組織開発と人材開発のコンサルタントである布留川勝氏の著書『パーソナル・グローバリゼーション』より一部を抜粋し、大企業の社長や有名スポーツ選手が持ち合わせる「ビジョナリーシンキング」について解説します。

構想は「楽観的」に、計画は「悲観的」に行う

◆あなたのポテンシャルを決めるビジョン

 

ビジョナリーシンキングとは、右脳で創造的かつわくわくするようなビジョンを描く一方で、そのビジョンが実現可能かどうかを左脳で論理的にきっちりと検証できるような思考を指す。たとえば、私が典型的なビジョナリーシンキングの持ち主だと確信しているソフトバンクの孫正義代表取締役会長兼社長は、脳科学者の茂木健一郎氏との対談で、次のように語っている。

 

「最初は右脳を使って思う存分、成功のイメージをつかみますが、その次の段階では、そのイメージを実現するための具体策を、左脳で翻訳していくんです。『この未来を実現するためにはどうすればいいか』と。そこからはもう、完全に論理の世界です」(プレジデント・オンライン)

 

つまり、成功するための構想を無制限に自由に思い描くことで、アイデアの幅を広げることができる。しかし、その構想を実現するためには、緻密な計画を論理で突き詰めていく必要があるのだ。また、京セラと第二電電(現・KDDI)の創業者であり、JALの再生でも有名な稲盛和夫京セラ名誉会長も、次のような言葉を残している。

 

「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行すること。これが物事を成就させ、思いを現実に変えるのに必要なのです」(稲盛和夫OFFICIAL SITE)

 

構想は楽観的(右脳・ビジョナリー)に、計画は悲観的(左脳・シンキング)に行うことが、成功の法則である。そして、悲観的に考えた後、頭のなかで決めたことを腹を決めて実行に移すのがセルフエンパワーメントである。

イチローが幼少期から持っていた明確な「ビジョン」

一流のスポーツ選手もまた、卓越したビジョナリーシンキングの持ち主だ。メジャーリーガーのイチロー選手は、小学6年生のときに「僕の夢」と題した作文で、次のように記している。

 

「僕の夢は一流のプロ野球選手になることです。そのためには中学、高校と全国大会に出て活躍しなければなりません。活躍できるようになるためには練習が必要です。僕は三才の時から練習を始めています。三才から七才では半年くらいやっていましたが、三年生の時から今までは三百六十五日中三百六十日は激しい練習をやっています。だから、一週間中で友達と遊べる時間は五、六時間です。そんなに練習をやっているのだから、必ずプロ野球選手になると思います。そして、その球団は中日ドラゴンズか、西武ライオンズです。ドラフト一位で契約金は一億円以上が目標です」

 

彼は「中日ドラゴンズか西武ライオンズ」「ドラフト一位」「契約金一億円」「一流のプロ野球選手」と、具体的なビジョンを描いている。この条件が相当難しいものであることは、プロ野球ファンならすぐにわかるだろう。これは、その年のドラフトで高校生から社会人まで含めて、全国ベスト10に入るような逸材でなければ、叶えられないビジョンだ。

 

だが、実現が難しいかどうかは、ビジョンを描く時点では問題ではない。むしろ、実現可能性など度外視して、本当に自分の心が躍るような夢を描くことが重要だ。小学生のイチローにはそのビジョンがあったが、たいていの小学生はそんなものを持っていない。

 

なぜならば、本当に叶えたいビジョンを持っているなら、その実現のために何をすればよいか、シンキングし始めるはずだからだ。彼の場合は、「活躍できるようになるためには練習が必要」とのシンキングの結果、「三百六十五日中三百六十日」の「激しい練習」を実行した。プロ野球選手に憧れる小学生はいくらでもいるだろうが、同じ量の練習ができる小学生はどれくらいいるだろうか。

 

彼が成功できたのは自分の将来を具体的に描いていたからだ。成功する人は自分が成功している姿を視覚的に描いている。これがビジュアライゼーションの力だ。だが、具体的にビジョンを描いても、何をすればよいかシンキングできない人がいる。シンキングできる思考力があっても、ビジョンを持てない人もいる。成功するためには、ビジョンとシンクの2つが欠かせない。

 

同じようにビジョナリーシンキングを行った、もう一人のスポーツ選手を紹介しよう。サッカーの本田圭佑選手だ。同じく、小学6年生のときの「将来の夢」という作文を見てほしい。

 

「ぼくは大人になったら、世界一のサッカー選手になりたいというよりなる。世界一になるには、世界一練習しないとダメだ。だから、今、ぼくはガンバッている。今はヘタだけれどガンバッて、必ず世界一になる。そして、世界一になったら、大金持ちになって親孝行する。Wカップで有名になって、ぼくは外国から呼ばれて、ヨーロッパのセリエAに入団します。そしてレギュラーになって、10番で活躍します。一年間の給料は40億円はほしいです」

 

彼も「セリエAに入団」「レギュラーになって10番」「給料は40億円」と、具体的なビジョンを描いている。そして、ビジョンを達成するために「世界一練習しないとダメだ」とシンキングしている。このビジョナリーシンキングの強さが、人の成功を決めるのだ。

 

最も意識しなければならないのは、現状に満足しないということである。つねに現状を超える目標を設定し、それに向けて自分のパーソナル・グローバリゼーションのレベルを高めていくことが大切だ。

 

ビジョナリーシンキングは、あなたの目標を高め、あなたのスキルを高め、そしてあなたのキャリアを発展させてくれることだろう。

パーソナル・グローバリゼーション

パーソナル・グローバリゼーション

布留川 勝

幻冬舎メディアコンサルティング

変化の激しいグローバル化時代に必要とされるスキルについて、数多の日本企業のグローバル人材育成をサポートしてきたグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ。 代表取締役の布留川勝氏がグローバル…

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