需要不足で紅茶・ゴムを中心に輸出が減少
5. 収束しない国際収支上の問題
国際収支の問題は短期的な経済政策の失敗を示唆する。そして、スリランカの場合、製造産業の競争力が徐々に失速していることも意味している。
国際収支とは、国境を越えた次の2種類の取引の合算である。2種類とは、商品およびサービスに対する支出(輸出、輸入そして送金)と資産に対する支出だ。そして2016年のスリランカについて言えば、いずれにおいても良い兆しが見えそうにない。
2015年、輸出量は減り続けた。それは紅茶とゴム製品に対する需要が低迷したことが一番の要因だった。輸出入の差から算出される貿易赤字は3.8%増加し、2015年9月までに61億ドルまでに達した。
スリランカの外貨準備高は2015年8月に64億ドルまで減り、最も多かった91億8,000万ドルから30%減少した。全体を見ると、国際収支は2015年の最初の7ヶ月の間、12億ドルの赤字状態だった。一方、2014年の同時期は、20億ドルの黒字を出していた。
中央銀行に求められる金利引き上げの決断
貿易収支はもっとも重要な問題ではないが、経済成長を維持する上では欠かせない指標である。スリランカの輸出量は、経済規模に対する割合で、20年前の半分になってしまっている。スリランカが輸出できるものと、逆にスリランカが輸入しなくてはいけないものの差として現れる貿易赤字は、200万人を超す海外で暮らすスリランカ人からの送金と、ツーリズム、そしていくつかのサービス産業によって補填されている。
スリランカの輸出に見られる脆弱ぶりは、スリランカの経済不振の兆候だと見られている。大半の地域では、輸出に力を入れる企業が最も活発だ。これらの企業が一番革新的で、輸出業に携わらない企業より賃金も高く、最も生産性が高い。スリランカの経済規模からすると減少している輸出量は、製造産業の競争力の欠如を示している。
海外にサービスを輸出してバランスが取れるのであれば、スリランカが必要としているものはどうにか何でも輸入できるという考えは楽天的だろう。海外に商品を売ることはサービス市場を成長させるために有効である。通貨価値が年々下落しているのにもかかわらず、輸出量が減少しているのだ。
金利を上げる中央銀行が決断すれば、国際収支の減少が進行することを止めることができ、短期的な問題を修復することが出来る。しかしながら、中央銀行は極度に臆病で、現時点では意を決した行動を取れていないのだ。