メキシコの信用力を格付け会社2社が引き下げ、ペソ安も

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

メキシコの信用力に対して格付け会社2社が評価を引き下げました。ムーディーズは今後の格下げの可能性を示唆する見通しである弱含み(ネガティブ)を付与し、フィッチはメキシコを格下げしました。両社共通して懸念を表明したのは国有石油会社(ぺメックス)支援によるメキシコ財政悪化ですが、フィッチは米国の追加関税示唆などによる成長悪化もリスクとしています。

フィッチ:メキシコ国債を格下げ、国有石油会社の支援負担と経済成長懸念が背景

格付け会社フィッチ・レーティングス(フィッチ)は2019年6月5日(日本時間6日午前7時前)、メキシコの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をBBB+からBBBに格下げしました。BBBは投資適格級の下から2番目となります。

 

フィッチの発表の少し前、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)はメキシコの格付け見通しを安定的から弱含みに引き下げました。

どこに注目すべきか:メキシコ、格付け、国有石油会社、関税

メキシコの信用力に対して格付け会社2社が評価を引き下げました。ムーディーズは今後の格下げの可能性を示唆する見通しである弱含み(ネガティブ)を付与し、フィッチはメキシコを格下げしました。両社共通して懸念を表明したのは国有石油会社(ぺメックス)支援によるメキシコ財政悪化ですが、フィッチは米国の追加関税示唆などによる成長悪化
もリスクとしています。


メキシコの格付けに関する報道を受け、市場ではペソ安が進行しました(図表1参照)。もっとも同じ頃、米国がメキシコに警告している追加関税を巡る協議が打開の兆し無く終了したことも報道され、悪い知らせが重なった面もあります。

 

[図表1]メキシコの政策金利とペソ(対ドル)の推移 日次、期間:2016年6月6日~2019年6月5日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]メキシコの政策金利とペソ(対ドル)の推移
日次、期間:2016年6月6日~2019年6月5日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

格下げにまで踏み込んだフィッチは、今回の決定の主な理由を2つあげています。

 

1つ目は、両格付け会社が懸念する、ぺメックス支援の財政負担です。メキシコの昨年発足したロペスオブラドール新政権は石油産業復活を公約しており、今年既に約70億ドル(GDP〈国内総生産〉対比で0.6%程度)の支援を約束し、3分の1程度を予算化しています。しかし、ぺメックスは1000億ドル以上(GDP対比8.7%程度)の有利子負債を抱える債務超過企業で、さらなる支援が必要と見られます。

 

ぺメックスの原油生産量は低下傾向が続いている中、政権支持層への配慮から支援を打ち出しましたが、同時にメキシコ政権は財政再建にも取り組む約束をしています。格下げは政権の対応をより困難にすると見られます。

 

2つ目は経済成長率の低下です(図表2参照)。高水準の政策金利が成長を抑制している面はありますが、足元では米国がメキシコの不法移民流入対応が不十分として追加関税賦課を示唆しています。6月10日を目処に、5%、その後各月5%ずつ段階的に引き上げ、10月には最終的に25%への追加関税引き上げを示唆しています。

 

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[図表2]メキシコ実質GDP(国内総生産)成長率の推移 四半期、期間:2014年1-3月期~2019年1-3月期、前年同期比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]メキシコ実質GDP(国内総生産)成長率の推移
四半期、期間:2014年1-3月期~2019年1-3月期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

メキシコの足元の成長率は前年比1.3%ですが、交渉が難航し、仮に25%まで関税が上がった場合メキシコの成長率はゼロ近辺まで低下すると予想が市場に見られます。低成長によるメキシコの返済能力悪化が懸念されます。

 

 

米国とメキシコの交渉は現在のところ打開の兆しはないようです。ただ協議は続けられる見込みで、今後も注視が必要です。なお、ぺメックスの社債が格下げされたのは今年の1月で、メキシコ政府は財政支援に乗り出しました。支援に苦慮する一方で、米国との通商交渉が降りかかった格好で、メキシコ中銀が金融緩和に舵を切るのも近いと思われます。

 

 

記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『メキシコの信用力を格付け会社2社が引き下げ、ペソ安も』を参照)。

 

(2019年6月6日)

 

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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