間違った「収入印紙」を貼ってしまった場合
印紙税は、「契約書」「手形」「領収書」等、「印紙税額の一覧表」に掲げる文書に対して課される税金です。印紙税は、これらの文書を作成した人が、定められた金額の収入印紙を文書に貼り付け、これに消印して納付します。
文書に記載されている金額によって、納付する印紙税額が異なりますので、間違いないように注意してください。
◆間違った収入印紙を貼ってしまったら印紙税を還付してもらうことができます
下記、①~③に該当する場合は、税務署に過誤納となった文書の原本を提示し、過誤納の事実の確認を受けることにより、印紙税を還付してもらうことができます。
① 請負契約書や領収書等の印紙税の課税文書に貼り付けた収入印紙が過大となっているもの
② 委任契約書等の印紙税の課税文書に該当しない文書を課税文書と誤認して収入印紙を貼り付けてしまったもの
③ 印紙税の課税文書の用紙に収入印紙を貼り付けたものの、使用する見込みのなくなったもの
※契約書を作成したあとに、その契約が解除・取消されたものや、すでに交付された領収書、手形等は還付の対象となりません。また還付金に関わる請求権は、その請求をできる日から5年を経過すると消滅しますので、文書を作成した日から5年を経過したものも還付の対象になりません。詳しくは国税庁「No.7130 誤って納付した印紙税の還付」をご覧ください。
◆収入印紙を交換してもらうこともできます
●交換の対象になるもの
① 未使用の収入印紙
② 次のような客観的に見て明らかに印紙税の課税文書でないものに貼り付けた収入印紙
・白紙又は封筒
・行政機関に対する申請・届出の際に提出する申請書等の文書(登記申請書や旅券<パスポート>引換書等)
上記①~②の条件に該当する場合は、郵便局で、未使用の収入印紙や白紙又は封筒等に貼り付けられた収入印紙を、ほかの収入印紙と交換できます。
※ 交換の際には1枚につき5円の交換手数料(10円未満の収入印紙についてはその半額)が必要となります。
●交換の対象とならないもの
① 汚損し又はき損されている収入印紙(たとえば、消印しているもの等)
② 租税又は国の歳入金の納付に用いられた疑いがある収入印紙
③ 文書に貼り付けられていた収入印紙で、当該文書から切り離されたもの
上記の収入印紙は、偽造防止等の観点から交換の対象となりません。しかし、「租税又は国の歳入金の納付に用いられた疑いがある収入印紙」の場合については、最寄りの税務署に収入印紙が貼り付けられている文書を提示し、税務署長からその収入印紙が印紙税の納付のために用いられたものではないことの確認を受けた場合には、郵便局における交換制度の対象となります。
◆消費税の金額が区分記載されている場合の契約書、領収証
消費税及び地方消費税の金額(以下「消費税額等」といいます)が区分記載されている場合又は、税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、その取引にあたって課されるべき消費税額等が明らかとなる場合には、その消費税額等の金額は「契約書」や「領収証」の記載金額(契約金額、受取金額)に含めないこととされています。
受取金額「5万円未満のもの」は印紙税が非課税に
◆「金銭又は有価証券の受取書」に係る非課税枠
平成26年、「金銭又は有価証券の受取書」に係る印紙税の非課税範囲が拡大されました。以前は記載された受取金額が3万円未満のものが非課税とされていましたが、平成26年4月1日以降に作成されるものについては、受取金額が「5万円未満のもの」が非課税となっています。
※「金銭又は有価証券の受取書」の範囲
① 領収書・領収証・レシート・預り書
② 受取の事実を証明するために請求書や納品書等に「代済」、「相済」、「了」等と記入したもの
③ 「お買上票」等と称するもので、その作成目的が金銭又は有価証券の受領事実を証明するために作成するもの
◆「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の印紙税の軽減措置の延長
平成26年4月1日から平成30年3月31日までに作成されるものについて、印紙税の軽減措置が適用されていました。この制度は、租税特別措置法の一部改正によって延長され、平成30年4月1日から平成32年(2020年)3月31日までに作成されるものについても、印紙税が軽減されます。
※契約金額が上記の金額以下のものは、軽減措置の対象となりません。
◆印紙を貼らなかったら?
印紙税を納付しなかったときは、印紙税が課税されることを知らなかったり、収入印紙を貼り忘れたりした場合であっても、納付しなかった印紙税の額の3倍(収入印紙を貼っていないことを自主的に申し出たときは1.1倍)の過怠税が課税されます。また、文書に貼り付けた収入印紙に所定の方法で消印しなかったときは、その収入印紙の1倍の過怠税が課税されますので、ご注意してください。
※過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費に算入されません。
辛島 政勇
中央会計株式会社/税理士法人中央会計 税理士