新しいアイデアは必要ない?「新規事業立ち上げ」の手引き

新規事業を立ち上げようとするとき、最初にぶち当たる難関が「何を事業にしたらいいのか?」です。多くの人が、新しいことを始めたいと意気込んでも、具体的なアイデアは出せずに終わります。そこで本記事では、顧問先の新規事業立ち上げを実践的にサポートしている木下雄介氏が、とても簡単で具体的な、“アイデアの抽出方法”を解説します。

ほとんどの新製品は異なる既存製品の組み合わせ

新規事業を始めるにあたっては、まず「新しい事業アイデア」を生み出すことが必要になります。具体的には顧客や消費者の心をつかむことができる新しい商品・サービスのアイデアを見つけ出さなければなりません。

 

とはいえ、「無から有は生じない(Nothing comes from nothing)」という格言もあるように、全く何もないところから新しいアイデアを考え出すことは至難の業です。そもそも、地球に最古の文明が現れてからすでに5000年以上の歳月が過ぎ去っており、商品やサービスに関する基本的なコンセプトは全て出尽くしたともいわれています。今までに存在しなかったような“全くオリジナルなアイデア”を見つけ出すことは、よほどの天才でもなければ不可能といってよいかもしれません。

 

逆にいえば、すでにあるものを組み合わせる方法でしか、アイデアを生み出すことはできないといってもよいでしょう。アイデアに関する古典的名著として知られている、ジェームス・W・ヤング著『アイデアのつくり方』でも「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何物でもない」と断言されています。

 

実際、近年、一般化した新たな商品・サービスにしても、そのほとんどは既存の商品やサービスの組み合わせによって作られたものです。一例をあげると、スマートフォンは「携帯電話」+「パソコン」の発想から生まれました。このように、「既存の要素をどのように組み合わせるか」が「新しい事業アイデア」を生み出す基本となるのです。

 

アイデア出しの方法は、いくつかの基本的なタイプにまとめることができます。たとえば、星野匡著『発想法入門』では、以下のような4つのタイプに分類しています。

 

[図表1]基本的なアイデアの出し方
[図表1]基本的なアイデアの出し方

KJ法によるブレインストーミングでアイデア出し

アイデア出しの方法には様々な選択肢がありますが、新規事業において、簡単にでき、大きな効果を見込める手法としてお薦めしたいのが「KJ法によるブレインストーミング」です。

 

まず、ブレインストーミング(Brain Storming)とは会議形式で行うアイデア発想法です。参加者が自由に意見を出しあうことでお互いに刺激しあいながら、創造的なアイデアを生み出していきます。広告代理店I&S BBDO社の副社長だったアレックス・F・オズボーンが1930年代の終わり頃に考案したといわれています。略して「ブレスト」、あるいはBS法とも呼ばれます。

 

[図表2]ブレインストーミングの7つのセッションルール IBM社CPS(カスタマープランニングセッション)のルールより引用
[図表2]ブレインストーミングの7つのセッションルール
出所:IBM社CPS(カスタマープランニングセッション)のルール

 

一方、KJ法は文化人類学者の川喜田二郎氏が考案したアイデアの抽出と整理のための技法です。一般的なやり方としては会議メンバーに5枚ずつ付箋を配り、あるテーマについてアイデアを5つ書き出してもらいます。その際、時間を5分や10分などのように短く区切って集中させることがポイントになります。それを集めてホワイトボードに貼り出し、全員で討議しながら、貼り出されたアイデアをグルーピングし、まとめていきます。

 

[図表3]基本的なアイデアの出し方
[図表3]基本的なアイデアの出し方

 

アイデアをグルーピングする際には、どのように配置したら見やすく、論理的にも理解しやすいかを考えるのが重要なポイントとなります。このグルーピングの作業は「図解化」といわれています。図解化の結果、判明したことをさらにストーリーの形で、口頭で説明したり文章化したりします。このプロセスは「叙述化」と呼ばれています。

異なる技術、市場の組み合わせを考える

前述のように、アイデア出しは既存の要素を組み合わせる作業が中心となります。新製品・新サービスの開発プロジェクトの場合には、技術、市場など、異なる2軸の組み合わせで考えていくと効率的に作業を進められるはずです。その際、「現在、自社で保有する中核技術やノウハウを既存の市場とは異なる新たな市場と組み合わせてみる」などというように、片方の軸を固定させるとより具体的にアイデアを発想しやすくなるでしょう。

 

[図表4]インターネット(技術)×業界(市場)の事例
[図表4]インターネット(技術)×業界(市場)の事例

 

たとえば、富士フイルム株式会社では、デジタルカメラの登場によって既存のカメラ市場が縮小する中で、中核技術である「フィルム技術」を「写真」以外のマーケットで活かす道を模索しました。その中で、写真フィルムの主成分であるコラーゲンに着目し、「化粧品市場」に新たな活路を見出すことに成功したのです。

 

[図表4]富士フィルムの新市場(化粧品市場)進出事例
[図表5]富士フィルムの新市場(化粧品市場)進出事例

 

このように、中核技術・ノウハウを活かして新製品・新サービスを開発し、新規分野に売り込んだ例は少なくなく、他にもダイナマイトの原料であるニトログリセリンが心臓病の治療薬に転用されたケースなどがあげられます。

 

また、技術・ノウハウと市場を組み合わせる方向で新規事業のアイデアを検討する場合には、技術・ノウハウを中心に考えるのか、市場を優先して考えるのか、そのバランスが重要になります。技術・ノウハウに偏りすぎると、顧客・消費者のニーズをとらえそこねる危険がありますし、市場を過度に重視してしまうと八方美人的な中途半端な商品・サービスになるおそれがあるでしょう。

カッティング・エッジ株式会社 中小企業診断士

1986年、慶應義塾大学 経済学部卒業
2003年、神戸大学大学院 経営学研究科博士前期課程(MBA)修了。2008年、MITスローンスクール Executive MOT修了。1986年、日本アイ・ビー・エム(株)に入社。
社内公募によりジョイントベンチャーを立ち上げ、IBMロゴの製品化を実現。1997年、当時、SFAのパイオニア企業であった米国シーベルシステムズ社の日本上陸に伴い、創業メンバーとして参加。西日本地区の責任者としてビジネスを立ち上げる。
その後、2008年、タレントマネジメントのグローバルリーディングカンパニーであった米国サクセスファクターズ・インク(現SAP)にスカウトされ、日本法人を設立し、代表取締役社長に就任。
ゼロからビジネスを立ち上げ、日本におけるタレントマネジメントブームの火付け役の一人となる。その後、日本オラクル(株)の営業本部長を経て、独立。現在は自身の会社であるカッティング・エッジ(株)を設立し、中堅・中小企業を中心に顧問契約を結び、これまでの経験を活かしながら、顧問先の新規事業立ち上げを実践的にサポートしている。

著者紹介

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幻冬舎メディアコンサルティング

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