物件の管理・運営のエキスパートであり、ハウスリンクマネジメント株式会社代表取締役の菅谷太一氏が、賃貸アパートで「次の入居者」を呼びこむコツを解説します。

「募集条件設定」のポイント

賃貸アパートは転勤や結婚など、何らかの理由で必ず退去が発生するので、既存入居者から退去予告があった際には募集条件、及び修繕工事の打ち合わせを行い、早期に新入居者の確保が必須です。

 

具体的には敷金、礼金額(私の会社では保証会社が敷金の役割を代行してくれているので0円がほとんど)・家賃額・広告料・フリーレントの金額設定を確認する必要があります。確認する内容としては以下となります。

 

◆インターネット掲載物件の確認

 

レインズやポータルサイトなどで掲載物件で同エリア、同間取りのライバル物件を検索し、成約条件について確認して、どうすれば部屋に申し込みが入るのか仮説を立てます。

 

そもそもインターネット上で募集されている部屋は、現在埋まっていない空室が掲載されています。エリアにおけるライバルの部屋を探して、入居の申し込みを確保するために足りない要素を確認します。具体的には「家賃が高いのか?」「初期費用が高いのか?」「賃貸仲介会社に対して、広告料が少なく門戸が狭いのか?」「周知が足りず認知度が低いのか?」というように、どのような原因で入居の成約に至らないのかを検討します。

 

◆賃貸仲介会社へのヒアリング

 

そのエリアに強い賃貸仲介会社に直近の成約事例を聞いたうえで、現在募集している部屋に申し込みがなぜ入らないのかをヒアリングします。地元の賃貸仲介の営業マンは毎日そのエリアの空室物件を見ているので、どうすれば部屋の申し込みが即確保できるのかを知っています。そのため直近の成約事例をヒアリングし、その理由を直接確認して決め家賃(成約家賃)、決め条件(成約条件)を確認することができます。

FAX、賃貸ポータルサイト登録…リーシング方法は様々

入居募集条件が決まったら続いて、リーシング活動を行います。リーシングは入居付けを意味します。なるべく幅広くたくさんの入居希望者に向けて周知を行わなければいけません。

 

まずは、物件の所在地から考えて、どこの駅の賃貸仲介会社が入居付けしてくれるのかを確認します。例えば、私の経営する会社では本厚木の管理物件が多いのですが、小田急沿線で考えると本厚木駅・海老名駅・町田駅が対象になります。賃貸仲介会社は多数ありますので、そのすべてが物件空室の周知活動対象になります。

 

周知方法として一番効果が高いのは、空室予告が出たタイミングで直接賃貸仲介会社へ訪問してマイソク(物件の概要、間取り図、地図などをまとめた資料の通称)を手渡しすることです。そうすると賃貸営業マンも「頑張ります!」と声がけをしてくれますので、空室の周知効果は高いものになります。

 

1日50件以上(年間2万件)は周知活動をすべく、アルバイトを中心に活動をしていますが、その積み重ねもあって、最近ではレインズにマイソク図面(物件のチラシ)をアップするだけで入居申し込みが入るような流れが出てきています。

 

加えて足を使って周知活動を行うため、当社のリーシング担当は賃貸仲介会社の営業マンに日々接しています。つまり、募集条件に問題があるのかどうかを直に賃貸営業マンから確認できる強みがあります。こうした直接の周知以外のリーシング活動には次のような方法があります。

 

◆FAXを送付

 

賃貸情報の掲載されたポータルサイトへ登録している不動産会社にエリアを指定してFAXで周知する方法です。

 

賃貸仲介の営業マンはとても忙しいので、FAXをすべてチェックしている人は少ないと思われますが、それでも周知の効果は高いので、直接周知の効果が低い場合にエリアを変えて行うようにしています。

 

エリアを変えて反響があった場合は、遠いエリアでもお客様を付けようとしてくれますから、募集条件が的を外れていないことになります。そういった意味でも、少ない労力で効果を発揮できるFAX送付は必須業務になります。

 

◆レインズ・ポータルサイトに掲載

 

不動産会社の営業マンはお部屋探しに来たお客様に対し、空室の紹介をするうえでレインズをフル活用します。そのため、空室を紹介してほしいこちら側としても、レインズに物件掲載しておく作業はさまざまな仲介会社へ周知活動をするうえでも大切な作業です。

 

レインズだけではなく、ポータルサイトの大手である「アットホーム」や「ホームズ」などにも掲載します。不動産会社の営業マンだけではなく、お部屋探しをしている人にも周知できる利点がありますので、ポータルサイトへの掲載はとても重要な作業になります。

「チャレンジ相場家賃」「決め家賃」の実際

賃貸の最需要期の3月末などは、家賃が多少高くても賃貸ニーズが旺盛であるため、入居が早期に決まる場合も多いのですが、6・7・8月など賃貸の非需要期においては強気の条件設定が空室を長期化してしまう恐れもあります。

 

また、エリアのなかでライバル物件の空室が埋まっている場合だと多少は家賃が高くても入居は付きますが、多数のライバル物件があり空室が多いエリアでは家賃を徐々に下方させていかなければ入居が決まらない場合が多いものです。

 

このように時期や状況によっても賃貸条件が変動するため、募集条件には決まるであろう賃貸条件(決め家賃)と、決まって欲しい賃貸条件(チャレンジ相場家賃)の二つが存在します。この二つを空室期間が長期化しないように使い分けなければいけません。

 

ただし、チャレンジ相場家賃を採用できるのは、乗降客数が多いターミナル駅にほど近く、賃貸需要が旺盛なエリアで結果が出る場合です。賃貸ニーズがそれほど旺盛ではないエリアでチャレンジ相場家賃を採用しても、結果が出ない可能性が高いですから、賃貸管理会社の担当者と綿密に募集条件を打ち合わせをする必要があります。

人口減少時代を勝ち抜く 最強の賃貸経営バイブル

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菅谷 太一

幻冬舎メディアコンサルティング

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