ホルムズ海峡の緊張が高まっている。イランが英船のタンカーを拿捕したことを受け、英国のハント外相は「欧州主導」での船舶保護態勢を構築する意向を述べた。米国が主導する「有志連合」とは一線を引く構えだ。ポンペオ米国務長官は「英国は海峡における自国船の安全に関し、自身で責任をもつ義務がある」と述べている。ボリス・ジョンソン英首相(前外相)がブレグジット(EU離脱)を急ぐなか、皮肉な形で欧州の結束が固まる可能性もある。日本においては、同海峡を多くの船が運行しており、米主導の有志連合への参加圧力が強まる恐れもある。

ホルムズ海峡の軍事緊張は他人事ではない

ホルムズ海峡といえば、6月13日、安倍首相がイランの最高指導者ハメネイ師と会談したタイミングで、日本の海運会社が運行するタンカーが攻撃を受けた事件が記憶に新しいだろう。トランプ大統領が6月24日に、

 

“China gets 91% of its Oil from the Straight, Japan 62%, & many other countries likewise. So why are we protecting the shipping lanes for other countries (many years) for zero compensation. All of these countries should be protecting their own ships on what has always been....”

 

(中国は石油の91%をホルムズ海峡から運んでいる。日本は62%で、ほかの多くの国も同じようなものだ。なぜ我々米国が、何年もの間、無償で彼らの運航を護っているのか? これらの国々は、自国の船を自分たちで守るべきだ)

 

とツイートしたが、確かに日本にとってもホルムズ海峡の軍事緊張はすでに他人事ではない。実際、ホルムズ海峡を通過するタンカーの「船舶戦争保険料」は急騰し、運航コストが跳ね上がっているという。石油の高騰による物価の値上がりが生じたら、市民の財布を直撃することになりかねない。

船舶戦争保険とは?

船舶の保険には、船舶保険、船舶戦争保険、船主責任保険(P&I保険)、船舶不稼働損失保険などがある。少なくとも船舶保険、船舶戦争保険、P&I保険の3つに加入していることが一般的だ。

 

今回のホルムズ海峡で軍事衝突が起こり、船舶が拿捕されるなどの被害にあった場合、適用されるであろう保険は「船舶戦争保険」である。これは、普通の船舶保険等で補償されない戦争危険によって被る船舶自体の損害、費用、賠償責任等を補償する保険だ。

 

東京海上日動火災保険、損保ジャパン日本興亜等々、船舶保険を提供している大手保険会社は、英・米・仏・露・中の間で行われる戦争は「お支払いの対象にならない」「保険契約の自動終了」等としている。現状、高リスクルートの「値上げ」という形で対応しているとのことだが、より大きな紛争に発展した場合には、契約が解除される可能性もありうる。

 

一方で、7月24日、石油連盟の月岡隆会長は「現時点で原油の輸送に支障は出ていない」と発表した。追従するように、翌日は商船三井の池田社長が、日本経済新聞のインタビューに「安全輸送は使命で(運航を)継続する」と答えている。

 

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現状、「船」への投資に影響は?

ボーイング737 MAXの墜落事故・運航停止を受けて、「航空機」への投資の代替として「船舶」を考えている投資家も多いだろう。ホルムズ海峡緊迫の影響は、船舶への投資案件にどの程度の影響があるだろうか?

 

一般の人は「航空機や船などに投資するような富裕層が、日本にそんなにいるものなのか?」という感覚を受けるかもしれないが、航空機や船舶のような高額の償却資産は、投資対象として特に企業オーナーなどから人気がある。たとえば、「オペレーティングリース」のような手法が有名だ。

 

矢野経済研究所の調査によると、(日本型)オペレーティングリースの市場規模は、投資家の出資金総額ベースで3,116億円であった(2015年度)。商品分野別構成比は、航空機が72%、船舶が20%、コンテナが7%となっている。船舶へは623.2億円の投資があったことになる。

 

ちなみに、通常(日本型)オペレーティングリースでは、リース物件購入資金の2~3割を投資家からの出資金で、残りの7~8割を金融機関からの借り入れで賄う。借入比率が7割とした場合、購入物件価格ベースの市場規模は1兆円前後になる。船舶のみに限定してもおよそ2,000億円に上る。

 

このように日本でも多くの投資家が関わっている「船舶」だが、ホルムズ海峡の件に関して、現状では該当ルートのみの影響であるため、リスクの高まりは限定的といえるだろう。とはいえ、それがなくても船舶の運航には、戦争のほかにも様々な事故のみならず、「海賊に襲われるリスク」なども存在する。

 

投資の際は、「有事の際はどうなるのか?」など、保険や保障の内容を常に契約書ベースで確認しつつ、エビデンスを残しながら、決定するといいだろう。

 

 

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