「雑魚データ」でコストが増大…愚かなAI開発の実態とは?

昨今、様々な業界で技術の応用が模索されている人工知能。投資の世界でも、AI技術を活用したサービスが次々と誕生し、関心が高まっています。本連載では、AI技術を用いた株価予測ソフトを開発する株式会社ソーシャルインベストメントの山本弘史代表取締役が、AIによって大きく変わる資産運用の未来について説明していきます。今回は、膨大な開発コストがかかるといわれる、AI開発の現状について見ていきます。

AIが稼働するための「3つのステップ」

前回(関連記事:『既得権益に忖度なし!「AI」が個人投資家の武器になるワケ』)、「AIは忖度しない。だからこそ個人投資家の武器になる」と伝えた。しかし、誰もが知っている通り、新聞の企業欄などを見ると、大手金融機関や証券会社が、何百億円、何千億円という費用かけて、AI開発や、AIを冠した金融商品の開発を、実に誇らしげに発表し続けている。こうした発表を耳にするたび、違和感を覚えてしまうのは、AI開発にかかる開発の中身を知っている筆者だからだろうか。

 

「AI開発には、すごいお金がかかるんだあ」と感心している人もいるかもしれないが、忖度なしに筆者の見解を述べよう。

 

「適切なAI開発には、お金はそれほどかからない」

 

この見解を解説するために、AIが稼働する流れについて説明しよう。AIが稼働する流れを簡素化して並べると、下記の3つのステップが存在する。

 

1)データ(情報)のインプット

2)AIによる学習

3)アウトプット

 

AIを稼働させるために、まず何らかの「データ」が必要となる。このデータを餌としてAIに学習させ、その結果をアウトプットさせるという流れになる。最初に、目、鼻、耳、口、肌などからの情報が脳に入り、認識・処理が行われ、感情や行動となって表れる、と人間に例えるとわかりやすいだろう。

 

ここで重要なのは、目、鼻、耳、口、肌などから入ってくる情報である。たとえば、交通量の多い交差点で反対側に渡ろうとしているとき、どんな情報が入ってくるだろうか。おそらく、目からは道路や信号の状況、耳からは車の走行音や自転車のベルの音などが入ってくるだろう。

 

しかし、これらの情報が適切に入ってこないと、とんでもないことになる。目から赤信号の情報が入ってこなかったために、交差点を渡ってしまったらどうだろうか。危ない。非常に危ない。一歩間違えれば大きな事故につながる。

 

一方で情報があればいいというわけではない。情報が多すぎて、無駄な情報に気に取られるのも考えものだ。たとえばスマートフォンをいじりながら交差点を渡る、交差点の向こうにある飲食店の行列に気を取られる、好みの女性(または男性)が前方から歩いてきて思わず見とれてしまう……。情報が入ってこないときと同様に、無駄な情報というのも、一つ間違えれば事故につながりかねない。

 

適切な情報が不足していてもダメなのだが、無駄な情報が過多であってもダメなのだ。これは投資の世界におけるAIでも同じことがいえる。

無駄なデータのせいで、AI開発はコストがかさむ

投資の世界では、個人投資家の売買履歴が情報となり、AIにインプットされるのだが、交通量の多い交差点と同様に、適切な情報が不足していてもダメだし、無駄な情報が過多であってもダメなのだ。しかし、世の中、運やまぐれではなく、本当に力があり勝ち続けている個人投資家はほんのわずかである。失礼を承知でいうと、個人投資家の売買履歴のほとんどが「雑魚データ」という位置づけになる。

 

さて、冒頭でも触れたが、今、大手金融機関や証券会社が、AI開発やAIを冠した金融商品の開発にしのぎを削っている。しかし、そのAI開発のベースとしている情報は、毎日のように大手金融機関や証券会社に流入し蓄積されている個人投資家の売買履歴である。つまり、膨大の量の「雑魚データ」の塊なのだ。

 

当たり前の話だが、このビッグデータならぬ「ビッグ雑魚データ」を情報としてAIに学習させたところで、まともなアウトプットデータは出てこないのは明々白々である。勝てない投資家の情報をAIが学んだところで、勝てないアウトプットが吐き出されるのが関の山。交通量の多い交差点を、携帯電話を見ながら歩くと事故に遭う可能性がぐんと高まるのと同じことである。

 

しかも、ビッグ雑魚データを処理するのは甚大な費用がかかる。特に、まともなデータと雑魚データを分別させる処理に、とりわけ大きな費用がかかるのである。これは投資の世界に限った話ではなく、多くの業界で「ビッグ雑魚データ」を手にして、AIに学習させようとする。そのため分別処理する際に、莫大な費用がかかってしまうのである。それにより、「AI開発にはお金がかかる」という幻想が蔓延してしまうのだ。

 

しかし本当は、AI開発にそれほどお金はかからない。投資の世界であれば、必要なのは「強力な力を持つ投資家」のデータであり、そのデータは数多くは必要ない。わずか1人の優秀トレーダーのデータでも十分だ。インプットデータさえ適切であれば、データの分別処理にはそれほどお金はかからないし、AIが学習する段になっても、容量は大きくないので負担もそれほど大きくはない。つまり、「適切なAI開発には、費用は多くかからない」というのが真実なのだ。

 

もちろん、AIに開発費をかけまくっている金融機関や証券会社にも、彼らなりの言い分はあるだろう。その言い分は企業経営をするうえでは必要かも知れないが、個人投資家の立場でいうと、あまりに身勝手な言い分だと感じる。

 

もう、おわかりだろう。AIという言葉は企業PRやIRで有効であるため、アピール合戦の材料として活用されているのである。AI開発に着手したり、AIの商品開発をしたりすることが、「何も知らない一般投資家」には凄いことに映ってしまい、結果、当該企業の価値があがるのだ。

 

なんだかよくわからないけど、 なんだか凄そうなことを、なんだか甚大な資金を投じてやっている……。

 

こうした砂上の楼閣を作るために、企業は中身のない「巨額投資」を行い、それを積極的にアピールしているのが実態なのである。

 

株式会社ソーシャルインベストメント 代表取締役

茨城県取手市生まれ。
株式会社テレビ朝日サービス入社。テレビ朝日報道の中枢を担う基幹システムの運用取り纏め行う。
同社退職後、日本では行われていない投資の教育を広め、国民一人ひとりが金融リテラシーを高めることで、仮に資産価値がまったくなくなったとしても、また自分の力で資産を作り出し、将来の不安なく生き延びることができる「自分の力で生きる力」を身に着けることを全力でサポートすることを目的とした株式会社ソーシャルインベストメントを2013年12月に設立。
webマーケティングを通して多数の投資教育プロジェクトを成功させる。
2016年より人生100年時代において社会保証に頼らない人生をサポ―トすべく、「投資教育」と「AIアプリケーション開発」を軸として事業を展開。

著者紹介

連載投資スキル0点でも「100点満点のAI株価解析ソフト」を作れたわけ

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