増える外国人労働者の数 多くは東京などの大都市に
以前は「リスクが高い」として、賃貸住宅への外国人入居者の受け入れを敬遠するオーナーが多く見受けられました。しかし、ここ数年で急速に国際化が進み、今後外国人労働者の増加も見込まれるため、むしろビジネスチャンスとしてとらえることが必要かもしれません。不動産オーナーにとって、外国人入居者を受け入れる際の注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。
外国人特有のリスクが敬遠の原因だった
これまで、不動産オーナーが賃貸住宅の入居者として外国人を敬遠してきたのは、日本と異なる文化や生活様式を持ち、なかなか日本の生活スタイルになじんでくれないと考えていたからです。
確かに、友人を自宅に呼んで遅くまでパーティーをして騒いだり、ゴミ出しのルールを守らなかったり、知らない間に大勢で同居していたりする外国人入居者も、なかにはいたかもしれません。また、入居時に契約上の重要事項や約束事を説明しても、言葉の壁により、理解してもらえないケースもありました。こうした不動産オーナーが持つ「面倒」なイメージが、外国人入居者を敬遠する要因となっていたと考えられます。
出入国管理法改正で外国人労働者が増加?
2018年12月の臨時国会で出入国管理法が改正されました。2019年4月から新たな在留資格「特定技能」を創設して、これまで認めてこなかった単純労働にも道を開くようになりました。
政府の試算では、5年間で最大34万人あまりを受け入れることになります。観光客も含めて訪日外国人は年々増加しており、東京に住む外国人の数もここ数年増えています。出入国管理法改正によって今後さらに外国人を受け入れるとなると、その多くは東京などの大都市に住むことになるでしょう。治安の悪化や給与水準の低下などを懸念する人もいますが、賃貸住宅市場においては、「お客さん」が増えることに変わりなく、純粋にビジネスチャンスが拡大すると受け止めるべきでしょう。
外国人入居希望者の「審査」は何を基準にすべきか
入居基準に語学力、さらに外国人専門保証会社の利用も
ビジネスチャンスが増えるのは嬉しいですが、それでもリスクに対する懸念は残ります。大切なことは入居希望者の選定や審査です。
たとえば、日本語のコミュニケーション能力を判断材料にするのも効果的です。どんなによい人でも、コミュニケーションがとれないのでは、いずれ誤解が生じて相手に対する不信感が生まれます。英会話の得意なオーナーや管理会社の担当者も増えてきていますが、日本語で最低限のコミュニケーションが取れるかどうかは、いざという時にトラブルにならないためのリトマス試験紙としての役割を果たすでしょう。
また、外国人のなかには入居条件である連帯保証人を見つけるのに苦労する人もいるでしょう。そんな時には保証会社を利用することになります。外国人には馴染みのない制度のため、家賃に加えて保証料を支払うことに抵抗を示すかもしれませんが、保証料の支払い能力を見るという意味でも、一つの指針として役立つでしょう。
また、最近は外国人専門の保証会社も増えています。そうした会社では、家賃滞納の問題だけではなく敷金や短期解約違約金などの問題に対応しているほか、24時間対応で多言語のライフサポートをして賃貸住宅での生活トラブルに速やかに対処しているところもあります。
特定技能1号は在留期限が5年のため単身用が有利に
出入国管理法で新たに創設された在留資格は「特定技能1号」と「特定技能2号」にわかれます。
1号は「相当程度の知識・経験」が条件で、介護や建設、農業などの業種に就き、在留期間は最長5年で、家族の帯同は基本的に認めないとしています。一方、2号は「より熟練した技能」が必要となり、在留期間は更新可能で、家族の帯同も認めるものです。
特定技能1号の外国人は、単身でやってきて5年で帰るというルールです。賃貸住宅に受け入れる立場からいうと、最長5年という期限がある一方で、仮にトラブルがあっても5年間で必ず退去するという点はメリットともいえます。
外国人受け入れは新たなビジネスチャンス
こうした特性を上手に賃貸経営に利用することを考えましょう。日本社会は今後、大量に外国人を受け入れるという変化のタイミングに差し掛かりました。社会構造の変化に合わせて、賃貸経営も変化させなければならないのです。やみくもにリスクを避けるだけでなく、勇気ある判断によって新たなビジネスチャンスをつかみたいものです。