点にも注目すべきでしょう。
ODA以上の送金をする海外在住のベトナム人「越僑」
越僑(海外各国に在住するベトナム人)は世界100か国に約450万人が住んでおり、このうち約80%は先進国に定住しています。現在のベトナムの人口が約9200万人ですので、人口比では約5%になります。
中でも特に多いのがアメリカで、越僑全体の3分の1以上を占めています。越僑の多くは、ベトナム戦争が終結した1975年にベトナムが社会主義化する事を嫌って国外に脱出した人々で、ホーチミンからの亡命者が多いと言われています。
この越僑がベトナムに送金している金額が年間1兆円を超えていると推測されます。
ベトナムへの送金額は年々増加しており、10年前と比べると約3倍にまで増えています。これは正規の金融機関を経由しているものであり、地下銀行などを経由して送金される資金にはこれとは別で1000億円単位にのぼるといわれています。
越僑からの送金額はベトナムのGDPの約5%に相当し、ベトナムが受けている政府開発援助(ODA)よりも多いため、ベトナム経済に与える影響は非常に大きいと考えられます。
この送金額の半分近くはホーチミン在住の親族などに送金されています。賃金水準が低いベトナムで現地人が、外国人が購入しているような高級物件を購入できるのはこのような背景があるからではないでしょうか。