今回は、自己資本0円で投資用物件購入が可能になるいわゆる「スルガスキーム」を実際に利用した投資家の事例を見ていきます。※本連載では、カリスマデザイナーズ大家として活躍する小嶌大介氏の著書、『だから、失敗する! 不動産投資【実録ウラ話】』(ぱる出版)の中から一部を抜粋し、失敗経験者の実例からその原因を検証、リカバリーするための不動産投資術を解説していきます。

スルガ銀行に助けられた投資家もたくさんいたが

本連載では金融機関の名前を実名で紹介しています。

 

スルガ銀行の入口で失敗した人たちがいる一方で、同じくスルガ銀行を出口として使っていい思いをした人もいます。

 

細かくいえば2017年の夏ごろまでは融資がよく出ていて、物件を高く売却できました。事実、僕のまわりでも売却で熱くなっていた時期でした。そのような人の出口として受け皿になったのが、これから紹介する1棟マンションで失敗してしまったサラリーマン投資家の皆さんです。

 

ただ、1棟マンションで失敗した人と「かぼちゃの馬車」で騙された人たちを比べると、まだ不動産投資への理解があるように思えます。どちらも高属性でいわゆるエリートが多いのですが、スルガスキームで地方の物件を買っているような人たちは、そこそこ不動産投資の勉強をしているタイプが多いようにも思えます。彼らは本を読んで勉強した結果、「レバレッジをかけて投資をしたい」と地方中古1棟マンション投資を選んでいます。

 

ここでご存知ない人のためにスルガスキームを説明します。このスキームは、スルガ銀行の基準を満たす物件を購入していくことです。スルガ銀行は審査スピードが早く、買付が殺到するようなときには、いち早く融資をつけることができます。そのためスルガ銀行で借りて、その後に借り換えるようなやり方をする投資家もいました。その場合、スルガ基準であると同時にほかの銀行の評価基準を満たす物件を選定しなくてはいけません。

 

その後、市況が過熱してくると不動産業者が融資アレンジ付きという形で、はじめからスルガ銀行の融資付きの物件を売るようになってきました。こうした形で自己資金を使うことなく購入するのが、いわゆるスルガスキームの王道です。

 

その際に「かきあげ」と言われる二重契約書をつくったり、今問題になっている「エビデンス改ざん」(20万円の預金を2000万円に改ざんするなど、資産を多く見せる不正)、「レントロール改ざん」(相場より高い家賃で客付して表向きの利回りを上げる不正)などをしてムリヤリ融資をつけてしまいます。このような危険な裏技を使ったやり方は、不動産会社の存在なくしては絶対にできないことです。

 

そうした不動産会社に対して、無知で騙されてしまっているケース、騙されていなくてもどれだけのリスクがあるのかよく理解していなかったケース、むしろ確信犯で自己資金0円で物件を購入したいと、あえてスルガスキームを利用するケースもあります。

 

その後、順調に賃貸経営ができていればいいのですが、強引なスルガスキームで物件を購入して、うまく運営できずに苦しんでいる人が後を絶ちません。

 

スルガ銀行は今でこそネガティブなイメージを持たれていますが、今から6〜7年前のまだ高利回り物件がたくさんあった時代には、金利4.5%であってもCFがちゃんと出ました。当時は築古木造アパートにも融資をしていましたから、スルガ銀行に助けられた投資家はたくさんいたはずです。年収がスルガ基準を満たしていなかった僕からすると「高嶺の花」銀行でした。

 

それが市況が過熱して低利回り物件ばかりとなったタイミングで、高金利でハイレバレッジ投資をすれば、失敗率が高まるのは当然でしょう。購入時には見えていなかったことが、物件を買って冷静になれば、徐々に見えてきます。スルガスキームで地方物件を買って失敗した人は、自分が取ったリスクが大きすぎたことを冷静に受け止めているようにも思えます。

「もっと儲かる投資をしたい・・・」

スルガスキームで3棟買って沈んだ男 萎谷堅志さん(仮名)

 

埼玉県在住の萎谷さんもまたスルガ銀行で「出口物件」を買ってしまいました。彼は40歳そこそこの医療系サラリーマンです。不動産投資をはじめたのは2015年のことで最初に買ったのは中古の区分マンションでした。

 

「なぜ不動産投資をはじめたのかといえば、サラリー以外の副収入を得たいというよくある理由からです。それで業者セミナーに勉強もせず参加して中古区分を買いました。場所は都内の好立地です。CFは2戸合わせて30万円。大きく儲かるものではないですが、すごくマイナスではないという感じです」 と萎谷さん。

 

ここまで利回り計算することもなく、なんとなく買ってしまったそうです。区分マンションで損を出している人も多いので、プラスだったらいいじゃないかという話ではありますが、税金を加味すると手残りは6万円だったそうです。

 

「3000万円を超える借金までして、こんな微々たる金額では投資としてどうなのか、買ってから気が付きました。もっと儲かる投資をしたいと思って、そこから1棟物件を意識しはじめました」

 

それが地獄への入口ということなのですが、この時点ではまだ勉強はしていません。まるでカモがネギをしょったような状態で、2016年に誰もがその名を知るような某有名業者さんの元へ面談に出向きました。

 

「属性的にはクリアしているし勤続年数も長いので、1棟マンションは買えるという話でした。とはいえ年収からいうとそこまで金融機関は選べません。で、お決まりのスルガ銀行です。とりあえず手金を出さずに買えるという話で、立て続けに3棟買いました」

 

ふわっとした印象の萎谷さんですが決断力はあります。こうして、あまり儲からない1棟物件を買ってしまいました。重量鉄骨物件はすべて築年数が20年オーバー。3棟合わせても月額のCFが30万円くらいで、とくに④大阪府A市の物件がいまいちだそうです。

 

●萎谷さんの物件一覧

①東京都品川区 RC造(中古区分)

1630万円 利回り8% 

 

②東京都渋谷区 RC造(中古区分)

1680万円 利回り約8% 

 

③千葉県C市 重量鉄骨造マンション

3430万円 利回り約11% 

 

④大阪府A市 重量鉄骨造マンション

4400万円 利回り約10% 

 

⑤大阪府O市 重量鉄骨造マンション

7250万円 利回り約10%

 

「1.5億円の借金があってCFは年額で360万円程度ですから赤字ということはないのですが、やはり良いわけではありません。冷静に考えて退去が続いたり、大規模修繕でお金がかかると利益はあっという間に吹き飛んでしまうのではないのか。そう危機感を覚えて、ようやく勉強をしはじめました。そこではじめて自分が『人の出口物件』を買ったことに気が付いたのです」

失敗したら「損切りして手仕舞い」という選択肢も必要

そう彼が買ったのは「出口物件」。萎谷さんが物件を買ったおかげで、どこかの投資家の利益が確定されました。

 

じつは萎谷さんが物件を買った2016年~2017年の市況からいえば、利回り10%~11%というのは、そこまで悪くありません。数値的にはもっとヤバい人は世の中にゴロゴロいると思います。それでも、この物件を今後高く売ることは難しいです。

 

萎谷さんは「とりあえず今できることはなにか?」を考えたそうです。その答えは、中古区分マンションを売ってとりあえず現金つくる。そして、収支の悪い大阪府下物件を売却する。幸い中古区分は好立地ですから、売れないことはないはずです。

 

とはいえ、今はタイミングがよくありません。融資がつけば買主も見つけやすいですが、全体的に融資が厳しくて、とくに地方物件を売るのはなかなか大変です。だから、高く売るどころか値段を下げて売らなくてはいけない……つまり、損切りをすることになります。でも、失敗したら損切りして手仕舞いするというのは非常に大切です。

 

実際のところ、失敗する人は自分が失敗している人に気が付いていないことも多いです。でも萎谷さんは気が付いたのです。そして現実を冷静に見つめて、どうしたら前に進むことができるのかを考えているわけです。この状態は失敗ともいえますが、まだあきらめていないからアウトではありません。

 

彼が失敗した原因は、全く勉強なしで不動産投資を始めたことです。その結果、高い勉強代として損切りを選び、今はその準備を進めています。今だけを切り取ると、「絶賛大失敗中の大家さん!」ですが、おそらくマインドの部分では救われている気がします。それは僕らの仲間であることが大きいと思います。傷を舐め合うのではなく、次に進めるためにはどうすればいいのか、常に考えて皆で知恵を出し合っています。次回紹介する吉田さんも行き詰まりからどう脱出すればいいのかを考えて、圧倒的な行動力で壁を打ち破ろうとしています。

だから、失敗する! 不動産投資【実録ウラ話】

だから、失敗する! 不動産投資【実録ウラ話】

小嶌 大介

ぱる出版

〜失敗パターンとリカバリー研究〜 「それをやっちゃうから、失敗するんでしょ! 」 エリートほど失敗する! ★「誰にも言いたくない失敗談」を赤裸々に告白した16事例 投資クラブを主宰する著者が、恐ろしい失敗事例…

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