世界銀行、米中通商問題の影響で世界経済成長率を下方修正

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世銀の経済見通しは、国際通貨基金(IMF)など他の国際機関の予想と同様に、米中通商問題の影響で世界経済成長率を下方修正しています。ただ、報告書の分析セクションでは増加する世界の債務を取り上げています。明日の債務危機を警告するといった内容ではないものの、累積する債務に注意を払う必要はあると思われます。

世界銀行:世界貿易の悪化などを背景に世界経済見通しを大幅に下方修正

世界銀行は2019年6月4日に世界の経済成長見通し報告書を公表しました。世銀は19年の世界成長率を2.6%と予想し、今年1月時点の予想である2.9%から下方修正しました。(図表1参照)。

 

[図表1]世界銀行による主な国・地域の19年成長率予想 予想時点:2019年1月(左)、2019年6月(右) 出所:世界銀行のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]世界銀行による主な国・地域の19年成長率予想
予想時点:2019年1月(左)、2019年6月(右)
出所:世界銀行のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

世銀は報告書の中で、下方修正の背景として(米中通商問題による)世界貿易の想定以上の悪化と、投資の低下と説明しています。

どこに注目すべきか:世界銀行、米中通商問題、債務残高

世銀の経済見通しは、国際通貨基金(IMF)など他の国際機関の予想と同様に、米中通商問題の影響で世界経済成長率を下方修正しています。ただ、報告書の分析セクションでは増加する世界の債務を取り上げています。明日の債務危機を警告するといった内容ではないものの、累積する債務に注意を払う必要はあると思われます。

 

まず、世銀の経済予想の特色を見ると、米中通商問題の当事国である米国や中国の成長率は据え置かれる一方で、中国向け輸出の減少を受けユーロ圏を1.2%と0.4ポイント引き下げています。日本も外需が予想より弱いことで引き下げられており、今回の予想では米中の周辺への影響が織り込まれています。

 

もっとも、米国の20年の成長は、過去の財政政策の効果減少が見込まれることから1.7%へ低下が予想されています。

 

一方、新興国は先進国同様の理由で、下方修正され今年は4.0%の成長が見込まれています。しかし、20年は4.6%へ改善が見込まれています。中国の成長率については、20年が6.1%と19年から小幅ながら低下を見込んでいます。しかし、世銀はブラジルなど南米の国々や、中国以外のアジアについては、来年以降の回復を見込んでいます。それらを背景に新興国の堅調な推移を想定しています。

 

ただ、世銀は経済成長のリスクの方向は下方にバイアスがかかると見ており、要因として通商交渉の動向と、債務問題を指摘しています。世界的に債務が増加している点に懸念を示し、例えば先進国と新興国(EMDE)を合わせた、政府債務残高の対GDP(国内総生産)比率は金融危機前の約15%から18年に同比率は約51%にまで上昇しています。

 

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債務の質も悪化しており、EMDEの債務の平均満期は金融危機後に急速に短期化し、返済を早く迫られる構造となっていることや、格付けも平均的に悪化しています。

 

また、新興国では民間の債務が増加しています。民間債務の増加は金利低下を背景に経済成長を目的に借入を増やすポジティブな面もあります。しかし、過去の例では、多大な民間債務により危機が発生すると、公的債務にシフトされ、残高が減らないケースが見受けられただけに注意は必要です(図表2参照)。

 

[図表2]金融危機前後の債務残高対GDP比率の推移 年次、各国で金融危機が起きた年の前年と3年後までの同比率を表示 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]金融危機前後の債務残高対GDP比率の推移
年次、各国で金融危機が起きた年の前年と3年後までの同比率を表示
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

最近の低金利環境での借入は、成長へのプラス面も期待できるため、「悪い」ことではありませんが、どの程度までの債務が適正かについて、世銀の報告書も明確とは言えません。成長とバランスの取れた財務健全性を継続的にチェックすることを怠らないことが大切と見ています。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『世界銀行、米中通商問題の影響で世界経済成長率を下方修正』を参照)。

 

 

(2019年6月5日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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