一戸建ての特家住宅や賃貸住宅と並んで、ごく一般的な住宅となっているマンション。そのため、私法としても、「マンション法」は重要な法分野となっています。本連載は、早稲田大学法科大学院教授・鎌野邦樹氏の著書『マンション法案内 第2版』(勁草書房)より一部を抜粋し、マンション購入の基礎知識、居住地の財産関係をはじめとした法律問題をわかりやすく解説します。本記事では、「登記」にまつわる基礎知識を、マンションの305号室を購入したAさんの事例をもとに解説します。

「区分建物全部事項証明書」の見本で解説

マンションについての建物と敷地の財産関係は、登記上どのように記載されているのでしょう。

 

以下では、区分所有建物の不動産登記簿の具体例(従来の帳簿式ではなく、磁気ディスクの登記簿から出力される「区分建物全部事項証明書」)を見ながら概観しておきましょう。Aさんの住戸部分(305号室)の登記について考える前に、不動産登記一般について簡単に述べておきましょう。なお、不動産登記法上は、区分所有建物を「区分建物」といい、敷地利用権を「敷地権」といいます。

 

建物の登記事項証明書(見本)
建物の登記事項証明書(見本)

不動産登記の基本的な仕組み

◆土地登記簿と建物登記簿

 

不動産登記については、区分所有建物以外の建物の場合には、土地登記簿と建物登記簿とが別々にあり、それぞれ独立して一筆の土地または一個の建物ごとに作成されます(土地の単位は「筆」で、一筆、二筆……と数えます)。

 

区分所有建物の場合には、建物登記簿にその敷地である土地についても併せて表示されています。上記見本(法務省のホームページ掲載のもの)において記載されているように、表題部として「一棟の建物の表示」および「専有部分の建物の表示」のそれぞれに続いて「敷地権の目的たる土地の表示」および「敷地権の表示」があります。

 

登記簿は、表題部、権利部(甲区)、権利部(乙区)の3つに分かれます。表題部には不動産の表示に関する事項(土地の所在・地番・地目・地積・建物の所在・種類・構造・床面積等)が記載され、甲区には所有権に関する事項(所有権移転の年月日・原因・所有者氏名等)が記載され、乙区には所有権以外の権利(抵当権、地上権等)に関する事項(たとえば、抵当権について、設定年月日・原因・債権額・利息・債務者・抵当権者等)が記載されます。

 

登記は、登記権利者(買主等の登記によって直接に利益を受ける者)と登記義務者(売主等の登記によって不利益を受ける者)の共同申請が原則です(不動産登記法60条)。実際には、不動産の売買契約等の際に、双方が司法書士に登記申請を委任することが少なくありません。登記義務者が登記に応じないときには、登記権利者は登記義務者に対し登記手続に協力すべきことを裁判所に請求することができます。

 

◆登記の対抗力

 

それでは、登記は何のためにするのでしょう。どのようなメリットがあり、逆に登記を怠るとどのようなデメリットがあるのでしょう。

 

もしAさんがこのマンションの住戸305号室について登記を怠っていると、仮に同じ専有部分が売主(分譲業者等)によって二重に売買された場合に、もう一人の買主Bの方が先に登記をしてしまうと、Bが優先して305号室の区分所有権を取得し、Aさんはこれを取得できないことになります。このような登記の効力を対抗力といいます。

 

民法は、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法……その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」(177条)と規定しています。Aさんは、売主(分譲業者等)には自己の権利の取得を対抗できますが、もう一人の買主である第三者Bには対抗できないことになります。

 

また、たとえ305号室の所有権(区分所有権)をAさんが有していても自己名義の登記がない場合には、Aさんは、法的にはともかく、実際上は同住戸を売ることは困難であり、また、これを担保に住宅ローンなどの融資を受けることは困難です。

区分所有建物の登記

◆区分所有建物の表示に関する登記

 

表示に関する登記は、権利に関する登記の前提として、建物とその敷地の物理的現況を公示するために、表題部に記載されます。原則として、不動産の所有者に申請義務が課されており、新築後1カ月以内に申請しなければなりません(不動産登記法47条)。

 

ただし、登記官の職権による登記が認められています(同法28条)。申請は、一棟の建物に属する区分所有全部について一括してなされなければなりません(同法48条)。表示に関する登記は、権利関係を表わす登記ではないので、原則として対抗力は付与されません。

 

区分所有建物の表題部には、当該区分所有建物全体を表わす「一棟の建物の表示」(見本では、特別区南部町一丁目3番地1に所在する101号室~202号室からなる一棟の区分所有建物が表示されています)と、それを構成する各専有部分を表わす「専有部分の建物の表示」(見本では、101号室のみが表示されています)が記載され、各専有部分(見本では、101号室のみ)について甲区欄、乙区欄が設けられます。

 

◆一棟の建物の表示・敷地権の目的たる土地の表示

 

一棟の建物の表示は、専有部分の家屋番号、所在、所在図番号、建物の番号、構造、床面積、原因およびその日付、登記の日付等で構成されます。

 

専有部分の家屋番号欄には、一棟の建物に登記されているすべての専有部分の家屋番号が略記されます。床面積の測定方法は、壁の中心線で囲まれた水平投影面積によります。この建物全体の床面積の総和から各専有部分の床面積の総和を差し引いた残りの面積が、基本的に法定共用部分の面積となります。共用部分についての表示はありません。

 

原因とその日付欄には、新築という法律上の原因とその発生日付が、登記の日付欄には登記所の事務処理日が記載されます。「敷地権の目的たる土地の表示」には、土地の符号・所在および地番・地目・地積・登記の日付が記載されます。

 

なお、1984(昭59)年以前の建物で一体化(専有部分と敷地利用権を分離して処分できないこと)の進んでいないもの等については、敷地権の表示に記載がない場合があります。また、敷地利用権が未登記であったり、登記できない権利(使用貸借権(無償での土地貸借の権利))のときも、記載されません。

 

◆専有部分の建物の表示・敷地権の表示

 

「専有部分の建物の表示」には、家屋番号(所在の町名をも含めた記載)・建物の名称・種類・構造(101号室自体は「1階建」です)・床面積・原因およびその日付・登記の日付等の各事項が記載されます。

 

「敷地権の表示」には、土地の符号・敷地権の種類・敷地権の割合(見本では、甲野一郎さんは「4分の1」の共有持分を有すると表示されています)・原因およびその日付・登記の日付等の各事項が記載されます。

 

◆専有部分の権利に関する登記(甲区・乙区)

 

専有部分の権利に関しては、一般の不動産登記簿の場合と同じく、所有権に関する事項(甲区)と所有権以外の権利に関する事項(乙区)に分けて記載されます。

 

区分所有建物については、専有部分についてのみ表示の登記および権利の登記の記載がなされ、共用部分については記載されません。区分所有建物の専有部分以外の部分は共用部分であり、その共有持分については法定されていますから、それらについての表示を特に必要としないと考えたのです。共用部分の各共有者の持分が、各専有部分の床面積の割合によらない場合には、その割合は規約によって定められます(区分所有法14条1項、4項)。

 

 

鎌野 邦樹

早稲田大学 法科大学院

 

本連載は、2017年11月20日刊行の書籍『マンション法案内 第2版』(勁草書房)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

マンション法案内 第2版

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鎌野 邦樹

勁草書房

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