今回は、若手のトラックドライバーが増えない原因と、改善が進みつつあるドライバーの労働環境について見ていきます。※現代のトラックドライバーは、洗練された物流システムの中で、自立して活動するプロフェッショナルです。自分で考え、自分で判断し、自分の裁量で仕事をする。そして担うのは、日本経済を支える物流の根幹…。トラックドライバーは、自由に自分らしく働きながら世の中に貢献できる、数少ないビジネスの一つなのです。本連載では、知られざるトラックドライバーの最新事情を紹介します。

法改正のたび、免許取得にかかる費用が上昇し…

ドライバー志望の若い人が減っている理由として、運転免許の制度が変わったことも挙げられるでしょう。当然ですが、トラックドライバーになるには運転免許が必要です。2トントラック以上であれば準中型免許、4トントラックは中型免許、大型トラックは大型免許、トレーラーはけん引免許が必要になります。運送業界でよく稼働しているのは4トントラック以上のトラックです。つまり、ドライバーになるためには、現状、準中型免許を取得することになります。

 

実はこの「現状」というのがポイントです。というのは、10年くらい前までに免許を取った人であれば、普通免許でも4トントラックを運転することができたからです。

 

あまり知られていないのですが、免許制度は細かく改正されています。例えば、2007年の法改正までは、普通免許さえ持っていれば、車両総重量8トン未満、最大積載量5トン未満のトラックが運転できました。

 

しかし、2007年の法改正により、中型免許という区分が新たにつくられました。このときの中型には、車両総重量が5トン以上11トン未満、最大積載量3トン以上6.5トン未満が含まれます。そのため、普通免許だけでは4トントラックが運転できなくなったのです。

 

法改正の背景を説明すると、それまでの法律では普通免許で4トントラックや6トントラックが運転できたのですが、運転者の技術不足などによって事故が多発していました。車が大きくなれば、当然、運転しづらくなりますし、車体が大きい分だけ事故を起こした時の衝撃も大きくなります。そのような事情を緩和するために、免許区分を規定する道路交通法が改正されることになったのです。

 

その後、中型の区分はさらに分かれて、現在は準中型と中型の二つになっています。準中型は、車両総重量3.5トン以上7.5トン未満、最大積載量は2トン以上4.5トン未満。中型は、最大積載量7.5トン以上11トン未満、最大積載量4.5トン以上6.5トン未満です。

 

このような改正がなぜドライバーになる際の障害になるかというと、免許を取るためのお金がかかるからです。

 

例えば、普通免許を持っている人が中型免許を取る場合、新たに20万円前後の費用がかかります。20万円は大金ですし、特に若い人にとっては大きな負担です。手持ちのお金に余裕がなければ、ドライバーになるという選択肢は消えてしまうでしょう。お金があったり、借りる手段があったとしても、大金を払って挑戦する価値があるだろうかと考えるのが自然だと思います。

 

結果、どこかでドライバーという仕事を知り、魅力を感じたとしても、以前のように簡単には挑戦できなくなっているのです。一方、準中型以上の免許がないとドライバーとしてスタートできないのも事実です。その障害を乗り越える方法としては、例えば、私の会社のように免許取得の費用をサポートしてくれる会社などを探してみると良いかもしれません。

IT化の流れでさらに負担が軽くなる、ドライバーの仕事

若者のドライバーが減っている要因として、ドライバーの仕事が大変だと思われている点も挙げられるでしょう。実際、ドライバーの仕事は楽ではありません。長距離トラックの中は広くて快適ですが、運転中は神経を使います。荷物を積み下ろしするのは外ですから、寒い日、暑い日もありますし、重い荷物を持つこともあります。ドライバーの収入が高くなるのは、そのような大変さの対価でもあるのです。

 

ただ、一般的に想像されているよりは、はるかに楽だと思います。と言うのは、トラックや現場で使う機材などが一昔前よりも便利になっているからです。例えばトラックは、バックモニター、ドライブレコーダー、クルーズコントロール、追突防止などが装備されたことで、以前よりも運転が楽になり、安全に運転できるようになっています。現場作業に関しても、基本的にはフォークリフトを使って荷物を積み下ろししますので、かつてのようなきつい肉体労働はほとんどありません。

 

この点は異業種でも同じで、例えば建設現場は体力勝負と思われがちですが、実際は機械などをフル活用することで体力的な負担が大幅に減っています。介護の仕事も力が入りますが、最近は介護支援用のロボットスーツなどを使うケースも増えています。

 

労働環境が厳しい職場は、かつては3Kと呼ばれ、若い人を中心に敬遠されてきました。トラック業界についてもそのようなイメージを持っている人が少なからずいます。

 

しかし、機械化やIT化が進む現在、過酷といわれていた職場の環境は大幅に改善されています。ドライバーにかかる精神的、肉体的な負担は、今後もIT化の流れに合わせて、さらに軽くなっていくでしょう。

会社員だから収入も安定、人間関係もほどほどでラク

もちろん、エアコンの効いた部屋で事務仕事をするのに比べると労働環境は厳しいと言えるでしょう。しかし、それも結局のところ、何を過酷と感じるか、なのだと思います。

 

ある人にとっては、暑い夏の日に外で作業するのが過酷に感じられるかもしれません。その気持ちも分かります。一方、職場がいつも涼しくても、繰り返しの作業や、1日中監視されている環境だったとしたら、それを過酷と感じる人もいるはずです。

 

やりたい仕事ができない、出世できない、収入が上がらないといった環境も過酷ですし、もっと身近なところで、過剰に厳しい先輩や上司がいたり、職場の慣習として、そういう人たちと頻繁に飲みに行かなければならないとしたら、それも過酷な職場だと私は思います。

 

どんな仕事も、少なからず大変と感じることはあるものです。ただ、大変と感じる度合いには個人差があります。大変だ、厳しいと感じることにも、その人なりの優先順位があります。

 

そう考えると、ドライバーの仕事は、旧来の価値観に基づく上下関係と評価制度や、人間関係の煩わしさといった目に見えない過酷さを解消したい人に向いている働き方と言えるでしょう。

 

運転中は1人ですから、内勤の人と比べると人間関係はあまり気にしなくて済みます。会社員ですので、多少の人間関係はありますが、煩わしく感じるほど接点が多いわけでもありません。また、運送会社のドライバーは社内で仕事が分業されていますから、ドライバーという仕事に集中できますし、その分野に特化してスキルを高めていくこともできます。

 

自営業のように自主性が求められる仕事ではありますが、完全な自営業ではありませんから、自営でデコトラをする人のように収入が爆発的に増えることはないものの、その分、収支が立ち行かなくなるリスクも小さく、頑張って働いた分はしっかり収入に反映されます。そういうちょうど良い加減の働き方が実現できるのがドライバーなのだと改めて思います。

 

 

鈴木朝生

丸共通運株式会社 代表取締役

 

稼ぐ! トラックドライバー

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鈴木 朝生

幻冬舎メディアコンサルティング

トラックドライバーというと、デコトラで疾走する“トラック野郎”をイメージする人がいるかもしれません。しかし実際、現代のトラックドライバーは、自立して活動する“物流のプロフェッショナル”です。 トラックドライバ…

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