現場の社員は大混乱!社長と幹部の話が「違ってしまう」理由

今回は、中小企業が「トップダウン型経営」であり続けることの弊害について取り上げる。※本連載は、株式会社ソリューション代表取締役の長友威一郎氏の著書、『“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術』(合同フォレスト)から「社員が自然に育つ仕組みづくり」の章をメインに抜粋し、事業を拡大するために、経営者として組織をどのようにマネージメントすべきかを見ていく。

「組織はトップの器以上にならない」

私たちのクライアントの会社でもよく見受けられるのですが、業績が停滞し、社長が焦り始めて「いいや、俺がやる!」とトップダウンを強化してしまうと、優秀な社員ほど、その状況を冷静に見るようになります。そういう優秀な人たちほど、会社の危機に際しても、合理的に対処してくれたりもするのです。

 

ところが、社長が焦ってアクセルを全開にし始め、その状況にどっぷり浸かって、社長自身の視野が狭くなればなるほど、その社員たちは状況を客観視し、「この会社ちょっとしんどいな」「社長が現場に戻れば業績は上がるけど、戻らなかったら…」ということで会社を見切り、最悪の場合は辞めてしまうこともあります。

 

従業員数が30名以上の企業の場合、社長のトップダウンが強くなればなるほど、社員はYESマンになったり、優秀な人材が動ける許容範囲が狭まったりしてしまいます。

 

「経営の神様」ともいわれる稲盛和夫氏の言葉に、「組織はトップの器以上にならない」というものがあります。それと同様に、社長の視野や行動が狭くなればなるほど、社員のそれらも狭くなる。すると、「自分の視野や行動をもっと広げていきたい」「今よりも先を目指したい」など、モチベーションの高い社員たちは、辞めていってしまいます。いつまでもトップダウンの組織であり続けることの弊害は、このように優秀な社員から見切られるということが一番大きいのです。

 

実は、社員から会社が見切られるステップというものがあります。優秀な幹部や社員というのは、最初は経営者に積極的に意見を言ってくるのですが、だんだんと意見を言わなくなってきたら、黄色信号です。

 

以前、あるクライアント企業のところへ3カ月ぶりにうかがったとき、幹部の中でもすごく勢いのあったAさんが、ものすごく静かになっていたことがありました。話していても、以前のような覇気がなくて「なんだかおかしいな」と感じました。

 

私には本音を言わないだろうと思ったので、一緒に担当していた社員にヒアリングしてもらったところ、「社長に言っても、もう変わらないので、言うのはやめました。淡々と業務をやって、社長からのトップダウンの影響がないように、みんなの壁になるだけでいい。私から何かを言うのは、一切やめました」と話していたというのです。

 

これはちょっとまずい傾向だなと思いました。この状況が続いたら、ある日突然、辞めてしまうような気がしたからです。

 

もともと優秀な人であっても、社長自身がトップダウンを続け、優秀な社員の意見を聞かなかったり、自分の意見ばかり押しつけていたりすると、このような形で見切られてしまうことがあります。そういう優秀な人たちが「もういい!」とちゃぶ台をひっくり返した瞬間、組織は崩壊します。一番たちが悪いのは、仲間を引き連れて辞めてしまうことです。こうした事態を防ぐためにも、トップダウンの経営スタイルから抜け出していかなくてはなりません。

社員が30名を超えるとトップダウン型の弊害が顕著に

経営者の決定、指示に従う「指示待ち型組織」というのは、会社の成長度合いにもよりますが、2つのタイプがあります。

 

指示待ち型でいることが成長につながるタイプと、会社の成長を止めるだけでなく、衰退に向かわせるタイプです。会社のメンバーが20~30人までの規模の場合は、社長の指示や意図がそのまま伝わりやすいので指揮系統が統一されます。これが「トップダウン型組織」の功の部分です。

 

会社の立ち上げ時期である「創業期」や「成長期」は、逆にトップダウンでないと伸びないと思っています。トップダウン型の組織は、社長の正解=会社の正解です。社員全員が社長のやり方にトップダウンで従い、指揮系統が統一された組織になります。これは「創業期」や「成長期」には適した組織なのです。社員数20~30人くらいまでは、こうしたトップダウン型のほうが、社内のマネージメントはうまくいきます(図表1)。

 

[図表1]指示待ち型組織①

 

ただし、人数が30人を超え、社長からのトップダウンと部門長からのトップダウンなど、2つ以上の指示が出されるようになると、組織が機能しなくなってしまいます。

 

特定の人物によって運営されているのが「属人型組」ですが、この「属人型組織」は、「成熟期」「衰退期」の企業でよくみられます。社員が社長や部門長、特定の幹部のトップダウンで従っている組織です。この場合、幹部から聞く話と、社長から聞く話が異なることが多くなり、現場の社員は混乱してしまいます(図2)。

 

[図表2]指示待ち型組織②

社長のトップダウンといっても、「属人型組織」の状態が長引くと、社長自身に全社をまとめる求心力がなくなっていきます。こうした組織では、「社長はああ言っているけどな、俺はこういうやり方なんだよ」と幹部たちが公言します。その結果、社内の意思統一が図れなくなり、「衰退期」を招いてしまうのです。

社長がいないと「何もできない」組織には限界がある

社長に対して「はい、よろこんで!」というだけの人間は、結局、指示待ち型の人間なので、たとえ業務スピードが速かったり、行動力があったりしても、社長がいなかったら何もできません。

 

コンサルタントの中には、「社長が言うことに対しては0.2秒で行動せよ」「社長が言っていることをいかに正解にするかが幹部の仕事だ」と主張する人もいますが、私はこの考え方には懐疑的です。幹部はつねに、社長の言葉を絶対的に正しいと解釈して、社員に伝えなくてはならない――それが本当に会社のためになるのでしょうか。

 

「社長の言うことには、必ずYESで答えなければいけない。たとえ、自分が疑問を感じても、社長が言うことは絶対的に正しいと、社員たちに伝えなくてはいけない。たとえ自分が納得できなくても…」

 

人間には心があります。そんなことを続けていたら、心がどんどんしんどくなっていきます。それよりも、社長と幹部が会社の理念を共有し、会社の発展のために同じ方向を向いて、対等に話し合える環境や組織になっていったほうが、永続的な成長が期待できます。

 

ただ、なかにはYESマンを好む企業というのも、もちろん存在します。以前、奈良県のジュエリー関係の会社の社長とお会いしたのですが、そこは社員数10名ほどで、「とくに事業を広げる気はない」「この10名の社員で、自分がトップダウンで経営するのが一番いい」とおっしゃっていました。

 

10名のうち8名がパートさんで、完全に指示待ち状態。それでも、社員さんに話を聞いたら、「言われたことだけやっていれば、お給料ももらえるし。別に不満はありません」ということでした。

 

もちろん、そうしたスタイルをよしとする企業もいらっしゃいますし、それはそれでよいと思っています。ただ、私たちのクライアントの多くを占める社員数20~30名で、これから「第二創業期」を迎え、「N字回復」を目指していきたいという企業には、このスタイルはお勧めしません。

 

現状維持に留まらず企業をさらに発展させ、社員のためにも事業を拡大し、社員の成長のためのステージをつくり続けていきたいと考える経営者の場合は、YESマンをそろえるのではなく、会社の発展のために同じ方向を向き、お互い自由に話し合い、切磋琢磨できる社員を育てていくという組織づくりが必要不可欠なのです。

株式会社ソリューション代表取締役

大学卒業後、富裕層マーケティング会社最大手・リゾートトラスト株式会社に入社。6年間の営業活動を通じて多くの経営者と出会う。2006年、顧客の1人であった現株式会社 CONY JAPAN 代表の小西正行氏から新会社立ち上げの参画要請を受け、経営者の経営サポートを本業にすべく、株式会社ソリューションに入社。コンサルティングを通じて、採用と育成の両輪を回して組織を強くすることにより、多くの企業の発展に貢献している。特に初期教育を強めることで、新卒社員や第二新卒社員をリーダーへと変えるマネジメント力には定評がある。人生のミッションは、「生活のための仕事ではなく、人生を輝かせるための仕事として、若手社員に夢と希望を持って働ける環境を提供すること」。

著者紹介

連載社員30名を超えたら脱トップダウンを!「事業を拡大する組織」をつくる経営術

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

長友 威一郎

合同フォレスト株式会社

中小企業を中心に1000社以上をコンサルティングしてきた著者が明かす、再び成長できる会社をつくるノウハウ、社員も会社も幸せになる秘訣。組織を成長させるために、何をすべきかが見えてくる!

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