小児科医ママが語る子どもの栄養…味覚を育む「亜鉛」の重要性

今回は、離乳食期に必要な5大栄養素の二つ目、「亜鉛」の役割について解説します。※子育ての悩みは色々ありますが、「食事」に関して頭を抱えてしまうことは珍しくありません。子どもの成長には何が重要で、どのように食べさせたらいいのか…考えれば考えるほど行き詰まりを感じてしまう方も多いでしょう。本連載では都内のクリニックで年間1万人もの子どもを診察する工藤紀子小児科医が、赤ちゃんの発達に欠かせない栄養素と、その栄養素の与え方を説明していきます。

味覚の成長に欠かせない「亜鉛」

亜鉛も鉄に続き、生きていくのに欠かせない重要な要素です。亜鉛は身体中様々な部分に存在していて、およそ300種類以上の酵素の活性化に関わり、健康に過ごすために必要なたくさんの役割を果たしています。

 

そのなかから子どもの成長にとってなぜ亜鉛が大切なのか、離乳食の時期はなぜしっかり亜鉛を取らせないといけないのか、についてご説明します。

 

亜鉛の役割①:おいしさを感じる味覚をつくる

亜鉛は、味覚を司る舌の上の味蕾という場所にたくさん存在します。つまり亜鉛が足りなくなってくると味覚障害を起こし、おいしいと感じられなくなります。また亜鉛が足りなくなると腸の粘膜が萎縮し、消化を助ける体液の分泌が減少するなど腸の動きが鈍くなるため、食欲が減るともいわれています。

 

食欲がなくなる→亜鉛が豊富な食べ物をたくさん食べられない→亜鉛が足りなくなる、という悪循環を起こすのです。

 

「亜鉛は味覚や食欲に影響するため、好き嫌いの原因に亜鉛不足がありうる」と考えている論文もあります。

 

離乳食の時期は味覚を形成する時期だともいわれています。いろいろな食材を与えても、それを感じられる器官が発達していないと意味がありません。おいしいものをおいしいと感じられたら、食べることが楽しくなり、強い体を作ることにもつながります。単に味覚を育てること以上に、亜鉛は重要な栄養素なのです。

「強くて元気な子」の源になる亜鉛の力

亜鉛の役割②:元気な皮膚と体を作る

(1)皮膚や髪の毛を作る

皮膚や髪の毛に、体内の亜鉛の約8%が存在しています。亜鉛は皮膚の表面のタンパク質の合成や、炎症反応を抑える酵素に含まれているため、亜鉛が足りなくなると皮膚炎が起こりやすくなります。これは大人での話ですが、髪の毛にも亜鉛が含まれるため、ある報告によると円形脱毛症の方のうち1/3で亜鉛欠乏があったそうです。皮膚や髪のトラブルを少なくするためにも、亜鉛はしっかり取りたい栄養素です。

 

(2)体を作る

亜鉛は、成長ホルモンの分泌や骨代謝に関与する酵素(ALP、IGF-1、TGF-β)に作用するといわれています。つまり、亜鉛は、背を伸ばしたり、骨を作ったり、体の骨格の発育に関連するということです。また亜鉛には体を作るたんぱく質の吸収を助ける作用もあるため、足りなくなると体格も小さくなります。

 

離乳食の時期は、人生のなかで一番体が大きくなる時期です。生まれてから一年半の間に体重は約3倍に増え、身長は約1.6倍に伸びます。こんな劇的な変化をするのは長い人生のなかでこの時期だけです。亜鉛は、このグングン成長する時期に体を作り上げるのに欠かせない大切な栄養素なのです。

 

(3)免疫に作用する

亜鉛が足りなくなると、体の免疫を担う重要な役割をしている胸腺という器官が萎縮することによって免疫がうまく働かなくなるという報告があります。胸腺は心臓の上の方にちょこんと乗っかっている蝶々のような形の臓器ですが、そこではばい菌と戦うタイプの白血球を作っています。しかし亜鉛不足は胸腺の問題だけでなく、他の様々な複雑な免疫システムにも影響することがわかっています。ですから亜鉛が足りなくなると、バイキンと戦うための免疫がうまく働かなくなり、風邪をひきやすくなったり、下痢になったりします。

 

2002年のWHOのデータによると、世界の下気道(気道のうち声帯よりも中枢側の部分で、気管から気管支、細気管支を経て、終末の肺胞までのこと)感染症の16%、下痢症の10%の原因が、亜鉛不足によるものであるとしています。また少し話はそれますが、WHOにより、世界40ヵ国で10年以上にわたり子供の肺炎による死亡をどう減らすかの研究がなされました。そしてヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの肺炎関連ワクチン、母乳育児、そして亜鉛補充が費用対効果があり、肺炎による死亡率を減らすとしています。

 

亜鉛は、体の免疫機能を働かせるために必要な栄養素なのです。

鉄だけじゃない!亜鉛不足でも「貧血」になる

亜鉛の役割③

亜鉛が足りなくなると「鉄欠乏性貧血」とは違う原因で貧血が起こります。

 

亜鉛が減ると、「赤ちゃん赤血球」から「成熟した赤血球」になるのに必要な酵素(GATA-1)が足りなくなります。そうなると成熟した赤血球が減り、貧血になるとされています。貧血の頻度としては鉄欠乏性貧血のほうがずっと多いため、貧血状態だけを見て鉄剤を処方されることがあります。「鉄を飲んでるのに全然貧血がよくならない……」と、色々調べて初めて亜鉛が欠乏していることに気づかれることもあるのです。

 

赤血球自体の数が減るので酸素を運ぶことができず、身体中が酸欠で息切れや疲れやすさを訴えることもあります。

 

実は、亜鉛欠乏は1961年にイランで、著しい低身長(19~21歳男性なのに9~10歳男児くらいの身長)、ひどい貧血の症状を認める男性たちを研究することによって見つかりました。彼らはパンと少しのミルクとジャガイモを主に食べていました。そこから鉄剤の補充だけでなく、動物性タンパク質を食べるという食生活に変えたことにより、それらの症状から解放されたのです。動物性タンパク質、つまり肉類には多くの亜鉛が含まれているからです。

 

小児科専門医・医学博士

順天堂大学医学部卒業、同大学大学院小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。日本小児科学会認定小児科専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/こころ新橋保育園嘱託医/東京インターナショナルスクール中目黒キンダーガーデン嘱託医。夫の仕事でアメリカに渡り子育てを経験する。現在2児の母。都内クリニックにて、年間のべ1万人の子どもを診察しながら子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。
最新著書『小児科医のママが教える 離乳食は作らなくてもいいんです。』(時事通信社)

著者紹介

連載子どもに食べさせたい!離乳食期に必要な栄養素

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