不動産投資の落とし穴!?建物の寿命を見越す「解体投資」とは?

戦後、大規模に整備された日本のインフラが、老朽化により崩壊の危機に直面しています。「物理的な寿命=耐用年数」について十分に議論されてこなかったため、思うように修繕が進んでいないのです。不動産投資も同じリスクを抱えており、物件の修繕、さらには解体まで想定することが重要であると、第一カッター興業株式会社で経営企画室長を務める石川達也氏は警鐘を鳴らします。本記事では、不動産投資において、多くの投資家が念頭においていない解体投資について紹介します。

建物は作ればいつかは解体を迎える

前回(関連記事:『節税効果も高まる!不動産「継続投資」のスゴい効果とは?』)、資産価値をコントロールする役割がある継続投資の重要性について説明をしました。を訴えています。今回は、不動産投資において最も馴染みが薄く、検討要素に入ってこない解体投資について、その概要と重要性を説明していきます。

 

そもそも建物などのインフラ構造物には寿命が存在します。その構造や使用されてきた条件や環境によって、その寿命は変化しますが、永遠ということはありません。鉄筋の入っているコンクリート構造物などが劣化するというのは、なかなか実感しにくいかもしれません。構造物は固くて頑丈ですし、見た目で数年経ったところで汚れは付着しても劣化しているのがわかることは少ないでしょう。

 

筆者はこれまで、全国の劣化したコンクリートを数多く見てきました。大型の車両が年中往来する橋の裏側に回ったら、床版(=人や物の重さを支える床)に穴が開いていて地上の光が橋の裏側から見えていたり、コンクリートのひび割れを起因としてコンクリートの中にある鉄筋が腐食した挙句に完全に消滅してしまっていたりと、建設後、数十年経過したコンクリートの危機的な状況を目の当たりにしています。

 

高度経済成長期に爆発的に増えた社会資本ストック(=インフラ構造物の累計)は、計画的な維持・補修がされてこなかったこともあり、予想よりも早く劣化が進行し寿命を迎えることになってきているケースも多く、維持・補、または解体をしての新設という需要は、今後も堅調に推移していくことが明らかです。企業目線では堅調な市場で安心なのですが、人口減少を迎えより効率よく税金を使う必要性が高まるなかにあって、維持・補修・解体・更新という費用の増大は、自治体にとって死活問題になってきています。

 

賃貸不動産においても、短・中期で更新が必要な設備は多く存在しますが、建物自体の寿命も確実に存在し、いつかは解体する時がやってきます。あなた自身の設定している投資期間が、新築~解体という建物のライフサイクルのどの部分に該当するのかによって、解体費用が実際に発生することはケースとしては少ないことかもしれません。しかし投資期間が解体時期に近づけば近づくほどに、解体費用についての検討が現実味を帯びてきます。

新築から解体までの投資のポイント
新築から解体までの投資のポイント

解体費用が膨らめばリセールバリューは低下する

あなたが設定する投資期間が10年程度の場合、所有する賃貸不動産を将来的に売却することが想定されています。この場合、解体まで検討することはほぼないでしょう。しかし設定する投資期間内に建物の寿命を迎える場合、物件の解体についての想定を迫られることも考えられます。木造物件であれば一般的に解体費用は少額となりますが、コンクリート物件は階数が増えるにつれて解体費用はどんどん膨らんでいきます。

不動産価値において、土地は時価こそ変動しますが価値が無くなることは極めて少ないといえます。しかし、上物(うわもの)といわれる建築構造物は、寿命と共に無価値へと変化していきます。むしろ解体が必要になることからマイナスの価値になると表現してもいいかもしれません。もちろん解体が必要な状態でも、解体は買主側に任せることでそのまま売却も可能ですが、結局は見込まれる解体費用を差し引いた売却価格となってしまいます。

経年による不動産価値の変化
経年による不動産価値の変化

 

リセールバリューとは

 

 リセールバリュー = 物件価値 ― 解体費用

 

解体費用を増大させる要因は?

建造物の解体とひと口でいっても、その金額を左右する要素は様々です。解体を始める前に、土壌調査によって土壌汚染の有無や、法律で規制されている材質を含む塗料や材質が使用されていないかを調査する必要があります。特定の事業用地でない限り土壌調査義務はありませんが、その疑いがある場合はその土地を次に買う人の依頼で調査が必要となることもあります。現在では法律で規制され使用できない塗料や建材であっても、何十年も前に建造された物件には使用されていることもあり、調査が必要です。

 

そして解体される建造物の材質や規模(低層か高層か)、地下構造の有無などにより、必要な解体重機が変わり費用は大きく変動します。さらに隣地に生活している人がいる、学校がある、病院があるなど近隣状況によっては、解体で発生する騒音や振動が許されないケースがあります。その場合は、静音や無振動工法によって解体を進める必要が出てきますが、この場合は通常の解体費用の倍以上の費用が掛かることがあります。特に都市部では騒音・振動は大きな問題となることから、安易な解体費用の見積りは危険といえるでしょう。

 

解体後、発生する部材は鉄などのリサイクル価値のあるもの(有価物)を除き、すべて産業廃棄物として適切な処分が必要となります。適切な処分とは、専門の産業廃棄物業者に対象物を運びこみ費用を払って処分を委託することです。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃掃法)により、発生するゴミの扱いは細かく規定されています。そのゴミを運ぶ際も廃掃法で厳密に規定があり、費用が発生します。

 

解体と処分を経て、最後に更地となった土地を整地してようやく原状回復となり、解体は終了します。

 

このように、解体には多くのプロセスが存在し、それぞれに費用を構成する要因があることがわかります。

収益計算をの組み立てで必要項目である解体投資を試算

以前、収益計算における落とし穴として

 

出費 (=初期投資+継続投資+解体投資) -収入 (=賃料+節税効果)=収益

 

上記の式を利用し、不動産投資において多くの人が綿密な計画を立てているのは初期投資であり、資産価値をコントロールする役割のある継続投資は軽視しがちで、解体投資はそもそも忘れ去られていることが多い項目だと指摘しました。

 

筆者は仕事柄、解体に関わる建設現場に出入りすることが多く、解体費用について施主と折り合いがつかないシーンに直面することもしばしばありました。そこで多く聞こえてくるのは「そんな費用は想定していなかった」という声です。本当は当初から想定できる解体費用でも、その時まで一度も試算をしてこなかったことで解体費用がすべて想定外の出費と捉えざるを得ないオーナーがたくさん存在するのです

 

想定していない費用が発生するとは、想定収益を押し下げたり、逆ザヤが発生したりすることを意味します。投資を計画する上で正確に試算するためには、解体投資を忘れてはいけないのです。

 

第一カッター興業株式会社 経営企画室長

1979年生まれ、静岡県静岡市出身。途中一年休学でのイギリス留学を挟んで2003年に上智大学物理学科卒。りそな銀行の一期生となるが入社1ヵ月後に国有化を経験。その後、2004年に第一カッター興業株式会社に入社、一年目は超高圧水にてコンクリートを破壊する職人を経験、その後札幌・千葉営業所所長を経験しながら2016年ビジネス・ブレークスルー大学院に入学、2018年に卒業し経営学修士(MBA)を取得。2018年より経営企画室業務を行い、経営全般のサポート業務および戦略立案から立ち上げまでを行う。
保有資格は高所作業車や移動式クレーンから宅建、保険販売と幅広い。
趣味は旅行で学生時代はバックパッカー、趣味と実益を両立するためにも海外進出を画策中。

著者紹介

連載日本の建物が危ない!インフラメンテナンスの専門家が提唱する「修繕&解体」を見据えた不動産投資

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