マンションの変更・管理・保存…区分所有法上の概念を解説

一戸建ての特家住宅や賃貸住宅と並んで、ごく一般的な住宅となっているマンション。そのため、私法としても、「マンション法」は重要な法分野となっています。本連載は、早稲田大学法科大学院教授・鎌野邦樹氏の著書『マンション法案内 第2版』(勁草書房)より一部を抜粋し、マンション購入の基礎知識、居住地の財産関係をはじめとした法律問題をわかりやすく解説します。本記事では、マンションの変更・管理・保存における、区分所有法上の概念を解説します。

マンションの共用部分の「管理」に関わる言葉

●マンションの「維持」・「改良」・「変更」

 

マンションにとっては、建物や敷地をできるだけその「原状」(建設当時の状態)を「維持」し(そのためには、損傷・滅失が生じたときには「補修」「修繕」が必要になります)、また、建築後相当の期間経過後は、「現状」(経年後の現在の状態)に合わせて適切な「修復」や「改良」が必要とされ、場合によっては「変更」も考えなければなりません。

 

それでは、これらの「維持」、「補修(修補)」、「修繕」、「修復」、「改良」、「変更」など一般的または建築上使用される概念と、区分所有法の規定する「保存」、「(通常の)管理」、「変更」とは、どのような関係にあり、どのように対応するのでしょうか。ここでは、建築学上の議論は避けて、法律(区分所有法)上の概念のみを整理しておきましょう。

 

法律上、共用部分の管理(広義の管理)については、①「保存」(18条1項但書)、②「(狭義の)管理」(通常管理、同条1項本文)、および③「変更」(17条1項本文)の3つの概念のみが問題となりますが、よりいっそう正確に述べますと、「変更」については、「形状又は効用の著しい変更を伴うもの」と「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」(軽微変更)(17条1項本文括弧書参照)とに分かれます。

 

ただ、後者は、法的には、上の②として扱われますから、やはり上の3類型のみを問題とすればよいことになります。

 

そして、これらはむしろ、①については集会における多数決議を必要とせずに各区分所有者が単独で行えるもの、②については集会における普通決議(過半数)を必要とするもの、③については集会における特別多数決議(4分の3以上の賛成)を必要とするものという具合に帰納的に考えた方がよいと思います。

 

この点からいうと、一般的には、先の「維持」、「補修(修補)」、「修繕」等は、基本的に②の「(狭義の)管理」(場合によっては①の「保存行為」)に該当し、「修復」、「改良」等についても、「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」(軽微変更)は、結局は②の「(狭義の)管理」に該当し、一般的な用語でいう「変更」(著しい「改良」も含む)だけが、文字通り法律上も③の「変更」(「形状又は効用の著しい変更を伴うもの」)に該当するといえるでしょう。

 

以下では、これらについて、法律的観点から個別に詳しくみていきましょう(区分所有法の規定の順番に従い、「変更」、「通常管理」、「保存行為」の順でみていきます)。

 

●共用部分の変更

 

(ア)「共用部分の変更」の意義

 

「共用部分の変更」とは、共用部分の形状または効用を確定的に変えることです。たとえば、共用部分である階段室をエレベーター室に改造すること、共用部分である屋上や廊下の一部を共用部分たる管理人室や機械室等に改造すること、共用部分上に附属の物置や車庫を新設することなどがこれに当たります。

 

建物の敷地(区分所有者の共有に属する場合)についても、21条により本条が準用されるので、たとえば、敷地に駐車場を新設することも共用部分の変更に準じて考えることができます。

 

(イ)形状または効用の著しい変更

 

前述のように、集会における特別多数決議を必要とする「共用部分の変更」とは、共用部分の形状または効用を確定的に(法文上は「著しく」)変えることをいいます。共用部分の「形状の変更」とは、その外観や構造を変更することであり、共用部分の「効用の変更」とは、その機能や用途を変更することです。

 

それらの変更が「形状又は効用の著しい変更」に当たるかどうかは、変更を加える箇所および範囲、変更の態様および程度等を勘案して判断されます。たとえば、先にあげた共用部分である階段室をエレベーター室にする場合は、形状の著しい変更に当たり、集会室を廃止して賃貸店舗に転用する場合は効用の著しい変更に当たります(吉田ほか・概要(上)70頁、吉田・一問一答24頁)。

 

ただ、後者の場合に、賃貸店舗に転用するにあたって改装・改造を伴うときには、形状の変更にも該当します。

 

これらに対し、たとえば、共用部分である階段室に手摺りを設ける場合や、集会室を集会以外の目的でも使用させることを認める場合(たとえば、区分所有者以外の者にも時間単位で有料で貸し出す場合等)には、「軽微変更」として、区分所有法17条1項本文括弧書の「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」に当たり、18条で定める狭義の管理(通常管理)の場合と同一に扱うべきものと考えられます。

 

マンションのIT化のために光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場合についても、一般的には、共用部分の形状の変更が著しいものではないとされています(吉田・一問一答25頁)。なお、共用部分を専有部分とすることは、共用関係の廃止(共用部分の処分)に当たるので、ここでいう「共用部分の変更」ではありません。また、そのような共用関係を廃止した後の当該部分の改造も「共用部分の変更」にはなりません。

 

たとえば、共用部分である廊下の一部を改造して専有部分としたり、これを分譲することは、「共用部分の変更」ではなく、このような場合には、共用部分の共有者全員の合意が必要となります。屋上にさらに一階を増築してこれを専有部分とするような場合も、共用部分である屋上空間の廃止に当たるので、同様に考えるべきでしょう。

管理組合の行為は「変更」か「通常管理」か?

(ウ)改良

 

前述のように、2002(平成14)年の改正前の規定(旧規定)では、共用部分の変更について、「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないもの」(軽微変更)を除くとして、このような軽微変更については過半数決議で足りるとしていました。それでは、「改良」については、この言葉が消えた現行法において、軽微変更(「形状または効用の著しい変更を伴わないもの」)との関係でどのように考えるべきでしょうか。

 

一般に、改良とは、既存の施設・設備の形状または効用を基本的に変更せずに、その機能を更新または増進するものと考えられます。したがって、区分所有法に定める「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」は、従来定められていた「改良」にほぼ相当するものと考えられます。2002年改正法により、大規模修繕工事を含む共用部分の改良行為(たとえば、給水管・排水管の全部または一部の交換・増設や、エレベーター昇降機の交換等)について、費用の多寡にかかわらず、軽微変更と扱われるようになったと理解することができます。

 

(エ)「変更」か「管理」(軽微変更を含む)か

 

マンションの法的問題のうちの実務上最も難しい問題の一つに、管理組合で実施しようとしているマンションの維持管理に関わる当該行為が「変更」(「著しい変更」)に当たるのか、それとも「通常管理」(軽微変更を含む)に当たるのかといった問題があり、ときには、マンションの居住者間のトラブルにまで発展します。

 

具体的には、当該行為を推進したい区分所有者は、これは「管理」行為に当たるので集会の過半数決議で足りると主張し、これに対し当該行為に反対する区分所有者は、これは「変更」行為に当たるので集会の特別多数決議(4分の3以上決議)を必要とすると主張して何とか当該行為を実施させまいということになります。

 

それでは、両者の判断基準、特に「著しい変更」と「軽微変更」とを分ける基準はどのようなものでしょうか。

 

結局は、当該変更が「著しい」か否かであり、両者のいずれに当たるかは相対的であって、その認定は困難な場合が少なくありません。法務省立法担当者も、共用部分の変更が「形状又は効用の著しい変更」に当たるか軽微変更(「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」)に当たるかについては、変更を加える箇所および範囲、変更の態様および程度等を勘案して判断されると述べるにすぎません(吉田ほか・概要(上)70頁)。

 

ただ、私見として、上記の判断要素のほかにどのようなことを加味すべきかについて次に述べておきます。

 

第1に、建築後の年月の経過や社会の変化をも考慮して、各区分所有者が当該区分所有建物等を使用するにあたり、たとえば大規模修繕を行う場合のように、当該行為が建物等の適正な管理に必要不可欠であるか否かといった観点から判断すべきでしょう。適正な管理にとって必要不可欠であると判断された場合には、基本的に費用の多寡を問題とすることなく、軽微変更として区分所有法18条で定める通常の管理事項として扱うべきでしょう。

 

第2に、当該変更が、現時点では多くの区分所有者にとって必ずしも適正な管理に必要不可欠なものとはいえないような場合であっても、将来的に区分所有者にとって必要不可欠であるような共用部分のバリアフリー化や車椅子対応化等の福祉的観点からの変更については、変更を加える箇所および範囲、変更の態様および程度、費用の多寡等を勘案しつつ、特段の事情がない限り軽微変更と解するのが適当でありましょう。

 

(オ)特別多数決議

 

共用部分の変更のために4分の3以上の多数は、集会の決議において、区分所有者と議決権のそれぞれについて満たされなければなりません(他の特別多数決議の場合も同様です)。つまり、「区分所有者」の4分の3以上の賛成だけではなく、各区分所有者の有する「議決権」を確認してその4分の3以上の多数の賛成が必要です。ここでの「区分所有者」と「議決権」に関して1点ずつ説明を加えておきましょう。

 

まず、区分所有者の数については、規約を定めることによって、その「過半数」までの範囲で減ずる旨の定めをすることができます(17条1項但書)。たとえば、規約で、「共用部分の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、区分所有者の過半数および議決権の4分の3以上の多数による集会の決議で決する」とすることは可能です。これに対して、区分所有者および議決権の過半数としたり、議決権のみの4分の3以上の多数によるものとしたり、また、管理者その他の機関に決定させるものとするなどの規約の定めは無効です。

 

次に、議決権の割合については、規約に別段の定めがない限り、各区分所有者の「共用部分共有持分の割合」であり(38条)、そして、「共用部分共有持分の割合」は、規約に別段の定めがない限り、各区分所有者の有する「専有部分の床面積の割合」によります(14条)。多くのマンションで「専有部分の床面積の割合」としています(標準管理規約(単棟型)46条1項、別表5および同条コメント参照)。

 

(カ)特定区分所有者の承諾

 

共用部分の変更は、ある特定の専有部分の使用に特別の影響を与えることがありえます。たとえば、共用部分の変更によって、ある専有部分への出入りが不自由になるとか、ある専有部分の採光・通風が悪化するというような場合などがこれに該当します。このような場合には、上の集会の決議のほかに、その専有部分の所有者である区分所有者の承諾が必要になります。

 

したがって、集会の特別多数決議があっても、その専有部分の所有者の承諾が得られない場合には、共用部分の変更は認められません(17条2項)。

 

共用部分の変更が専有部分の使用に「特別の」影響を及ぼすときにのみ承諾が必要なので、共用部分の変更によって専有部分の所有者が受ける影響が一時的で確定的でない場合、またはその程度が軽微な場合には、その専有部分の所有者は承諾を拒むことはできず、また、その専有部分の所有者の承諾を得ていなくても、特別多数決議がなされれば共用部分の変更は可能となります。

 

たとえば、共用部分の変更工事によってその工事の期間中ある専有部分への出入りが不自由になるような場合は、このような場合に該当します。裁判例として、専有部分の増築に伴う共用部分の変更によって生じた特定の区分所有者の専有部分に対する採光・日照の影響について、その影響は居室としての使用に大きな障害を生じさせないとして、本項の「特別の影響」には当たらないとしたものがあります(大阪高判平4・1・28判時1428号89頁・判解22事件(第一審神戸地判平3・5・9判タ784号247頁))。

 

 

鎌野 邦樹

早稲田大学 法科大学院

 

1953年生まれ。早稲田大学卒業。千葉大学教授を経て、現在、早稲田大学法科大学院教授(民法、土地住宅法等)。法務省法制審議会(建物区分所有法部会)委員、国土交通省各種委員会委員等を歴任。現在、東京都公益等認定委員会、千葉県都市計画審議会、マンション管理士試験委員、管理業務主任者試験委員等を兼務。

著者に、『金銭消費貸借と利息の制限』(一粒社、1999年)、『マンション法』(共編著、有斐閣、2003年)、『コンメンタール マンション区分所有法 第3版』(共著、日本評論社、2015年)、『マンション法の判例解説』(共編著、勁草書房、2017年)、『不動産の法律知識 改訂版』(日経文庫、2017年)等がある。

著者紹介

連載購入から登記までをわかりやすく解説!「マンション法」の基礎知識

本連載は、2017年11月20日刊行の書籍『マンション法案内 第2版』(勁草書房)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

マンション法案内 第2版

マンション法案内 第2版

鎌野 邦樹

勁草書房

購入、建物維持・管理、定期的な大規模修繕、建替えに至るマンションのライフサイクルに即した具体的事例を、やさしい語り口でわかりやすく解説。民法、被災マンション法、建替え等円滑化法等の法改正、最新の統計資料、重要判…

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