今回は、トラックドライバーというビジネスの成功に不可欠な、顧客との関係性の認識を考察します。※現代のトラックドライバーは、洗練された物流システムの中で、自立して活動するプロフェッショナルです。自分で考え、自分で判断し、自分の裁量で仕事をする。そして担うのは、日本経済を支える物流の根幹…。トラックドライバーは、自由に自分らしく働きながら世の中に貢献できる、数少ないビジネスの一つなのです。本連載では、知られざるトラックドライバーの最新事情を紹介します。

顧客の事業や生活を守ることも、ドライバーの使命

お客様のことを考え、お客様の事業や生活を守ることもドライバーの使命と言えるでしょう。お客様とのつながりは、実際に現地でお客様と接しているドライバーの方が強く感じ取るのかもしれません。私や内勤の社員も、もちろんお客様のことはよく知っています。しかし、我々とお客様の接点がメールや電話であるのに対して、ドライバーは実際に毎日顔を合わせ、会話しています。

 

古くさいと思う人もいるかもしれませんが、人と人のつながりは顔を合わせることによって深まるところがあると思います。「あのお客さんが困っている」とリアルに想像できるのも、「どうにかして荷物を持って行こう」という責任感が芽生えるのも、そういうつながりが強いからなのでしょう。

 

そう考えると、ドライバーの使命を果たすためには、運転などのスキルよりも人間性の方がはるかに重要といえます。スキルを磨くことも大事ですが、それだけでは喜ばれず、感謝もされません。素直さ、誠実さ、相手を思いやる気持ち、困っている人を見捨てない心といったあらゆる面での人間性の高さが、使命を果たすために求められると思うのです。

 

私の会社には人間性に富んだドライバーが多く、それが会社の自慢でもあります。そういうドライバーが多いのには、二つの理由があると思っています。

 

一つは、会社としてお客様のために働くという意識が浸透していることです。私の会社は鉄道貨物を扱っているころから、地元である碧南の人たちに貢献しようという社風がありました。その歴史を踏まえて、「お客様第一」と「地域発展への貢献」を企業理念として掲げていますし、物流サービスを通じてお客様と地域に貢献することを私の会社の使命としています。そういった環境の中で仕事をしていくうちに、会社がお客様を大事にし、お客様のために働くという意識が共有されていったのでしょう。会社全体がお客様を第一に考えていると、自然と自分もお客様のことを考えるようになります。その結果、災害などが起きたときに、真っ先にお客様のことを考え、気にかけることができるのだと思います。

信頼と関係性によって、顧客が支えてくれる場面も

お客様のことを考えるドライバーが多い二つ目の理由は、物流がサービス業であるという意識があるからです。物流は、例えば、ガスや水道などのような社会のインフラの側面を持ちます。もちろんそれは大事な役割で、効率よくモノを運ぶ必要があります。ただし、我々の事業は公共事業ではありませんので、ただ運ぶだけでは不十分です。サービス業という意識を持ち、サービス業の目的であるお客様に喜んでもらうという役割も果たす必要があるのです。

 

私は「お客様第一」「地域発展への貢献」といった企業理念などについてドライバーに細かく説明するようなことはしていません。わざわざ言わなくても、彼らはしっかり理解しているからです。一方、物流がサービス業であることや、我々がサービス業に従事していることはことあるごとに伝えています。

 

ドライバーというと、ただ荷物を運ぶ仕事と思っている人がいます。これからドライバーを目指す人、ドライバーになりたての人の中にもそう思っている人がいます。そのような社会の意識を変えたいと私は思っています。その第一歩として、物流に携わる社内のスタッフやドライバーに、我々がサービス業なのだと伝えているのです。

 

我々は、例えば農業や製造業のように何かを作っているわけではありません。モノを運ぶことが目的でもありません。モノを運ぶというサービスを通じて、お客様に喜んでもらい、そして世の中を豊かにすること。それが物流事業の目指す姿であり、使命でもあるのです。

 

災害などによって交通事情が混乱していても、雪や嵐がひどくても、私の会社のドライバーが頑張ってモノを届けるのは、相手に喜んでもらおうというサービス業の意識があるからです。もっと身近なところで見ても、例えば、同じ荷物を届けるにしても、むすっとしてただ荷物を置いてくるより、気持ちよく挨拶し、笑顔で届けた方がお客様は快く感じるはずです。そういう小さなこともサービスなのだと私は思います。

 

また、日頃からお客様のことを考えていたり、一生懸命喜んでもらえるように取り組んでいれば、多少のミスがあったとしてもお客様は怒りません。物流の場合、例えば道が混んで届ける時間が遅れることがあります。基本的にはあってはならないことですが、注意不足によってお客様の荷物を倒したり、傷つけてしまう可能性もあります。そのようなときでも、お客様と良い人間関係ができていれば許してもらえます。

 

日々、お客様に喜んでもらおうと頑張っている。一生懸命やっている。そういう姿勢は相手に伝わるものなのです。他のサービス業を例にしても、例えばレストランに行き、無愛想な店員がいると気分が悪くなります。ミスをすると怒りたくもなるでしょう。

 

しかし、一生懸命やっている姿を見ていれば、仮に水をこぼされたとしても、料理が出てくるのが遅かったとしても、仕方がない、気にしないと思うのではないでしょうか。物流も同じです。サービス業として、相手に愛され、信頼されることが大事です。それができて初めて、物流を通じてお客様に喜んでもらうという使命が果たせるのだと思います。

 

 

鈴木朝生

丸共通運株式会社 代表取締役

 

稼ぐ! トラックドライバー

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鈴木 朝生

幻冬舎メディアコンサルティング

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