住宅需要が高まる都市部、不動産価格の上昇は不可避か
ベトナムの人口は現在9,300万人を超えています。しかしながら、人口の増加が著しいのはハノイやホーチミン市などの大都市部に限られています。現在、人口の36%である3,400万人が都市に住んでいるものの、2020年には人口の42%となる4,000万人が都市人口になる見込みともいわれています。
これはベトナムだけでなく世界的な傾向であり、1950年には世界総人口の3分の1である8億人が都市に住んでいましたが、現在は総人口75億人のうち半数近くの30億人が都市で暮らしており、2050年には総人口90億人のうち3分の2近くが都市人口になるといわれています。
この傾向に伴って、ベトナムでは10代以下の人口ピラミッドに少子化の傾向が表れるようになりました。給与の高い職業を得るために若い世代が都市部に居住するようになり、核家族化の中で子どもを育てる構図が定着しています。先進国に限らず、新興国でも少子化が進み始めているのです。
しかしながら、少子化とはいっても人口が急増する都市部では、住宅供給が必要になることから、不動産価格の上昇は避けられない状況となっています。
以前は低評価だった地域の地価も急上昇
人口集中が続くベトナムの大都市の中でも外国人に人気が高いのは、気候が安定し、生活インフラが整備されているホーチミン市です。ホーチミン市1区のベンタイン市場前からトゥードック区(Thu Duc)までの間は日本のODAによる都市鉄道の建設が進んでいます。
その影響もあり、ホーチミン市郊外のトゥードック区(Thu Duc)の地価は、2012年以降徐々に上がり始めています。2012年1,000万ドン/㎡(約5万円)であった地価が、2017年には、2,700万ドン/㎡(約13.5万円)に上昇したことが伝えられています。この地域の地価が、5年間で約170%上昇したことになります。
このような傾向は、都市鉄道が建設されているトゥードック区(Thu Duc)に限らないようです。特に、以前は価値があると見なされていなかったホーチミン市周辺部の地価上昇が目立っているようです。人口の増加に伴い、周辺部の宅地開発が進んでいることが、このような大都市部の地価上昇に影響しているのでしょう。
特に値上がりが激しいのは、ホーチミン市南部の湿地帯であるカンジオ県(Can Gio)や、北西部でカンボジア国境に近く、ベトナム戦争当時のゲリラの隠れ家として掘られたクチトンネルがあるクチ県(Cu Chi)などです。以前は二束三文の土地でしたが、ホーチミン市の都市化が影響し、地価は急上昇しているようです。