国外へ財産を移して、脱税や租税回避をしようとする富裕層に国税が「待った」をかけている。2014年1月に「国外財産調書制度」が施行されて以来初めて、制度に絡む告発が行われたと、30日発売の日本経済新聞などが報じた。2018年にCRS(コモン・レポーティング・スタンダード)が日本でも導入され、税務当局は世界中で100以上の国・地域の金融機関にある口座情報へのアクセスが可能になっていた。

2017年の「国外財産調書」の提出件数は9,551件だが

日本の居住者で、その年の12月31日において合計額5,000万円を超える国外財産がある場合、翌年3月15日までに「国外財産調書」を税務署長に提出しなければならないとされている(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律5①)。

 

2019年1月に国税庁が公表した情報(「平成29年分の国外財産調書の提出状況について)によると、2017年分の国外財産調書の総提出件数は9,551件であった。これは上記の条件に当てはまると想定される人の数よりも明らかに少ない。

 

今回、日本で初めての告発となったが、「提出していない」という違反者予備軍はたくさんいると思われる。

「知らぬ間に対象者だった…」というケースも?

「税逃れ」を企てる富裕層がそんなに多いのか!と憤慨する人が多いかもしれないが、未提出となってしまっているのは、単に「脱税目的」の富裕層だけではない。

 

超低空飛行を続ける日本の資産と違い、海外の場合、「所有する本人も知らぬ間に資産価値が上がってしまっていた」ということがある。つまり、知らずに海外に所有する総資産が5,000万円を超えてしまっているケースだ。これに該当する富裕層も少なくないことが予想される。

 

本人でも詳細を把握していないくらいだから、「どうせ国税もわからないだろう」と高(たか)を括っていると、痛い目にあってしまうリスクは大きい。前述のように、2018年より日本でもCRSが導入され、税務当局は加入する各国や地域にある金融機関の“日本人の口座状況”が容易に調べられるようになった。

 

CRSは、国際的な脱税や租税回避に対処するため、OECDにおいて公表された、非居住者に係る金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準である。

 

発展や成長を期待して「海外投資」した結果、いつのまにか「円」ベースで計算すると資産が莫大になっていることもある。日本の居住者として所得税の納税義務を考えた場合、常に自分の資産が円換算でどれくらいなのか、しっかりと把握しておくべきであろう。

 

 

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