「敷地の共有持分権」は規約でも定められない
◆敷地共有持分割合の決定
建物の共用部分の共有持分権の割合は、専有部分の床面積の割合で定まり、また、規約で別段の定めをすることができますが(14条1項、4項)、敷地の(準)共有持分権の割合は、専有部分の床面積の割合で定まるものではなく、また、規約で定めることもできません。
ここでは、分離処分禁止の場合のように専有部分と敷地利用権を一体的に扱うのではなく、わが国の不動産法制の一般的な扱いに従い建物と敷地を別個独立の不動産として扱うのです。すなわち、分譲時において、分譲者と各区分所有者との売買契約の内容として、建物についての権利(専有部分に対する区分所有権等)と敷地についての権利(持分権の割合)が約定され、敷地についての権利(持分権の割合)については、それに従うのです。
なお、標準管理規約では、各住戸ごとの敷地の共有持分の割合が「○○○分○○」という形で具体的な数字で示されています(標準管理規約(単棟型)10条、別表第3)。
◆区分所有者が敷地を共有または準共有(賃借権や地上権の場合)して、各区分所有者がその共有持分または準共有持分として敷地利用権を有している場合
それでは、上記の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときには、その区分所有者の各専有部分に係る敷地利用権の共有持分割合については、どのように考えればよいのでしょうか。マンションの同一の棟において一人の区分所有者が複数の住戸を所有している場合は少なくありません。
もちろん、その区分所有者の有する敷地利用権の共有持分割合(総割合)は、分譲契約の内容によります。問題は、各専有部分に係る敷地利用権の共有持分割合についてです。その者が所有する複数の住戸のうち、一戸だけを譲渡した場合に、専有部分と一体的に譲渡された敷地利用権について譲受人がどれだけの共有持分割合を取得したのかを明らかにする必要があるからです。
このような場合に、各専有部分に対応する複数の敷地利用権が存在するものではなく、数個の専有部分全体に対応する形での一つの共有持分または準共有持分があるにすぎません。したがって、数個の専有部分を別個に処分する場合に22条1項本文の規定を適用するにあたっては、その処分される専有部分と一体的に処分される敷地利用権の割合が定まっていることが必要です。
そこで、区分所有法は、このような場合において、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、規約による別段の割合の定めがない限り、14条1項から3項までに定める割合、すなわち、内側計算による専有部分の床面積割合によると定めています(22条2項)。
14条4項は引用されていないので、同条項による規約で別段の定めがあっても、22条2項の適用においては、その定めは考慮されません。14条4項に基づく別段の定めは共用部分共有持分の割合に関しての定めですから、各専有部分に係る敷地利用権の割合に関しては、当然に意味を有するものではないからです。
「敷地の変更」に適する法律は、民法か区分所有法か?
建物の敷地が区分所有者の共有に属する場合に、その管理に関しては、民法の規定が適用されるのでしょうか、それとも区分所有法の共用部分の管理に関する規定が適用されるのでしょうか。
たとえば、区分所有者の共有に属する敷地の一部の芝生が植栽されている場所を、舗装して来客用の駐車場に変更する場合に、これを「変更」に該当するとしたら、民法の規定(251条)が適用されるのか、それとも区分所有法の規定(17条)が適用されるのか。
前者とした場合には区分所有者全員の合意が必要となるのに対して、後者とした場合には集会の特別多数決(区分所有者および議決権の4分の3以上の多数による決議)で足りることになります。この場合には、後者の場合とした方が実際上は適切でしょう。
このように区分所有者の共有する敷地については、共用部分の管理と同様の管理が妥当であると考えられますので、区分所有法では、区分所有法の17条から19条までの規定は、区分所有者の共有に属する敷地または附属施設(たとえば敷地上の遊戯施設等)に準用するとしました。
つまり、「共用部分の変更」(17条)のほか「共用部分の管理」(18条)および「共用部分の負担及び利益収取」(19条)の規定が、区分所有者の共有に属する敷地または附属施設に準用されます(21条)。
鎌野 邦樹
早稲田大学 法科大学院