昨今、様々な業界で技術の応用が模索されている人工知能。投資の世界でも、AI技術を活用したサービスが次々と誕生し、関心が高まっています。本連載では、AI技術を用いた株価予測ソフトを開発する株式会社ソーシャルインベストメントの山本弘史代表取締役が、AIによって大きく変わる資産運用の未来について説明していきます。本記事では、寄り付き前の売買代金額に注目した銘柄選定の方法について紹介します。

個人投資家が株式市場で勝てる、唯一の時間帯

投資の世界は、個人投資家に負けさせようと企み、実現させている層がいる。そのような理不尽な世界で勝つためには、まず「相場は予想できる」という嘘に気づき、「過去から未来を予想する」という戦略を捨てなければいけない。

 

そして個人投資家でも勝てる時間帯で勝負に挑む。その時間帯とは、売買のエネルギーが最も集中する時間帯である「寄り付き」であり、東京の株式市場の場合、相場が動き出す午前9時である。この時間帯は「買い」と「売り」 がぶつかり合い、上昇でもない下落でもない株価に上下の「ゆらぎ」が発生する。「ゆらぎによる株価の変動幅を取る」という手法で勝負を決めるのである。その勝負は早ければ1分ほどで終わる。市場に長くいれば損を被るリスクが高まるが、短時間で勝負が決まればそのリスクは排除できるのだ。

 

短時間で勝負を決めるために、あらかじめ前日から候補銘柄を抽出し、寄り付きの前の動きにより最終的に投資判断を行う。銘柄の抽出条件は下記の通り明確で、候補出しにはそれほど時間はかからないだろう。

 

・東証1部銘柄 

※但し、東証2部、ジャスダックでも以下の条件を満たせばトレード可能

・出来高100万株以上

・売買高10億円以上

・株価400円以上

 

さらに日経平均(先物)の状況を見るのもポイントである。たとえば、日経平均先物がマイナス200円を超えるようであれば、寄付き前気配が仮に良かったとしてもトレードは避けたほうがいい。さらに日足が「2、3日連騰している」場合や、年初来高値など、強いレジスタンスライン付近にいる銘柄も同じようにトレード対象から外すのが賢明だ。

 

そしてもう1つ、ポイントがある。それは「売買代金額がより大きい銘柄を選ぶ」ことである。筆者の具体的なトレードで、その理由を説明していこう。

「売買代金額」の大きさに注視した銘柄選び

2019年8月22日(木)。この日の日経平均はプラス88円で寄り付いた。この日の寄付き前気配から良い銘柄をピックアップして、「買い」トレードする銘柄の選定作業を行う。そこで絞り込んだのが良い気配を見せた「スズキ(7269)」と「ユーグレナ(2931)」の2銘柄である。この2銘柄とも非常に良い気配の推移を示していた。

 

8月22日 スズキ気配推移

 

8月22日 ユーグレナ気配推移

 

 

この2銘柄でトレードしようと決めていたが、発注する直前に、1つだけ気掛かりな点がでてきた。気配の状況では問題なさそうに見えるが、どうしてもその「気掛かりな点」がマイナスに働き負けてしまうことが稀にあるというこれまでの経験から、その時は対象から外した。

 

この「気掛かりな点」というのは、2銘柄を比較するとわかりやすいのだが、8時58分時点での寄付き前気配値と気配数量(買い数量)を乗じた、売買代金額である。

 

※寄付き前の売買高気配

「気配値」×「買い数量」(売り数量も近似値だが買いで統一)

たとえば、気配値1,000円 ✕ 買い数量50,000株 = 50,000,000円 となる

 

「スズキ(7269)」の売買代金(気配)は3億4千4百万円と、さすが世界的な企業だけあり、朝の寄付きだけで取引される額も半端ない数量である。一方で「ユーグレナ(2931)」は、3千8百万円である。その差は歴然としており、約10倍もの差がでている。

 

ちなみに、前日の売買高総額は10億円を超えている銘柄のみをピックアップしているので、ユーグレナの3千8百万円という額も、東証1部銘柄のなかでも特に注目されている銘柄であることは間違いない。ただ、どちらでトレードするかと問われると、迷わず大きな資金で取引が行われるスズキを選ぶ。

 

よく「大型銘柄だと売買高が高いので、その分動きも鈍いのか?」「中小型株の方は動きが軽くて、トレードに適してないのか?」という質問を受ける。一般的に、株式に限らず相場の常識からすると答えは「YES」である。時価総額が高い銘柄は、それだけ動かすのに大量の資金を必要とするのは当然だ。しかし個人投資家が寄り付きに注目する取引を行う場合、当日の気配値の額が大きい方がより精度は高まる。

 

ここで少し考えてほしい。スズキのような大型株を動かそうとするには、資金量が豊富な機関投資家などがトレードの主役となるが、彼らとしても、朝の寄付きから何千万円と投入するには、勝てる見込みが高い銘柄に資金を投下していくはずだ。取引額の大きなスズキのような銘柄で寄り付きに勝負を挑むことは、結局、資金の豊富なプロの機関投資家の見立てに便乗する、ということを意味する。

 

寄り付きに注目する戦術は、プロの投資家とザラ場のなかでも唯一といっていい「同じタイミング」でエントリーすることで、勝敗の分水嶺ともなる「いつエントリーするのか」という難しい判断をすることなく、プロの投資家が、8時から9時の寄付きにかけて、じわじわと「買い玉」もしくは「売り玉」を乗せてくる大型銘柄に、ほんの短い時間同乗し、瞬間的に利益を抜くことができる手法である。

 

個人投資家が、投資という厳しい世界で生き残るためのコバンザメ戦略といっても過言ではない。

 

最後に、実際にスズキとユーグレナがどのような結末を迎えたのかをお伝えしておこう。

 

8月22日(木)スズキ一分足チャート

 

寄付き価格は、3,932円。1分後には、4,018円に到達していた。この間の上昇率は、2.2% にもなっている。1日かけても上下に2.0%も動かない銘柄が多いなか、何の材料もでていないのに、ほんの1分間でこれだけの値幅を動かす。

 

個人投資家には決してできない芸当だが、プロの投資家は、寄付き前から投じた資金をどこかで回収するために、寄り付後も上昇させるために追加で資金を投下し、さらにそこに追随しようと大口投資家も参戦してくる。

 

まるで巨大なクジラが海中から徐々に勢いをつけて海面上にジャンプするような巨大なエネルギーである。そのなかをコバンザメが「よろしく!」と、クジラにピタリとくっつき、自身は楽々と海面まで浮上させてもらうのである。

 

一方のユーグレナはどうだったのであろうか。

 

8月22日 ユーグレナ1分足チャート

 

懸念していた点が的中した。前日終値の891円より1.6%高い906円で寄り付いた後、少し上昇を見せたものの、結局は下がってしまった。スズキと同じように寄付き前気配がしっかりしているにも関わらず、このように明暗がはっきりと現れてしまったわけである。

 

気配値の売買高が高い銘柄の方が、寄り付き前に注目するトレード法には向いている。筆者がいくつものトレードを繰り返し、経験則からたどり着いた答えである。

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    ●本記事は、情報提供を目的として、株式会社ソーシャルインベストメントが監修するものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
    ●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、株式会社ソーシャルインベストメント、幻冬舎グループは責任を負いません。

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