手続きがややこしい確定申告。「忙しくてできていない…」「確定申告なんて知らない…」という声すらありますが、税金を余分に支払わないためにも、怠ってはいけません。そこで本記事では、確定申告を忘れてしまったり、期限内に提出できなかったりする際の、いわゆる「期限後申告」について、税理士法人中央会計の辛島政勇氏が解説します。

期限後に確定申告をすると「無申告加算税」が課される

期限後申告の手続きは、基本的に通常の確定申告と同じです。しかし、ペナルティが発生する場合があるため、なるべく早めに申告しましょう。なお、期限後申告の場合には、申告書を提出した日が納期限となります。申告書の提出と同時に納付も必要です。

 

◆期限後申告のペナルティ

 

所得税の申告を期限内にできなかった際、自分で気がついて申告をすれば、期限後申告となります。その場合には、通常の納める税金に加えて、無申告加算税と延滞税が課されます(そのまま申告せずに放っておいて税務署から指摘を受け、所得金額の決定を受けた場合も同様です)。

 

① 無申告加算税ってなに?

 

無申告加算税とは、申告をしなかった場合に通常の納める税金に加えて課される、いわばペナルティ的な性格の税金です。

 

●税務署から調査を受けて期限後申告をした場合の税率

 

納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額となります。

(例) 納付する税額が80万円だった場合 ⇒ 無申告加算税は13万5千円となる

 

●税務署から調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合の税率

 

納付すべき税額に対して、5%の割合を乗じて計算した金額に軽減されます。

(例)納付する税額が80万円だった場合 ⇒ 無申告加算税は4万円となる

 

② 無申告加算税が課されない場合もある

 

次の要件を満たせば、上記のペナルティは課されません。

 

1.その期限後申告が、法定申告期限から1月以内に自主的に行われていること。

2.期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。

 

※ 2の一定の場合とは、下記のいずれにも該当する場合をいいます。

・その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限までに納付していること。

・その期限後申告を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税又は重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと。

 

つまり、2の要件を満たしている方は、1ヵ月以内に自主的に申告をすれば無申告加算税が課されません。確定申告を忘れてしまったとしても、この制度を使えば安心です。

 

③ 延滞税ってなに

 

延滞税とは、納付が遅れたことによる利息的性格をもつ税金のことをいいます。延滞税の計算は、下記の合計となります。

 

1.納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合。

2.納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合

 

ただ、この計算はもっと複雑なので、詳しくは国税庁「延滞税の計算方法」をご覧ください。

 

◆還付の場合はどうなる? 還付されないのか

 

住宅ローン控除や医療費控除などがある場合、確定申告をすると還付になることもあります。

 

「確定申告をすれば税金が戻ってくるとわかってるけど、面倒でできなかった…」「期限後になると還付はされないだろう」と考えるかもしれませんが、まだ諦めてはいけません。期限後の申告でも還付は受けられます。また、納付でないので、上記のようなペナルティもありません。

※詳しくは国税庁「還付申告」をご覧ください。

期限後申告では「青色申告」の承認取消しになる場合も

◆期限後申告の影響

 

最後に、期限後申告をした際の、そのほかの影響について解説します。場合によっては、今まで述べたペナルティよりも手痛い可能性がありますので、確認してください。

 

●青色申告の承認取消しになるケースがある

 

2期連続で期限後申告をすると、青色申告の承認取消しになります。こうなると、青色専従者給与の必要経費算入、青色欠損金の繰越し、30万円未満の備品を一括で経費に落とせる特例、青色申告特別控除など、青色申告の数々の特典を受けられなくなります。影響は大きいです。今年、期限後になってしまったのであれば、次は必ず気を付けてください。

 

●65万円の青色申告特別控除が使えなくなる

 

65万円の青色申告特別控除は、事業所得又は事業としての不動産所得がある者が、期限内に申告をした場合に適用できる制度です。よって、青色申告者が期限後に申告をする場合には、10万円控除の適用となってしまいます。差額は55万円。ざっくり税率が20%の方であれば、11万円も税額が変わってしまうことになります。

※青色申告特別控除の65万円については、令和2年分から見直しされることになっています。詳しくは国税庁ホームページをご覧ください。

 

●融資に悪影響を及ぼす可能性がある

 

事業をやっていて銀行融資を受ける場合には、過去2期分の確定申告書を提出するのが一般的です。申告書を提出したときに、期限後のものであれば、どう感じるでしょうか。

 

やはり、期限内にきっちり納税をしている事業者のほうがいい印象を与えます。この点は聞かれる可能性もあるので、説明できるようにしておくべきです。

 

 

辛島 政勇

中央会計株式会社/税理士法人中央会計 税理士

 

本記事は、『中央会計株式会社』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。

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