今回は、投資用に購入した新築用地の旗竿部分で発生したトラブル解決の事例について見ていきます。※本連載では、カリスマデザイナーズ大家として活躍する小嶌大介氏の著書、『だから、失敗する! 不動産投資【実録ウラ話】』(ぱる出版)の中から一部を抜粋し、失敗経験者の実例からその原因を検証、リカバリーするための不動産投資術を解説していきます。

「再建築不可物件」に融資を引くツワモノ大家

今回ご紹介する喪倉さんは40代です。東京在住でスマホのアプリ会社の役員をしています。ゲームアプリを徹夜でつくって、その息抜きでゲームするような根っからのゲーム好きです。

 

都内中心に新築投資を進めており、これまで数棟を手掛けています。すでに売却済みの物件もあり、現在は港区にある重量鉄骨造マンション、それから中野区に土地だけ仕込んであります。

 

●喪倉さんの物件一覧

①東京都港区 重量鉄骨造マンション

土地+建物 8600万円 利回り7.9%

 

②東京都中野区 木造戸建て

土地3280万円 新築用地 シコり中(※)

 

※予想外の展開に動きがとれなくなっている状態

 

つい最近、竣工したのはJR山手線の駅から徒歩圏の重量鉄骨マンションです。工期が伸びて今年の春の繁忙期を逃したものの、完成してすぐに満室となりました。

 

「今回は初めて重鉄を建てたのですが、建物の形状から鉄骨量が増えて建設費は1500万円もアップしてしまいました。これならRCにすればよかったと後悔しました。この土地は借地権で4年前から自宅にしようと仕込んでいたのですが、『近所にスーパーがない!』と奥さんからNGが出たので投資物件を建てることにしたのです」 と、喪倉さん。

 

元々のプランで狭小でつくると利回り9.3%ですが、場所がいいので長期保有しようと思い、欲張らないプランにしたら利回り7.9%となったそうです。

 

そんなやり手の喪倉さんも、不動産投資は失敗からスタートしました。

 

「はじめようとした動機は将来の不安からです。ゲームづくりは楽しいけれど、ソフト屋は2年先が見えません。それに比べて不動産投資は収益が安定しています。人口が減るといっても、すぐに人がまったくいなくなることはないでしょうし」

 

そう思って2010年に東京都中野区に再建築不可の二世帯住宅を購入しました。再建築不可といえば僕にもお馴染みですが、利回り9.2%で買ってしまったのです。中野区は悪くはない場所と聞きますが、再建築できないと考えると低利回りです。僕なら最低20%は欲しいところです。

 

また喪倉さんがスゴイのは、この再建築不可物件に融資を引いていることです。そもそも再建築不可を評価する金融機関は少ないですし、タイミング的にリーマンショック後ですから、本来であれば融資は付けにくい時期です。さすが経営者です。

 

とはいえ、その内容は過酷なものでした。融資期間が10年で返済比率が96%だったそうです。

 

「とにかく手元にお金が残らなかったです。キャッシュフローは月々2000円で、年間の固定資産税2万円を払うとほとんど残らないのです」

 

そんな儲からない不動産投資をはじめていたにもかかわらず、2014年に都内で新築投資を行っている先輩大家さんに出会って以来、土地からプランニングする新築投資を行っています。たくましいですね!

円満な売却に欠かせない「近所付き合い」

そして問題のシコりアパート用地もまた中野区にあります。

 

「今年の1月に新宿から地下鉄で2つ目にある某駅から徒歩13分にある旗竿地を購入しました。旗竿部分に隣地が越境しており、建て直しができません。そのため周辺相場が坪200万円前後の地域で坪70万円弱で買えています。一応、隣地購入の承認はあるのですが前に進みません」

 

新築用地に建つ戸建ては廃屋です。越境しているお隣さんも窓が割れて壁が崩れているため廃屋に見えます。

 

しかし、しっかりと人が住んでいて立ち退いてくれないという困った話なのです。

 

「お隣のお宅は築50年以上経過しています。住んでいるのは老夫婦2人と40代未婚のお嬢様2人。50年間以上他人の敷地の上に住んでいる大変肝の太いご家族です。ご主人は売りたい、奥さんとお嬢さんは売りたくない・・・のせめぎ合いです」

 

こんなシコッた状況ですでに9カ月が経過。とにかく円満に売却をしてもらうべく、良好な関係を築くためのコミュニケーションは欠かせないそうです。

 

「機嫌よく挨拶したりプレゼントしたり、完全に下僕のように尽くしています。今は『土地を売るのに引っ越し先を探して欲しい』と言われているので、不動産仲介のごとく手頃な転居先(戸建て)のマイソク(物件のチラシ)を週二回郵送してます」 と喪倉さん。なかなか前途多難です。

 

しかし、彼もまた失敗を失敗とも思っていないツワモノです。今回紹介したシコッたアパート(現在、廃屋)もきっと何とかなるでしょう。

 

喪倉さんは淡々とトライ&エラーを繰り返しています。根っからモノづくりが好きなタイプなのでしょう。つくるモノは違いますが、僕と同じ匂いを感じます。新築への知識が深く、難しい不動産投資を行っているにもかかわらず、上からものをいう感じもありません。

 

おそらく日進月歩な環境で生き抜いてる彼からすれば、不動産投資の世界はゆっくりしているのではないでしょうか。当たり前のように失敗すれば、成功もあるというのを繰り返し、そこに僕は学びがあると考えます。 また、やはり実業をしている人だけあって着実に融資をつけています。

 

いわゆる高属性サラリーマンのように「メガバンクで金利0.5%で引きました!」ということはないのですが、皆が使っていないような地場の金融機関を味方につけています。1棟目の返済比率96%はシャレになりませんが、その辺は自営業者らしく多少粗くても前進する・・・確実に稼ぎ出せる人の考え方です。

 

そんな喪倉さんがどうして僕の仲間になってくれたのかといえば、新築用地を仕込むと大抵その上には廃屋が建っているそうです。廃屋をつぶして新築を建てる……いわば輪廻です。そこで廃屋にもっと強くなるために、僕に興味を持ってくれたそうです。新築のケースばかりが続いてしまったので、次回は僕も得意とするボロアパートの事例を紹介します。

だから、失敗する! 不動産投資【実録ウラ話】

だから、失敗する! 不動産投資【実録ウラ話】

小嶌 大介

ぱる出版

〜失敗パターンとリカバリー研究〜 「それをやっちゃうから、失敗するんでしょ! 」 エリートほど失敗する! ★「誰にも言いたくない失敗談」を赤裸々に告白した16事例 投資クラブを主宰する著者が、恐ろしい失敗事例…

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