投資判断はトップダウンとボトムアップ方式の併用
幾田 フィオナさんの運用手法についてお伺いしたいのですが、ポートフォリオの組入れにおいて、どのようなプロセスで投資判断をしているのかお聞かせいただけますか?
フィオナ 私たちの投資プロセスは2つに分かれています。ポートフォリオを構築する上で、トップダウンとボトムアップの判断を取り入れています。
トップダウンにおいては、ドイツに本拠を置き、大株主でもあるユニオン・インベストメントからの情報をもとにマクロ経済の展望を構築します。そして、社内のアジア債券チームで、アジア各国の10年債のイールド、通貨、信用スプレッドの予想値を国毎に毎月算出します。これらの月末付けのデータをもとに、月初に会議を開き、国別ならびにセクターの組入れ割合を協議し決定します。その結果を、毎月ポートフォリオに反映しています。
一方、ボトムアップにおいては、過去2年の企業のパフォーマンスを精査し、格付け機関による格付けを加味することによって、各銘柄にスコアをつけます。さらに、社内での予測値を加味して、各銘柄の信用度を算出します。レーティングにおいては、トップダウンの判断も考慮します。とくに中国の銘柄においては、政府が投資している銘柄は、レーティングを上げるといった判断をします。
このようなプロセスを経て最終的に算出された社内のレーティングは、社外のレーティングと異なることがあります。社外の格付け機関はトップダウンを重視しているのに対し、私たちはボトムアップを重視しているからです。これらの違いに着目すると、売買判断に非常に役に立ちます。
流動性の低い債券は基本的に調査対象外
幾田 モデルにおいて、過去2年のデータを採用しているようですが、その理由はなんですか? さらに過去をさかのぼったデータを使用することもできると思いますが。
フィオナ 私たちは、最新の情報に着目しています。2年間のデータに加えて、四半期、年度毎の細かな単位の数値も見ています。近年の経済状況において、数値は悪化しており、過去2年のデータを参照することは、とても保守的で安全な手段だと考えます。
加えて、調査の対象としている銘柄についてお話します。投資適格債券においては、発行額は7億米ドル以上、2銘柄以上発行している企業という条件を設けています。流動性の低い債券は調査の対象にしません。ハイイールド債券についても、上場企業でアニュアルレポートなど企業情報が収集可能で、流動性の比較的高いものだけを対象にしています。