吉本「コンプライアンス問題」を経営者はどう受け止めるべきか

収まる気配を見せない吉本興行の騒動ですが、そもそも、ことの発端は芸人の闇営業等における「コンプライアンス(法令遵守)」問題でした。法令違反による行政処分を受け社会的な信用が急落すれば、大企業はもちろん、体力のない中小企業の場合、そのダメージは致命的といえます。本記事では、公認会計士の久禮義継氏が、中小企業のコンプライアンス対策について解説します。

リスクヘッジに重要な経営者の「立ち振る舞い」

世間を騒がせた吉本興業と所属芸人に関するニュースでは、反社会的組織との関係に焦点が当たっていますが、これらのコンプライアンスに関して、気になっている中小企業の経営者も少なくないのではないでしょうか。

 

大企業は社内に厳格な内部統制システムがあり、社外においても同じように統制された企業に囲まれていますが、中小企業の場合はどうでしょうか。非上場会社であるため、内部統制システムがしっかり整っているという会社は少ないでしょう。

 

また、さまざまな属性の法人や個人と蜘蛛の巣のように絡み合って日々の業務を行っているため、風評や健全性についてこと細やかに把握するのは至難の技です。さて、そういった環境下において、中小企業はどのように対応すればいいのでしょうか?

 

中小企業のコンプライアンス対策は、一言で表すと、「予防的に行動してリスクヘッジをすること」です。これは「自社単独のリスクヘッジ」と「第三者の力を借りたリスクヘッジ」の2つにわかれます。

 

ここで大事なことは、予防的な行動がさほど困難を伴わずに実行可能なものであることと、リスクヘッジとして一定の効果を有しているということです。この2つの観点から、中小企業の経営者が取れる施策を計4つ提示していきます。

 

<自社単独のリスクヘッジ>

 

「自社単独のリスクヘッジ」の手段として、「内なる敵の無力化」と「身の回りの環境の棚卸をすること」が挙げられます。

 

①内なる敵の無力化

 

重要なのは経営者の立ち振る舞いです。「我が子(従業員)は親(経営者)の背中を見て育つ」というやつです。

 

たしかに、悪意に満ちあふれた従業員への効果は限定的かもしれませんが、従業員数が限られる中小企業では、経営者と従業員との距離が非常に近いことから、経営者の背中をしっかり立派に見せることは重要なことだといえます。

 

ちなみに、どこかのキャッチフレーズのように「◯◯◯、ダメ絶対」というようなメッセージを投げかけることも可能です。ただ、この方法は簡単ではありますが、大企業ならまだしも中小企業ではあまりにも表面的すぎるきらいがあります。「杓子定規に規則を守れ!」というような、間接的でよそよそしい態度は、肩透かしとなったり、かえって反発を招いてしまう恐れのほうが大きいかもしれません。

 

②身の回りの環境の棚卸をする

 

「君子危うきに近寄らず」ということです。自分の取巻きと、普段何気なく付き合っているケースは非常に多いと思います。そこで、取引先や自分の知人・友人等の素性や風評について客観的視点に見直して(ちょっといやらしい感じがありますが)、時と場合によっては今後の付合い方を冷静に見つめなおしてみるのもいいかもしれません。

※ 「君子危うきに近寄らず」とは、教養高い人格者は、自ら危ないところに近づいて災いを招くような馬鹿なことはしない、という意味です。

 

少し話が横道にずれますが、「自分の取巻きがどのような人たちかどうかが自分の価値や評価と直結する」とよくいわれますので、その観点からも必要なことではないでしょうか。なお、日々の業務において、何かきな臭い気配を感じた場合には、民間の信用調査機関に依頼して一定の調査を行うことも一案でしょう。最近はかなり安価で信用調査を行う業者も出てきているようです。

適切なアドバイスが期待できる「腕のいい専門家」とは

<第三者の力を借りたリスクヘッジ>

 

「第三者の力を借りたリスクヘッジ」の手段として、「グレーゾーンに強い専門家に寄り添ってもらうこと」と「保険に加入しておくこと」が挙げられます。

 

③グレーゾーンに強い専門家に寄り添ってもらう

 

特に士業専門家に共通するのですが、腕のいい専門家とは法律や規則に則ってYES/NOをいう人ではないのです。過去の経験をもとに、黒とも白ともいえない領域に対して、適切なアドバイスをできる専門家が、本当の意味での一流の専門家なのです。したがって、経営者がなにかコンプライアンス上の困りごとや脅威を感じた際には、グレーゾーンに強い専門家が近くにいると一定の安心感があるでしょう。

 

④保険に加入しておく

 

イザコザが訴訟問題に発展した場合などの備えとして、保険に入っておくことも検討に値します。たとえば、役員賠償責任保険は多くの保険会社から提供されています。また、弁護士費用保険も新たなサービスとして出てきているようです。

 

後者の保険の内容をシンプルにいえば、「何か事件が発生し訴訟を行う際、一定の保険金が支払われる」という仕組みです。潤沢な資力を有していないことが多い中小企業にとっては、いつ何時不測の事態が発生するかわかりませんので、このような保険にあらかじめ加入しておくことは大きな安心材料となるでしょう。

 

[図表1]
[図表1]

 

 

以上、いかがでしたでしょうか?

 

経営者はステークホルダーなどの外部の第三者に対して「安心・安全」な会社と認識される必要があり、また必死で尽くしてくれる善意の従業員に「安心・安全」を提供しなければならない立場にあります。

 

この辺りはセンシティブな面もあり、各々の問題に個別性が強いので、なかなか記述することが難しいところもありますが、もし参考になれば幸いです。

 

 

久禮 義継

株式会社H2 オーケストレーターCEO/公認会計士久禮義継事務所 代表

 

株式会社H2オーケストレーター・CEO
一般社団法人M&Aテック協会・代表理事
公認会計士久禮義継事務所・代表
 

1995年、同志社大学経済学部を卒業後、中央監査法人に入所。1998年、日本興業銀行ストラクチャード・ファイナンス部へ出向。2000年、同法人金融部に配属。2001年、ドイツ証券投資銀行本部に転じる。2006年、ミシガン大学ビジネススクールを卒業後、The Bridgeford Group(ニューヨーク)にて勤務。2007年に帰国し、JPモルガン証券投資銀行本部、みずほ証券グローバル投資銀行部門など数社を渡り歩く。2013年、NEC経営企画本部に転じ、2019年独立。これまで、退職給付信託(国内初案件)の開発、民事再生法下のプレパッケージ型事業再生スキーム(国内初案件)におけるM&Aアドバイザー、事業法人グローバルIPOにおけるジョイント・グローバル・コーディネーター(2002年度国内最大案件)、特殊法人の民営化関連アドバイザー等、投資銀行業務における重要案件を幅広く担当した経験を有する。NECでは、上級役員の参謀役として経営の中枢に携わり、中長期戦略・グローバル戦略の立案・実行部隊として、ダボス会議事務局、グローバルアライアンス推進などに従事。公認会計士・米国公認会計士有資格者。著書に『流動化・証券化の会計と税務』(中央経済社)等。「スモールM&Aの教科書(仮題)」(中央経済社)を今夏出版予定。

著者紹介

連載令和時代に生き残る!中小企業のための新しい経営戦略

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧