戦後、大規模に整備された日本のインフラが、老朽化により崩壊の危機に直面しています。「物理的な寿命=耐用年数」について十分に議論されてこなかったため、思うように修繕が進んでいないのです。不動産投資も同じリスクを抱えており、物件の修繕、さらには解体まで想定することが重要であると、第一カッター興業株式会社で経営企画室長を務める石川達也氏は警鐘を鳴らします。本記事では、中古物件に投資する場合に留意すべき点について考えていきます。

中古物件への投資判断は、どのように行うべきか

中古物件を見定める際はインフラ価値チャート(図表1)の項目について、総合的な判断が必要となります。

 

[図表1]インフラ価値変動要因チャート

 

環境要因である、市場・立地・居住者・利用者の調査から、構造要因である基本構造・ニーズ・法令対応の現状の把握、そして経年劣化要因である築年数・外見・設備老朽化の現状を正しく把握することで、賃料収入の想定とこれからかかる費用の当たりをつけることが可能となります。

 

[図表2]賃貸経営における投資
[図表3]不動産投資を構成する3つの投資

 

そのうえで、取得する物件の投資期間を設定し、初期投資にあたる取得費用から、初めに想定されるリフォーム費用、そして投資期間内でのメンテナンス費用などの継続投資の費用を見積り、投資期間終了時におけるリセール価値や解体となる場合は解体費用といった解体投資の費用を見積ります。

 

(収入+節税効果)-(初期投資+継続投資+解体投資)=収益

 

想定される家賃収入(+節税効果)がトータルライフサイクルコストを上回った場合は、投資価値ありとして購入検討をすることになります。

 

最近では家賃収入にもバリエーションが増え、通常の賃貸だけではなく法令対応は必要なものの、民泊の活用も検討余地がありますが、今回は収入の多様性は他に任せたいと思います。

中古物件に潜む「アスベスト」の危険性

既に保有している物件と違い、物件価値を決める様々な要因を加味して選べる中古物件は、アスベストのリスクをある程度排除することが可能です。

 

物件所有者は物件売却時にアスベストが使用されていることがわかっていれば、そのことを明記する必要があります。しかし事前の調査義務はなく、売りに出ている物件にアスベスト含有建材が使われている可能性は大いにあるというのが事実です。

 

アスベスト調査がなされていない物件は、アスベストがあるかどうかの事実を客観的に示すものが存在しないために、その有無を不動産業者に確認したところで「そのような調査結果はないので、わからない」という回答になるでしょう。

 

そうはいっても購入するかどうか悩んでいる段階で費用を掛けてアスベスト調査をすることは難しいので、以下のような手順でアスベスト含有リスクに当たりをつけることをおすすめします。

 

1)建築年代のチェック

   2006年以降…リスク小

   1995年以降2006年以前…リスク中

   1995年以前…リスク大

 

2)建築図面のチェック

図面にアスベスト含有建材の存在が記載されている場合は、不動産業者からアスベスト含有の告知を受けることになるので、基本的には図面を見てもアスベストの有無はわからないことがほとんどです。

しかし、次のステップでの現地視察時にわかりにくい天井裏や壁裏などといった、目には見えにくい場所の構造をチェックすることに意味があります。現地視察を行う前に、目に見えにくい場所の構造を確認し、場合によっては現地で実際の状態を確認することが必要となります。

 

3)現地視察でチェック

アスベスト含有建材は壁紙から各種ボードなど、ありとあらゆる場所に可能性があり専門家以外が見たところで、アスベスト含有かどうか、判断はつきません。そこでチェックしてもらいたいことは、吹付けアスベスト含有建材の可能性の有無です。

 

[図表4]賃貸不動産における更新の構成要素

 

更新工事を行う際に、比較的簡易に交換できるものとそうでないものを紹介しましたが、アスベストの処分を考えた際も同じように簡単に取り外すことができる建材かどうかが重要となります。

 

簡単に取り外しができる建材であれば、アスベスト含有建材であっても比較的費用は膨らみません。しかし、吹付け塗料や入り組んだ場所にある配管周りなどにあるアスベスト建材の場合、取り外しをする工事において特別な養生(アスベスト飛散を防ぐ封じ込め処理)が必要となり、費用が一気に跳ね上がるリスクが高まります。

 

アスベストを含む吹付け天井
アスベストを含む吹付け天井

 

 

配管周りに存在する可能性のあるアスベスト含有建材や吹付材は、住宅での使用頻度が低いことから、念のため確認する程度でも構いません。もし使用されている場合は、専門の業者に調査依頼したほうがいいでしょう。

 

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