経営者が本来望むべきなのは「幸せに成功する」こと
「儲け上手社長」となるためには、事業で成功することが必要となります。しかし、たとえ事業で成功を収めることができたとしても、その結果、不幸せな状態となってしまったら意味はありません。
したがって、経営者として本来望むべきなのは「幸せに成功する」ことのはずです。しかし、いざ、「あなたにとっての『幸せ』とは何ですか」と問われたときに、ためらうことなく即座に答えられる人が果たしてどれだけいるでしょうか。おそらく、答えに詰まったり、「幸せ……一体何だろう」と考え込んでしまう人が少なくないはずです。成功して幸せになりたい――と思っても、自分がどのような状態になれば幸せであるのかをわかっていなければ、幸せな成功を手に入れることなどできるわけがありません。
また、幸せが何かがわからなければ、自分が経営者としてどこにたどり着きたいのか、会社をどのような状態に導きたいのかも見えなくなります。さらにいえば、幸せを実感することができなければ、自分が何のために働いているのかもわからなくなってしまうでしょう。働くことの意味を見失えば、いつかぷっつりと心の糸が切れて、経営者として会社を切り盛りする意欲を失ってしまうことになるかもしれません。だからこそ、自分にとっての幸せとは何なのか、自分が本当に望んでいることが何なのかをしっかりと考え、明確にしておく必要があるのです。
本当にフェラーリがほしいのか?
また、仮に「自分にとって幸せとは○○である」といえたとしても、それが本当に自らの望んでいることなのかどうかは改めて考えてみる必要があります。たとえば、男性の経営者に対して「事業に大成功して、何でも好きな車に乗れるような立場になったとしたら、フェラーリと軽自動車のどちらに乗りますか?」という質問を私がしたとしましょう。おそらくほとんどの方がフェラーリと答えるのではないでしょうか。
さらに、続いて私が次のような提案をしたとしましょう。「でも、フェラーリはエンジンをふかすとものすごい音がするので、街中ではなかなか乗れませんよね。そうだ、あなたはお金をたくさん持っているので、専用のサーキット場を建設したらいかがでしょうか。そこで、あなたはいつでも自由にフェラーリを運転することができます」
「それは素晴らしいアイデアだ」と賛同してくれた人に対して、私はさらにこんな質問をします。「しかし、サーキット場で運転していたら、あなたがフェラーリを持っていることは誰も知りませんよね。一方、軽自動車の方には、きれいな若い女性がいつも座っています。しかも、毎日、違う女性が。あなたは、いわば〝日替わりの女性たち〞といつでもデートを楽しむことができるのです。では、フェラーリと軽自動車のどちらがほしいですか?」
おそらく、「それなら軽自動車の方がいいな」と答える方もいるのではないでしょうか。だとすれば、そのように答える人は、フェラーリそのものがほしかったというよりも、フェラーリを持つことで女性にもてたかった――それが本当の望みだったということになるのではないでしょうか。
幸せはささやかなものでも構わない
このように、自分が本当に欲しているものが何かは、自分自身でもなかなかわからないものなのです。そして、多くの企業経営者には、自分自身が本当にそれを望んでいるのかを深く考えることなく、「幸せ」や「成功」の形を型通りにイメージする傾向が見られます。
たとえば、事業に成功した証しとしてベンツを買う経営者は珍しくありません。もちろん、小さい頃からベンツが好きで好きで憧れていたというのであれば、それはまさに自身の夢をかなえたことになるわけですから、非常に素晴らしいことといえるでしょう。
しかし、世間の人から「ベンツに乗っているということは、あの社長は事業に成功しているのだろう、すごいなあ」と思われたいだけなのであれば、「ベンツを持つ」=「幸せ」とはいえないかもしれません。
幸せとは何かを考えるときには、世間体を、つまりは「他人からどう思われるか」を一切気にしないことが必要です。ただただ、「自分にとっての本当の幸せ」だけをじっくりと考えてみましょう。そもそも、幸せは1つではなく、人それぞれ違うもののはずです。中には毎日、夜ビールを飲めれば幸せだ、屋根のある家で眠ることができれば幸せだという人もいるでしょう。
もちろん、その程度のささやかな幸せでもいいのです。大事なのは幸せの中身よりも、日々幸せを実感できることであり、それをバネに「よし明日も頑張ろう」と仕事への意欲をもち続けられることなのです。
考えるより先に行動する
「儲け下手社長」がお金を儲けることができない理由を一言でまとめれば、「お金が儲からないような行動をとっている」からといえます。だとすれば、これまでと全く変わらずに「同じ行動」を続けていれば、結局は「同じ結果」が、つまりはお金が儲からない状況がいつまでも続くことになるのは明らかです。行動を変えようとせずに「お金が儲からない!」と不平不満を漏らしているのは、たとえるならば、お金を入れると紙カップに飲み物が注がれる自動販売機で、ウーロン茶のボタンを押し続けながら「コーヒーが出ないじゃないか!」と怒っているのと変わりありません。
もちろん、行動を変えてみても結果が変わらないことがあるかもしれません。しかし、その場合には、さらに別の行動にトライしてみればいいのです。そうやって何度も何度も試行錯誤を繰り返すうちに、必ず、自らが望んでいる結果に結びつく行動が見つかるはずです。