資産家のタイプによって有効な相続対策は変わってくるが、企業経営者が自社株を引き継がせる「事業承継」は民法・税法のみならず会社法まで関わり、難解なイメージが付き纏う。そこで本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長であり、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役の岸田康雄公認会計士/税理士が「企業経営者」の相続対策を動画付でやさしく解説する。第21回のテーマは「相続税が課される貸付金の処分方法」。

現金や貸付金を株式に変換させる

企業オーナーと会社との資本関係を確認すると、会社に出資しているだけでなく、会社に資金を貸し付けているケースが多くみられます。このような貸付けによる金銭債権は、実質的に出資による株式保有と同様の資本投下であるにもかかわらず、相続が発生するときには債権の額面金額で評価されてしまい、税負担が重くなります。つまり、非上場株式の評価よりも割高な個人財産となっています。

 

そこで、デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap、略してDES)を実行し、金銭債権を株式に転換することによって、保有する個人財産の相続税評価を引き下げておくのです。

 

デット・エクイティ・スワップとは、デット(債務)とエクイテイ(資本)をスワップ(交換)することです。すなわち、法人側から見れば、債務と交換に株式を発行することをいいます。つまり、現物出資による新株発行です。逆に企業オーナー側から見れば、金銭債権の現物出資による新株引受けということになるでしょう。新株発行は現金を払い込むことが一般的ではありますが、デット・エクイティ・スワップの場合は、金銭債権の拠出を行うことになるのです。

 

デット・エクイティ・スワップは、債務者である自社にとっては、過剰債務を減らし財務体質を健全化できるメリットがあります。経営再建を行うためのスキームとして利用されることも少なくありません。

債権放棄(債務免除)には法人税が課される

貸付金の額面金額とその時価に差額があると「債務免除益」が計上され、会社側で法人税が課されてしまう可能性があります。具体的には、債権の時価相当額(<額面金額)についてのみ資本金等の額を増加させ、それを上回る額面金額との差額は「債務免除益」として課税されることとなります。

 

これを回避する手段として、いったん金銭出資による増資を行った後、その払込金で借入金を返済する、いわゆる「疑似DES」と呼ばれる方法があります。この方法によれば,金銭出資による増資払込みと債務の返済の組み合わせですから、債務免除益を発生させることはありません。

 

[図表]DESのイメージ
[図表]DESのイメージ

 

【動画/筆者が本記事の内容をわかりやすく解説!】

 

 

岸田康雄

島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

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