動物性か植物性か…2種類あるビタミンAの供給源
前回(関連記事『小児科医ママが「ビタミンDサプリ」の活用を推奨するワケ』参照)、成長期の鍵となるビタミンとしてビタミンDを紹介しました。今回はビタミンAの話です。ビタミンAは目や視力に関わるビタミンで、皮膚、粘膜(喉や肺、腸、尿道など)の健康を保ち、体に細菌やウィルスの侵入を防ぐバリアの機能があります。
■ビタミンAを取り巻く世界での現状
全世界193ヵ国中(2019年6月現在の国連加盟国)、なんと118ヵ国でビタミンAの欠乏症が問題となっています。欠乏状態が長く続くと、最終的には失明し、感染症から亡くなることもあります。実際に今現在、世界では年間25万〜50万人の子どもたちが失明し、さらにその半分の子は失明した1年後に亡くなっていると推定されています。
日本においては、ビタミンA欠乏症が問題とされるような状況にはありませんが、自閉傾向のある子どもの例で、フライドポテトとおにぎりばかり食べ続けた結果、ビタミンAの欠乏が起こり、ドライアイになったという報告があります。
■ビタミンAの種類
ビタミンAはビタミンAそのものと、ビタミンAになる前の形のものと、2種類の方法で摂取することができます。それは
・動物類に多く含まれるビタミンAであるレチノール
・植物類に多く含まれるビタミンAになる前の形のもの(プロビタミンA)
の2つです。プロビタミンAの代表がカルテノイドといわれ、カルテノイドにはαーカロテン、βカロテン、γカロテン、βクリプトキサンチンなどがありますが、このなかでβカロテンがもっとも多くビタミンAに変換されます。カルテノイドのなかにはビタミンAにあまり変換されないものがあり、リコピンやルテインなどがここに分類されます。
よくみかんを食べすぎると手が黄色くなりますが、この黄色の正体がβカロテンです。実はみかんだけでなく、黄色くなる原因のβカロテンやβクリプトキサンチンが多く含まれている人参やかぼちゃ、サツマイモの食べ過ぎでも、手は黄色くなります。
動物類に多く含まれるレチノールは、食べすぎるとビタミンAが過剰になり、嘔吐や頭痛などの症状を起こすことがあるといわれています。とはいえ、毎日レバーやうなぎを食べるとか、毎日ではなかったとしてもステーキのようにレバーの塊を食べるとか、サプリメントを決められた容量以上にたくさん摂取し続けるなど、極端な生活をしなければ「過剰」ということは、まず起こりません。
カルテノイド(植物由来のプロビタミンA)は油との相性がよく、油と一緒に摂取すると吸収率が上がります。そして体内で必要な分だけビタミンAに変換されます。ビタミンAにならなかったカルテノイドは体内で抗酸化作用をするといわれ、免疫力をあげる効果があるという素敵なおまけもついています。
しかしこのβカロテンは、サプリメントなどで過剰に摂取した際にも免疫力をあげる効果があるのかどうかは明らかでなく、むしろ人によってはガンのリスクが上がる可能性があるとの報告もあるので、サプリメントでの摂取は気をつけたほうがよさそうです。
「目」「皮膚」「粘膜」を健康に保つビタミンA
■ビタミンAの役割
ではこのビタミンAは、体のなかでどのような役割を担っているのでしょう。
(1)視覚の機能を司る
ビタミンAは目の色素や光を感じる細胞などを作るうえで欠かせない栄養素で、視覚の大事な機能を担っています。したがって足りなくなると、目が乾燥し、日中は光を眩しく感じるし、夜は暗さに順応できず見えづらくなります。これが長期に渡り続くと最終的には失明します。
(2)粘膜や皮膚を強くする
ビタミンAは粘膜のバリア機能を司る役割を果たしています。そのため、不足すると粘膜が硬くなったり、細菌やウィルスが体内に侵入しやすくなったりします。それぞれの粘膜のバリア機能が壊れて起きうる問題点です。
喉や鼻の粘膜が壊れる…喉が痛くなる、咳鼻水が出るなどの風邪をひく
胃腸の粘膜が壊れる…胃の調子が悪くなる、食欲が低下する、下痢になる
尿道の粘膜が壊れる…尿路感染症になる
また細胞の膜自体を健康にするため、欠乏すると、肌もガサガサになってきます。怪我をしても治りにくくなり時間がかかります。ビタミンAは肌もすべすべにする美肌ビタミンでもあり、化粧品やオムツかぶれ予防にも使われています。
(3)細胞分化をコントロールする
ビタミンAは細胞の増殖に関わり、体の成長と発育を促します。正常でない細胞の増殖にも関与する可能性も考えられ、ガンとの関連性も研究段階でされています。
このようにビタミンAは、目や視力に関わり、皮膚、粘膜(喉や肺、腸、尿道など)の健康を保ち、体に細菌やウィルスの侵入を防ぐバリアの機能があります。だからこそ離乳食時期の赤ちゃんには欠かせない大事な栄養素なのです。ではどのような食材を与えればよいのでしょう。
■ビタミンAが多く含まれている食材
レチノールはそのままビタミンAとして摂取されるため注意が必要ですが、多く含まれるレバー類は週に一回程度であればまず問題ありません。それ以外のレチノールは、極端に大量に食べなければ問題ありません。
カルテノイドは、野菜や果物から必要な分だけビタミンAになり使われますし、ビタミンAにならなかったものは抗酸化作用という体内でよい働きをします。たくさん食べたから問題になるという報告はなく、吸収率を高める油と一緒に、安心してもりもり食べさせてください。カルテノイドは黄色い果物や、黄色や緑色の濃い色の野菜に多く含まれます。
コラム 「肝油」って聞いたことありますか?
子どものころ、肝油を1日一粒食べていた方もいるかもしれません。なんか外がカリカリしていてちょっぴり甘いグミみたいな……、なんとなく懐かしい気分になる“アレ”です。この肝油には何が入っているかというと、実はビタミンDとビタミンAなんです。最近ではビタミンCが入っているものもあるようです。成長期には欠かせない栄養素が詰まっており、太平洋戦争後の日本では、学校給食の栄養補助として使われていました。
離乳食時期の子どもに欠かせない5つの栄養素のうち、これまで鉄、亜鉛、ビタミンD、そして今回ビタミンAについて話してきました。次回はいよいよ最後5つ目の栄養の話をします。もしかしたら、これが一番大切な話かもしれません。ぜひ最後まで読んでいただき、5つの栄養素の力で素敵な子育てをかなえていただけたらと願っています。