日光浴の不足?増加が危惧される「赤ちゃんのビタミンD不足」

※子育ての悩みは色々ありますが、「食事」に関して頭を抱えてしまうことは珍しくありません。子供の成長には何が重要で、どのように食べさせたらいいのか…考えれば考えるほど行き詰まりを感じてしまう方も多いでしょう。本連載では都内のクリニックで年間1万人もの子どもを診察する工藤紀子小児科医が、赤ちゃんの発達に欠かせない5つの栄養素と、その栄養素の与え方を説明していきます。

骨の成長をアシストをする「ビタミンD」

離乳食時期の子どもに欠かせない栄養素について、鉄、亜鉛に続き、今回から3つ目の栄養素について話をしていきます。それは近年、世界中で不足しているといわれている「ビタミンD」です。ビタミンDは食事からだけでなく、太陽の光(紫外線のUVB)からも生成されるため、サンシャインビタミンとも呼ばれます。

 

■骨を強く保つビタミンD

食事から食べたビタミンDや日光から得られたビタミンDは、肝臓と腎臓で加工されて、活性型ビタミンDという形になります。そしてその活性型ビタミンDが働くための受容体が体のなかのあちこちに存在するため、色々な働きをします。

 

その代表的な働きは、骨を強く保つ働きです。活性型ビタミンDには、カルシウムの吸収を助けて骨の密度を調整し、骨を頑丈にする作用があります。カルシウムは骨の成長には欠かせない、ということは広く知られていますが、実はカルシウムだけではなく、ビタミンDも一緒にしっかり摂取することが、とても大事です。

 

ビタミンDが足りないと、骨は柔らかく薄いもろい骨になります。足りない状態が続くと子どもの場合はくる病に、大人の場合は骨軟化症や、さらに年をとると骨粗鬆症という病気になります。

 

■なぜビタミンD不足が増えているのか

いまビタミンD不足の人は世界中で増えてきていて、全世界で10億人以上いると推定されています。なぜ飽食の時代にビタミンDが足りていないということが起こるのか。それには2つ理由があると考えられています。そもそもビタミンDを摂れていないという「摂取不足」と、太陽の光を浴びる量が少ない「日光浴不足」です。ビタミンDは日光によっても産生されるという珍しい栄養素だからこそ、の理由です。

 

■ビタミンDはどうしたら摂取できるのか

ビタミンDはしらすや鮭、イワシ、秋刀魚などの魚類や、しいたけやきくらげなどのキノコ類に多く、卵の黄身やチーズにも少量含まれています。これらも食品を摂取ることで、ビタミンDを摂ることができます。また、ビタミンDが不足しているという知識が広まっていないためか、使っている方は少ないのですが、ビタミンDには赤ちゃんから使えるサプリメントがあります。

 

もう一つが日光を浴びることです。サンシャインビタミンというだけあって、紫外線のなかのUVBというものを浴びることによって、ビタミンDは作られます。しかし近年、欧米諸国の紫外線研究により、紫外線により皮膚ガンリスクが上がることがわかり、紫外線の悪い面がとても多く取り上げられるようになりました。日本でも日焼け止めクリームや紫外線予防の上着を着るなどして、積極的に紫外線予防をする赤ちゃんが増えたことで、ビタミンDが不足する危険が増していると指摘されています。

赤ちゃんに必要なのは「適度な日光浴」

■肌の色と環境で変わる、日光浴によるビタミンDの生成

1)骨を強くするビタミンDは紫外線を浴びると産生される

2)紫外線を浴びると皮膚ガンのリスクが上がる

 

紫外線には、上記のようなメリットとデメリット、2つの情報があるので、一体どうしたらいいのか、困惑してしまうのが正直なところではないでしょうか。実は、ここで抜けているのは肌の色と環境の考慮です。

 

まず肌の色ですが、メラニン色素は実は自然の日焼け止めのような作用があります。したがって、肌の色が白いほど(メラニン色素が少ないほど)紫外線の影響を受けやすく、ビタミンDはたくさん生成されますが、皮膚ガンのリスクが上がります。肌の色が濃いほど(メラニン色素が多いほど)紫外線の影響を受けにくく、ビタミンDの生成が減りますが、皮膚ガンのリスクは下がります。

 

この肌の色は6段階に分けられています(図表1)

 

[図表1]紫外線と肌への影響(出典:『Fitzpatrick skin typing: Applications in dermatology』より筆者が作成
[図表1]紫外線と肌への影響(出典:『Fitzpatrick skin typing: Applications in dermatology』より筆者が作成)

 

紫外線の影響を特に受けやすいのは、肌タイプⅠ~Ⅱの人です。日本人はだいたい肌タイプⅡ~Ⅳで、特に多いのがⅢの人です。したがって肌タイプにもよりますが、紫外線の悪い影響を受ける日本人はそこまで多くないかもしれません。特に骨の成長が大切な子どもにとって、過剰なまでの紫外線対策は必要ないのです(「過剰なまでの」というのは、頻回に日焼け止めを塗りつつ紫外線予防の長袖の衣類を着る、帽子をかぶるだけでなく顔全体を覆う、紫外線を避けるために室内にいて外出しない、ということです)。

 

次に環境についてです。紫外線は実感でわかる通り、夏は多く冬は少なく、昼間は多く朝夕は少なくなっています。さらに北に行けば行くほど、また天気が曇りや雨が多い地域ほど、紫外線は届きにくくなります。日本は南北に長い国なので、北海道と沖縄では全然違うのです。

 

ある研究によると、日本人に一番多い肌タイプの場合、夏場(7月)であれば、札幌でも那覇でも晴天時5分程度、手足に日光を浴びれば1日に必要なビタミンDは補えますが、一方、冬場(12月)は、那覇では10分程度、筑波では30分弱、札幌では80分程度の時間が必要だったとの報告がされています。これは晴天時のデータなので、曇りや雨の日もあると考えると、もっと長い時間が必要になります。

 

このビタミンDを生成する作用のある紫外線UVBは窓ガラスを通過しないので、窓越しの日光浴では意味がありません。直接の日光を浴びて初めて生成されるのです。

 

このように紫外線の量は季節や天気、緯度で変わり、一概に必要な日光量をいうことはできません。そこで利用したいのが国環研(国立環境研究所)の地球環境研究センターのWEBサイト(モバイル用簡易サイトはこちら)です。このサイトは非常に有用で、「いまの季節、時間に、自分はどのくらい日光を浴びたらよく、日焼けをしないために何分以上は避けたらいいのか」ということがわかります。ぜひこのようなサイトを活用しながら、必要な日光を浴びるようにしましょう。

 

また「日焼けをしないために、何分以上は避けましょう」という時間以上に外出する場合は、大人や幼児は日焼け止めを使用するとよいと考えられますが、赤ちゃんの場合、「紫外線対策」に気をつけると同時に「熱中症対策」がより重要になります。特にこれからの時期、熱中症にならないようにするために、直射日光を避け、吸湿性がよく、通気性のよい服を着せ、屋外では帽子を着用。保冷剤も使用するなどして、しっかり対策をしましょう。これをすることで、同時に紫外線対策にもなります。

 

次回は、赤ちゃんがビタミンD不足になるのはどのような場合か、またどうしたら摂取できるのか、について詳しく説明します。

 

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小児科専門医・医学博士

順天堂大学医学部卒業、同大学大学院小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。日本小児科学会認定小児科専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/こころ新橋保育園嘱託医/東京インターナショナルスクール中目黒キンダーガーデン嘱託医。夫の仕事でアメリカに渡り子育てを経験する。現在2児の母。都内クリニックにて、年間のべ1万人の子どもを診察しながら子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。
最新著書『小児科医のママが教える 離乳食は作らなくてもいいんです。』(時事通信社)

著者紹介

連載子どもに食べさせたい!離乳食期に必要な5大栄養素

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