FOMCとは?
米国には、日本銀行と同等の役割を果たしているFRB(The Federal Reserve Board=連邦準備理事会)という中央銀行制度の最高意思決定機関がある。彼らが約6週間ごと、年8回開催する会合がFOMC(Federal Open Market Committee=連邦公開市場委員会)だ。
FOMCのメンバーは、連邦準備制度理事会(Board of Governors of the Federal Reserve System)から7名、ニューヨーク連邦準備銀行総裁、残りの連邦準備銀行11名の総裁のうち4名、合計12名で構成されており、この4つの連邦準備銀行については、1年ごと輪番で務める。FOMC後に発表される「声明文」が、米国市場・世界市場に与える影響は大きい。また、約3週間後に公表となる「議事要旨」では、各メンバーの意向が示されるため、市況を予測するための重要な資料とされる。
「利下げ」の効果とは?
FOMCでは景況判断からFFレート(Federal Fundsレート)の誘導目標が決定される。今週30-31日に開催されるFOMCで「利下げ」が見込まれているのは、このFFレートである。通常、利下げは景気減速の局面で行われる。金融政策により金利が下がることで、企業や個人は資金調達がしやすくなり、景気が向上する(と考えられている)からだ。これを金融緩和政策という。経済が活発になり、物価も上昇する傾向があるため、インフレのリスクがある場合には、反対に「利上げ」という手段がとられる。
ちなみに日本においては、異次元的な金融緩和政策により、金利は下がりきっているので、この政策はもう使えないとの説が一般的であるが、29日の日本経済新聞(オンライン)では、日銀の雨宮副総裁が8月1日の会見で「マイナス金利の深掘り」などを示唆するのではないかと報じられた。
2018年は4回の「利上げ」が実施されたが…
利下げに湧く米国市場だが、昨年2018年には年4回もの「利上げ」を実施した。利下げなどは争点の範疇外の話であったわけだが、ついに利下げに至る米国経済には何があったのか。
粛々と4回の利上げを実施したFRBであったが、市場や政府(特にトランプ大統領)からは、圧力がかかっていたようだ。FRBが行ってきた金融政策が「過度であった」と指摘する識者は少なくない。確かに2015年から段階を踏んで利上げされていたものの、インフレ率は堅調に推移していた。
利下げ・利上げを予測する指標の1つに「ドットチャート」がある。FOMCメンバーが支持するFFレート水準をそれぞれ散布図化したものだ。では、前回のFOMC(6月)に公表されたドットチャートはどうなっていたのか。中央値こそ変わらなかったものの、2019年末の利下げを予測する参加者は8名、うち7名は年2回の0.5%の利下げを予測した。
公表を受け、0.5%もの利下げを期待する声は高まっていたが、米中関税合戦の一時休戦、また、米国雇用統計(6月)で非農業部門の雇用者数が22万4000人増と事前予想を大幅に上回ったことから、大幅利下げへの期待は収束している。とはいえ、トランプ大統領からの利下げ圧力はまったく収まらない。今月22日、Twitterに下記のツイートを投稿している。
“With almost no inflation, our Country is needlessly being forced to pay a MUCH higher interest rate than other countries only because of a very misguided Federal Reserve. In addition, Quantitative Tightening is continuing, making it harder for our Country to compete. As good.....”
「インフレの心配がほぼないにもかかわらず、FRBが過度に利上げを実施したため、米国は他国よりも非常に高い金利を強いられている。加えて、金融引き締めを続ければ、米国は国際競争で困難を強いられる……」
状況を勘案し、市場は0.25%の利下げを織り込み済みだ。9月、10月、12月にもFOMCが開催されるが、どの程度までの利下げが見込まれることになるのか? 7月FOMCの発表内容次第では、世界経済も大きく揺れ動くことになりそうだ。