今回は、キャッシュフローを重視する築古高利回り投資で行き詰ったものの、その後金融マンならではの交渉力で長期ローンを引くことに成功、復活したサラリーマン投資家の事例を紹介していきます。※本記事は投資クラブを主宰する小嶌大介氏の著書『だから、失敗する! 不動産投資【実録ウラ話】』(ぱる出版)から一部を抜粋し、著者が見てきた投資家の失敗や、そこからどのようにリカバリーしたかを解説していきます。

耐用年数オーバーの物件が次の融資の足かせに…

スーパーキャッシュマシンをつくってリカバリー 平(たいらの)のび太さん(仮名)

 

のび太さんは、大阪在住で大阪の金融機関に勤める34歳。労働環境はホワイトでとくに不満のある生活を送っているわけではありません。

 

「不動産投資をはじめたきっかけはお客さんの影響です。法人営業をしていて楽しそうで余裕ある経営者は必ず不動産投資をしていました。人生1回きりだし、子供もいます。かつかつよりはゆとりのある暮らしをしたいと思いました。それから本を中心に不動産投資を1年間学びました。そして、キャッシュフローを重視する築古高利回り投資を2年前からスタートさせました」と、のび太さん。

 

銀行マンだから銀行評価を重視した物件に行くかと思いきや、築古で高利回り路線に進んだところが変わっています。そして、2016年2月、1棟目の重鉄マンションを法人で購入しました。築46年とかなり古いのですが、利回りが12%あり、公庫からフルローンが出ました。

 

融資期間20年、金利1.2%で決して悪い条件ではありません。CFは満室で20万円ですが、いかんせん築46年で古く手入れのよくない建物で、何かと修繕費がかかります。この費用がバカにならず、CFはだいたい15万円程度といったところです。

 

その半年後には2棟目を買いました。同じく重鉄マンションで築25年、利回り12%で購入しました。SBJ銀行で融資期間28年、金利2.775%。オーバーローンで借りることができました。

 

当時の市況からすれば利回りはいい方ですが、この物件が失敗物件だったのです。生活保護者を入れて家賃をフカしており、退去すれば家賃が下落します。今は利回り10%程度。滞納もあるためCFは10万円~11万円といまいちです。

 

「僕の場合は、スルガ銀行を使っていない分きつくありませんが、耐用年数オーバーで買っているため出口が取りにくい物件です。このリスクを考えていたら、もっと高利回りで買うべきでした。このような物件を買ったことで、次の融資に対して足かせになっていることを感じました」 と、のび太さんは言います。

木造アパート2棟の一括購入でCFが劇的にアップ

そこで今度は木造を買ってリカバリーする作戦に変更しました。その後、築29年のワンルーム10室の木造アパートをN県N市にて法人で購入しました。駅から徒歩6分でまわりに大学が複数あり、学生、単身の需要があります。利回りは15%を超えています。

 

この物件は地元の管理会社からの情報で、地主さんの相続物件でした。すでにほかの人が手をあげていましたが、地元の地銀で融資が付かず買えなかったそうです。築年数は経っているが立地も良く、三井住友トラストL&Fでスピード融資承諾を得られたのが購入の決め手です。

 

金利3.9%で共同担保を入れて、2350万円の物件価格にくわえて、諸費用分ローンまでふくめて2450万円の融資を受けられました。このタイミングでCFが月18万円~19万円アップしました。

 

さらに今年の3月には、N県T市にて木造アパート2棟一括を購入しました。信金を開拓して購入した物件です。築20年木造アパートで、弁護士の管財人案件を新規訪問の業者から紹介してもらいました。そしてなんと30年の長期ローンを引くことができました。

 

これは330坪の土地の広さがあり、実勢価格で土地値が7100万円あったためかと思われます。駅から徒歩15分以内、部屋数以上の駐車場を備えたファミリータイプと物件の力も大きかったようです。利回りは13.2%で月のCFは40万円弱です。

 

●のび太さんの購入物件一覧

①大阪府D市 重量鉄骨造マンション(築46年)

4880万円 利回り約12%

 

②M県T市 重量鉄骨造マンション(築25年)

4770万円 利回り約12%→10%

 

③N県N市 木造アパート(築29年)

2350万円 利回り約15%

 

④N県T市 木造アパート2棟一括(築20年)

6400万円 利回り約13%

何が喜ばれるかを金融機関の担当に聞いてみる

彼の特徴は自己資金をほとんど使わずに、オーバーローンを引いているところです。 物件価格は6400万円ですが、融資が7100万円とオーバーローンで出ました。これは何か裏技を使ったわけではなく、オフィシャルなオーバーローンです。

 

「CF改善の理由としては、信金の開拓ができたのが大きかったです。交渉の仕方は、まず担当者と仲良くなりました。自分が金融機関で働いているので準備運動は1年ちょっと前からしていました」と、のび太さん。

 

具体的に何をしていたのかといえば、積立預金をしたり、歳の近い担当者と仲良くなるように努力していたそうです。地味ですが金融機関が喜ぶことに積み立て預金があるそうです。のび太さんいわく、個人1口5万円、法人1口10万円などノルマがあるため、何が喜ばれるかは担当に聞いてみるのが一番いいと思います。

 

「④の物件は築20年で土地値は出ているけれど、耐用年数がない物件は難しいといわれたのですが、その金融機関の貸出金利より高く金利を支払う交渉しました。貸出金利が1.5%だとしたら、『その2倍の3%払うんで通してください!』と交渉したのです。

 

考え方として融資期間は後から伸ばせないので、目一杯とっておきます。金利は後に交渉できるので、とりあえず長期融資・オーバーローンを狙いました。それから小嶌さんに教えてもらった転貸シェアハウスも1棟運営しています」

 

こうしてある程度までCFが出るようになったので、今後は積算の資産性と混ぜながら進めていきたいと考えています。

 

「将来の目標としては、仕事はホワイトなので、がんばって成果を出して支店長くらいまではなりたいです。でも、もし道を外れたら『いつでも辞めてやるぞ!』と思っています。また、ファイナンスには強いので、投資仲間とお互いに補い合いながら、ともに成長していきたいと考えています」と、のび太さんは言います。僕としても、いつでも相談できる身近に金融マンがいるのは心強いです。

 

のび太さんは1棟目、2棟目の購入時の投資基準は築古で利回り重視、CF重視。法人でも個人でもとにかく買えるだけ買おうとしていました。そのように収益性を重視したはずなのに、手残りが少なかった・・・という残念な結果となりました。

 

一時は、規模拡大に行き詰ったのですが、トータルでカバーしようと考えました。そして、より高収益の物件を狙った結果、しっかりとキャッシュフローが出て蘇ったのです。 こうした買い方は地方高利回り1棟投資の王道です。築古の融資はとにかく難しいのですが、そこを金融マンならではの交渉力で突破しました。

 

一般的には金融機関開拓は「融資に強い支店に紹介でいく」のが鉄則です。ただ、彼の場合は同業種ということもあり、どうアプローチしたら担当者が喜ぶのか熟知していましたので、自分で切り開くことができたのだと思います。

 

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