東京五輪の開催まであと1年
首都圏、特に東京の不動産市場に大きな影響を与えている2020年東京五輪の開催が差し迫ってきました。
2000年代、小泉政権下の構造改革がもたらした好景気を背景に、上昇していた都内不動産価格は、2008年のリーマンショックの影響で大幅に下落してしまいます。しかし、2012年末に誕生した安倍政権のアベノミクス効果や、2020年東京五輪の影響もあり、近年、価格は大きく上昇しました。下落基調にあった都内の家賃相場も、回復傾向が見て取れます。
しかし、今後の不動産市場について悲観する声も大きく、特に五輪後の下落論がまことしやかにささやかれています。果たして本当にそうでしょうか。五輪後に不動産価格や家賃相場が下がりそうな地域はありますが、逆に上がりそうな地域もあるのです。
五輪後の不動産市場が不安視されている理由
五輪後の不動産市場が不安視されている理由を分析してみます。ひとつは需給関係といった短期的要因。もうひとつは日本の経済・社会状況の変化による長期的要因です。
五輪開催決定以降、湾岸エリアなどを中心に都内のマンション相場が値上がりし、不動産市場全体が上昇傾向を示しました。ただ、こうした上昇は将来への期待が含まれており、五輪開催後に価格調整が起きるだろうという見方です。
また、直近の不動産価格上昇は、中国人を筆頭とするアジアの富裕層による購入の影響も大きかったといわれています。海外投資家が利益確定売りをすれば、市場に大きな影響を与える可能性があります。
さらに、長期的な要因も考える必要があります。たとえば2022年には、これまで農地としてしか使えなかった都市部の生産緑地が指定解除されて、住宅などに転用できるようになります。都内の住宅用不動産の供給量が増え、不動産市場に影響を与えるとみられています。
また、将来さらに少子高齢化が進むと、東京でも人口減少が起きる可能性が高く、長期的に需要減少が起きるかもしれません。
家賃や不動産価格が上がる地域と下がる地域
だからといって、不動産投資は控えるべきなのでしょうか。そこには客観的な判断が必要です。もし仮に五輪後の揺り戻しが起きたとしても、それはおそらく短期的なものかもしれません。
実際、1964年の東京五輪や、近年のロンドン五輪後に、短期的な変動があったとしても、長期的には不動産価格への影響は見られなかったとする分析もあります。五輪をきっかけに実施された都市再開発は街の利便性を高め、その価値は五輪後も失われることがなかったと推察されます。
重要なことは実需でしょう。東京にはまだまだ大きなポテンシャルがあります。
現在進行中の再開発は五輪後も継続される予定で、街は今後もさらに賑わいをみせるでしょう。再開発は郊外のターミナルステーションの一部で予定されており、広がりつつあります。また、子どもが独立し、定年を迎えたシニア世代を中心に、郊外の戸建住宅から、都心の駅近マンションへと住み替えを行う事例が増えています。
こうした需要に合致した地域の不動産価格や賃貸価格は上昇する可能性があります。もちろん、都内でも空室率が高い物件があります。交通の便が悪いエリアや建物や設備が居住者のニーズに合致していない物件などは、苦戦する可能性が高いでしょう。
これからの不動産投資の狙い目は「再開発地域」
狙い目にしてほしいのは、再開発によって街が活性化していくような地域です。現在の価格と比較して、将来の不動産価格や家賃相場の上昇が期待できます。
再開発は、都市再開発法に基づき、敷地が細分化していたり、老朽建築物が密集していたりするエリアに対し、敷地の統合や大規模複合施設の新築、公園や広場、公共施設の併設を行い、都市空間の合理化を行う行為です。再開発地域は街が整備され、景観がよくなり、商業施設やオフィスなどが充実するようになります。
結果として人が集まり、居住者が増え、街としてのブランド価値が上がるのです。都内の再開発といえば、渋谷や虎ノ門エリアが有名です。
それ以外にも、春日・後楽園駅前地区市街地再開発や、中野駅南口ロータリー前で進行中の中野二丁目地区第一種市街地再開発事業など、多くの事案が進行中であり、これらの地域や、その近隣の駅近物件は狙い目といえます。
こうした情報は世の中に溢れています。自分でも興味のあるエリアについて色々調べるようにしましょう。そして、自分が十分に納得できたエリアに投資してみてください。