恒常的な貿易赤字で下落が続いたベトナム・ドン
外国人規制緩和と実需による購入で活気に沸く不動産市況ですが、一方、海外からの投資家にしてみると、不動産投資成果に影響を与える為替はどうでしょうか。
ベトナムは、自国通貨としてドンを採用しています。ただ、国内ではUSドルの流通も一部残っており、タクシー、街での買い物など多少割高にはなりますが、USドルを受け取ってくれるお店もまだまだ残っています。この点においては、完全な信任を得ている通貨とは言えないでしょう。
ベトナム・ドンは、対USドルベース継続的に2011年まで下落を続けてきました。この通貨下落の背景にあるのは恒常的な貿易赤字です。ベトナムの主要な輸出が衣料等の軽工業品といった安価な商材が中心だったことに比較し、鋼材やガソリンといった高付加価値の商材を輸入に頼ってきたため、慢性的な貿易赤字に悩まされてきたのです。その結果として、1992年から対USドルでは、約30%も下落してきました。
電子部品の輸出増で今後の為替は安定的に推移する!?
2012年以降、為替下落が止まり安定してきています。スマホを中心に、電子部品という高付加価値製品の輸出が増え、貿易収支が黒字に転換したことが理由です。
韓国LG電子は、80万㎡の世界最大生産工場を展開することを発表しています。また、同じく韓国サムスンは、EL パネル工場への投資額を2400億円積み増しし、3700億円とすることを決めています。スマホを中心とした電子部品の輸出は、靴や衣料の軽工業品の輸出高をこえ、一大輸出品目に成長しているのです。
今後も安価な人件費、TPPによる減税恩恵、また中国への生産拠点集中リスクの敬遠もあり、今後も継続的な外資系企業の工場進出が続き、貿易収支も安定するのではないかと思われます。結果、為替は以前にくらべると、安定的に推移するのではないかとの見通しをもたれています。
ただ注視すべき点は、2015年の貿易収支が赤字に転落していることです。スマホの部品輸出に頼っていることが原因だと考えられています。裾野産業がまだ未熟であり、裾野産業を含めた外資進出が貿易収支、ひいては為替安定に重要なポイントがあるといえます。
中長期での投資となる不動産投資、為替については、一時の上がり・下りに一喜一憂するのではなく、長期的な視点で見て頂くのが重要なポイントです。