中小企業にとって、金融機関との関係は事業を進める上でなくてはならないものです。しかし、「利益は出ているのに金融機関から融資を断られた」というような事例もあります。金融機関は日頃、中小企業のどんなところを見て評価しているのでしょうか? 本記事では、税理士法人中央会計の辛島政勇氏が、金融機関が融資を決定する根拠の1つである「企業格付」について解説します。

金融機関がつける成績表、「企業格付」

格付とは、金融機関がつける成績表のようなものをいいます。各金融機関は、独自のスコアリングシート(得点表)を持っていて、企業から受け取った決算書に点数を付けています。

 

金融機関の上役や審査部などは、企業のすべてを見ることができませんので、その点数によって企業の評価(融資をするかどうか等)を決定しています。そのため、格付がいいと次のようなメリットがあります。

 

●希望通りの融資を受けやすい

●より低い金利で融資を受けられる

●迅速に融資を受けられる

格付する方法は「定量評価」と「定性評価」の2つ

金融機関が行う企業格付には、「定量評価」と「定性評価」の2つがあります。

 

◆定量評価

 

定量評価とは、資本金や自己資本比率などの財務指数を評価に換算するものです。以下のような項目があり、金融機関によって、独自の配点基準があります。

 

[図表]定量評価
[図表]定量評価

 

◆定性評価

 

定性評価は、市場動向、経営者・経営状態、営業基盤、競合状態などを評価するものです。一般的に都市銀行の格付の内容は、ほぼ100%を定量評価で決定しますが、地方銀行だと定量評価70%・定性評価30%、信用金庫になると定量評価60%・定性評価40%程度といわれています。

 

地方銀行・信用金庫と取引の多い中小企業にとっては、定性評価も格付を決める大きな要因になるのです。定性評価は以下のような項目について、銀行の担当者が主観でポイント化しています。

 

●市場動向

●経営者・経営状態

●競合状態

●株主

●従業員のモラル等

格付を改善するためには、何ができるのか

格付を改善するためには、まず自社の格付を知ることから始めましょう。どの項目の点数が低いのかを知れば、改善のポイントが見えてきます。改善のための長期的な取組み、短期的に行えるテクニックなどの対策を講じるためにも、自社の格付を把握することは大切です。

 

◆収益性の改善

●固定費の削減

・費用対効果の低い科目はないか

・相見積りや他仕入先の商品との比較を定期的に行っているか

・広告宣伝費の支出効果を具体的に測定しているか

 

●限界利益率の見直し

・販売単価を上げられないか

・請求漏れはないか

・在庫ロスがないように整理整頓ができているか

・仕入単価等の取引条件の再検討を探れないか

 

◆財務体質の改善

●資産、負債のバランス

・受取手形、売掛金の回収を早められないか

・短期借入金の返済方法を、見直し長期借入金に変更できないか

・役員借入を行い、銀行借入を返済できないか

 

●自己資本比率の見直し

・役員借入金を資本金に振替できないか

・増資できないか

・繰越欠損金がある場合、役員からの借入金を債務免除できないか

 

◆経理処理の改善

・営業利益に該当する収入が、営業外収益や特別利益になっていないか

・臨時的、偶発的な費用が経常的なものとして組み入れられていないか

・30万円未満の償却資産を、資産計上し全額償却する処理をしているか

・倒産防止共済の掛金は、資産計上しているか(別表による減算)

 

◆まとめ◆

 

上記で確認したように、企業格付をよくするためには、固定費の削減などの「収益性の改善」と、自己資本の充実などの「財務体質の改善」が必要になります。

 

「収益性の改善」に取り組むと、利益を出すことになります。そこで気になるのが、法人税です。

 

会社のことを考えたら利益は出したいけれど、節税もしたいので利益を抑えたいという悩みは、社長なら一度は感じたことがあるのではないでしょうか。自社の企業格付を知ることで、金融機関から評価される企業格付をキープしつつ、節税に手を打つことができます。ぜひ、自社の企業格付を知り、金融機関といいお付き合いをしましょう。

 

 

辛島 政勇

中央会計株式会社/税理士法人中央会計 税理士

 

本記事は、『中央会計株式会社』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。

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