日本の不動産投資セミナーに殺到する海外富裕層たち
シンガポール在住、ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。日本では「不動産は東京オリンピック後」と考えている人も多いですが、海外の富裕層にとっては東京一等地の不動産はまだまだ投資先として魅力的なようです。
株式会社ブリッジ・シー・エステートの代表取締役社長・澁谷賢一氏によると、シンガポールで開催したセミナーに当日参加したシンガポール人が、その場で現金購入を決めるケースもよくあるとのことです。また、日本に住んでいる中国人向けに中古不動産セミナーを開催すると、多数の人が受講するそうです。なぜ、海外のお金持ちは日本の不動産に投資するのでしょうか。
彼らの多くは、自国の高度経済成長期に、不動産で財を築いてきた成功体験があります。自国だけではなく、オーストラリア、イギリスなど不動産市場が整備され、投資をしやすい海外に目を向けている人たちも多く、海外の不動産投資に慣れています。そのため、物件を見ずに決めることもよくあるのです。
アジアの不動産市場と比較すると、日本は割安?
アジアの表面賃貸利回り(Global Property Guide)の平均相場ランキングを見ると、1位がインドネシア(8.61%)、2位がフィリピン(6.13%)、3位がカンボジア(5.33%)、4位がタイ(5.13%)、5位がマレーシア(3.72%)、6位が日本(2.66%)、7位が香港(2.62%)、8位がシンガポール(2.54%)、9位が中国(2.1%)、10位が台湾(1.57%)の順になっています。
日本の不動産は先進アジアのなかでは利回りがよく、東京・中央区の物件だけに限ると、利回りは4%を超えてきます。「東京で利回り4%」と聞くと、旨味を感じるようで、シンガポール人など外国人富裕層からの人気が高いのです。台湾、シンガポール、香港など、割高感があるアジア市場と比べると、日本の不動産の利回りはリスク対リターンがよく見え、少額から投資できるのも大きな理由です。都心のワンルームマンションは2000万〜3000万円で、シティエリアのファミリータイプだと2億円前後するシンガポールの不動産と比べると気軽に手を出しやすいのです。
シンガポールでは、小ぶりで安い金額の不動産を探すのは至難の技です。そのため、日本のワンルームマンションは人気が高く、即決で現金購入する人も多いのです。ちなみに、日本の永住権を持っている外国人は、日本の金融機関でフルローンの借り入れをして物件購入することもできるので、こういった手軽さも人気の理由のひとつでしょう。
日本以外のアジアへの不動産投資としては、高い利回りが期待できるフィリピンやタイなどが人気です。先日、インド人の金融業者から提案されたタイの物件が、一等地でなんと3億円もするコンドミニアムでした。3億円にもなると、融資を受けないと庶民には手が届かない金額です。タイとはいえ、超富裕層向けの物件は、もはや日本の六本木ヒルズを超えるような値段になってきているのです。
また、シンガポールの国土の大半は国有地であり、多くの物件の所有権が99年など長期間のリースホールド(定期借地権)となっています。日本の不動産の多くは、外国人であっても、フリーホールド(永久所有権)での物件購入が可能です。
また、シンガポールの不動産を外国人が購入する場合、高額な加算印紙税が課されます。日本では、こうした外国人への規制が少ないため、外国人にとって魅力的なのです。
このように、中国を先頭に、アジアで増え続ける中間層や富裕層は、日本の不動産を虎視眈々と狙っているのです。そのため、オリンピックが終わっても、特に一等地はすぐに安くなるとは考えにくいでしょう。
花輪 陽子
ファイナンシャル・プランナー