ECB、フォワードガイダンス変更とTLTRO3の組み合わせ

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

今回のECB理事会では、主要政策金利は市場予想通り据え置かれました。一方、より注目が高かった政策金利フォワードガイダンスとTLTRO3の詳細が公表されました。フォワードガイダンスでは、利上げ時期が半年先送りされるなど全体のトーンはハト派(金融緩和を選好)的な印象です。ただ、細かい点で、金融緩和に慎重な面も見られます。

ECB政策理事会:利上げを半年先送り、TLTRO3の詳細を公表

欧州中央銀行(ECB)は2019年6月6日に理事会を開催し、フォワードガイダンス(金融政策の先行き指針)として政策金利を少なくとも20年前半までは現状の水準に据え置くと決定しました。利上げ時期の先送りは19年3月の会合に続いて2度目の措置です。

 

ECBは3月に導入を発表した銀行への長期資金供給策 (TLTRO3)について貸出条件の詳細も公表しました。

どこに注目すべきか:ECB理事会、フォワードガイダンス、TLTRO3

今回のECB理事会では、主要政策金利は市場予想通り据え置かれました。一方、より注目が高かった政策金利フォワードガイダンスとTLTRO3の詳細が公表されました。フォワードガイダンスでは、利上げ時期が半年先送りされるなど全体のトーンはハト派(金融緩和を選好)的な印象です。ただ、細かい点で、金融緩和に慎重な面も見られます。

 

まず、ハト派的政策を決めた背景である、ECBの景気認識を振り返ると、今回のECB予想では成長率を下方修正しました(図表1参照)。例えば、20年の成長率を1.4%と前回(3月時点)の1.6%から引き下げています。21年までの成長率予想でも鈍い回復を見込んでいます。米中通商交渉の先行き不透明感によりセンチメントが悪化し、投資が控えられ、製造業の回復が鈍い点などをECBは指摘しています。

 

[図表1]ユーロ圏GDP(国内総生産)成長率の実績と予想 四半期、期間:2012年1-3月期~2019年1-3月期(実績)、点線は予想 出所:ECB、ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ユーロ圏GDP(国内総生産)成長率の実績と予想
四半期、期間:2012年1-3月期~2019年1-3月期(実績)、点線は予想
出所:ECB、ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

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ユーロ圏のインフレ率見通しについては小幅な下方修正にとどめています。

 

次に、公表された主な金融政策は1つ目がフォワードガイダンスで、貿易戦争や地政学リスクが前回理事会時点より高まっているため、(利上げ前の)据え置き期間を半年ほど延期したとしています。利上げを先送りした点ではハト派的ですが、市場の期待の中には「インフレ率が2%となるまで」無期限据え置きや、利下げが想定されていただけに、やや積極性に欠ける印象です。

 

2つ目のTLTRO3の詳細は想定よりも緩和的となっていますが、使い勝手の悪さに懸念も見られます。例えば、TLTRO3の適応金利は主要政策金利(現行0.00%)に0.1%上乗せした金利です。なお一定の貸出基準を満たせば預金ファシリティ金利(現行-0.40%)に0.1%上乗せした金利が適応されます。前回のTLTRO2では条件が寛容過ぎと批判された中での今回の貸出適応金利は緩和的と見られます。

 

 

一方で、前回は認められていた早期償還が認められないなど使い勝手は悪く、貸出意欲低下が懸念されます。

 

今回のECBの発表を受けた市場の反応は、独10年国債利回りが低下するなど利上げ時期の延期というハト派的な政策を反映した動きが見られます(図表2参照)。ただ、より金融政策を反映しやすい2年国債など短期セクターは逆に利回りが上昇しています。半年程度という時期限定の延期であったことが嫌気された可能性があります。また、TLTRO3を最も利用すると見られるイタリア国債の利回りは上昇しています。使い勝手が懸念されたものと見られます。

 

[図表2]ドイツ国債(2年、5年、10年)利回りの推移 日次、期間:2018年6月7日~2019年6月6日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ドイツ国債(2年、5年、10年)利回りの推移
日次、期間:2018年6月7日~2019年6月6日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

世界的に金融緩和傾向です。ただ利下げ余地が少ない中央銀行による利下げ示唆には、米中通商交渉の動向等を見極める時間稼ぎの可能性も一応念頭に置いています。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECB、フォワードガイダンス変更とTLTRO3の組み合わせ』を参照)。

 

(2019年6月7日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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