地方にある先祖代々の土地は、一刻も早く「売却」すべき理由

親が保有している「先祖代々の土地」。当然のように、自分もいずれ引き継ぎ、そしてまた子孫へ遺していくものだ…と考えているかもしれない。しかし、本当に「家族の資産を守る」ことを考えるのであれば、収益を生まない土地は早めに売却することが、相続対策の基本だ。島津会計税理士法人東京事務所長・事業承継コンサルティング株式会社代表取締役の岸田康雄公認会計士/税理士が解説する。

結局は、納税のために「切り売り」することに

地主の方々は、保有する土地へ強い執着心を持っています。相続の考え方として、「先祖代々の土地は売らずに相続し続けなければならない」という信念を持っている方が多いようです。

 

何があっても土地を手放したくないと考えていても、相続税の納税のために、結局は切り売りすることになります。その結果、先祖代々から引き継いだ一族の財産がどんどん目減りします。無理して保有し続けることができたとしても、収益性が下がってしまい、二束三文でしか売れない、売りたくても買主が見つからない、最後は資産価値がゼロになってしまいます。

収益を生まない土地は売却すべき

先祖代々の土地を自分の代で手放したくない、親戚や世間体が気になるという人もいるでしょう。しかし、自分の代で売らなくても、納税資金が不足している状態で相続が発生すれば、現金を用意するために、相続人である子供たちが売らなければならなくなります。つまり、無理に土地を保有することは、そのツケを将来の相続人に回すことになるのです。

 

「田舎に住む親が持っている土地は、相続すべきでしょうか?」このような質問を受けることがよくあります。これに対して考えるべきことは、地方の土地の資産価値は、近い将来、ゼロになってしまう可能性が高いということです。

 

もし土地を相続したまま、何もしないで放っておくと、不用物を不法投棄されたり、何らかの形で無断使用され事故を引き起こされたりするなどのリスクを伴います。トラブルが生じますと、土地の所有者責任が問われますから、収益を生むどころか土地そのものがリスクとなります。

 

このような収益性が低い土地は、たとえ先祖代々引き継いできた土地であったとしても、自分が住むという目的がない限りは、早めに売却すべきなのです。

 

頑張って土地を相続するために、土地の有効活用を成功させればよいのでしょうか。もちろん、地方の土地に立派なビルやマンションを建てて、賃貸経営を始めることも選択肢の1つとなります。

 

しかし、近年問題となっているように、賃貸経営の調子が良いのは最初の数年間だけで、その後の賃料引下げや空室増加によって赤字は膨らむケースがあります。最悪の場合、キャッシュ・フローが回らなくなり、借入金返済のために自己資金を減らすこともあるようです。現実には、無理して土地を保有し続けるよりも、手放すほうが好ましいケースが多くあります。

 

相続発生前の元気なうちに土地を売却しておこうと考えていても、なかなか買主が見つからず、相続時まで売却できずに残ってしまうこともあります。相続発生後に売却できればよい、物納もできると考えるかもしれません。しかし、現実には売却できない、物納もできないケースのほうが多いのです。

 

相続発生前からいつでも売却、物納できるように準備を進めておくべきです。買主が現れたときには、そのタイミングを逃してはいけません。

 

それでも、土地が売れずに相続せざるをえない場合、引き続き不動産仲介業者に売却を依頼し、なるべく早めに処分することが得策です。相続税の申告期限から3年以内に不動産を売却すると、支払った相続税のうち一定金額を取得費に加算できる特例が使えます。この特例を使えば、譲渡所得を圧縮して、所得税負担を軽減することができます。つまり、3年以内の売却をすることができれば、節税効果を享受することができるのです。

 

一方、親の持つ不動産に多額のローンが残っているのであれば、相続自体を放棄する「相続放棄」という選択も可能です。この場合、相続があったこと(親の死亡)を知った日から3ヶ月以内に相続放棄の手続きを行います。しかし、これによって借金を踏み倒すことになります。金融機関との関係は一気に悪化することになります。金融機関のお世話になっている自営業の方には、お勧めできません。

 

土地を持っていればいつか値上がりするだろうと考える土地神話の信奉者が、今でもまだ数多く存在しています。しかし、デフレ経済の日本において、今後、地価の値上がりを期待すべきではありません。逆に、地価の値下がりリスクと保有コストの増加という問題を考慮しなければならないのです。

 

収益性が低下した土地は早めに売却することが、相続対策の基本です。一日も早く売却しましょう。

 

 

岸田康雄

島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

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島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社 代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

一橋大学大学院商学研究科修了(会計学及び経営学修士)。 国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)、公認会計士、税理士、中小企業診断士、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。
中央青山監査法人(PricewaterhouseCoopers)にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門(不動産投資)、SMBC日興証券企業情報本部(中小企業オーナー向け事業承継コンサルティング業務)、みずほ証券グローバル投資銀行部門(M&Aアドバイザリー業務)に在籍し、中小企業オーナーの相続対策から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継と組織再編のアドバイスを行った。

WEBサイト https://jigyohikitsugi.com/

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