中国・宋代の水墨画が「約68億円」で落札
2018年11月、世界的に有名なクリスティーズのオークションが香港で行われました。このオークションは、宋の時代の詩人・書家である蘇軾(そしょく)の水墨画が、アジアのクリスティーズにおける史上最高額の約68億円で落札され、大きな話題になりました。
オークションでは、水墨画はもちろんのこと、世界一大きなサファイアや、巨大なダイヤモンドのネックレス、超高級時計、大量のエルメス・バーキン(その多くはクロコダイルなどのレア物や超高級品)のほか、ピカソやモネ、ゴッホなどの有名絵画も勢ぞろいしました。商品の前にロープがかけられることもないため、たくさんの芸術品、工芸品を間近での鑑賞が可能です。
サザビーズやクリスティーズのオークションは、超富裕層だけの世界で、自分には関係ないと思っている人も多いことでしょう。実は、まったく手が届かないものばかりではないのです。
たとえば、クリスティーズのオークションの場合は、下は約2万円から上は数百億円まで幅広い金額のものを取りそろえています。世界各地で年間350回以上ものオークションを行っており、2018年度の売り上げは過去最高の約7,600億円を記録しました。
2018年度の落札記録によると、絵画で約508億円、不動産で約406億円、宝石で約80億円、時計で約20億円、バッグで約4,000万円、ワインで約3,000万円(1ダース)などの記録が残っています。最近は、ヴィンテージの時計やワインなどに人気が集まっているようですが、さすがに超高価なワインをがぶ飲みした人はいないそうです。
ここで不動産と聞いて、「オークションで不動産を落札?」と意外に思う人がいるかもしれません。しかし不動産も「一点物」なので、宝石と同じように価値を感じている富裕層が多いのです。希少価値の高いものには、驚くような高価格がつきます。
では、こうした高級品を、いったいどんな人が出品しているのでしょうか。当然、出品者の多くは、世界中にいる資産家たちです。本当の富裕層は会場には来ておらず、代理人に売却を依頼するという話も聞きます。資産家たちが不動産を出品する理由としては、相続が発生した、借金ができた、離婚したといった理由があるようです。
人口「7,000万人」近い大都市圏を構築する計画
バブル真っ盛りの1980年代、日本のオークション市場は世界で最も活発でした。しかし、バブル崩壊以降は、チャイナマネーの影響もあり、市場の賑わいは完全に香港へと移っています。
リッチな印象のある香港ですが、実際、物価は非常に高くなっています。物価が高いと言われるシンガポールで暮らす筆者ですら、高いと感じるほどです。シンガポールと比較しても1.5倍ほど、日本と比較すると2倍以上物価が高いように感じました。
そんな香港に関する最近のビッグニュースは、「グレーターベイエリア構想」の本格化です。グレーターベイエリア構想とは、香港・マカオや中国南部の広州、深センなどの大都市を結ぶインフラを整備し、人口7,000万人近い大都市圏を構築する計画のことです。
その一環として、2018年9月には香港と広州を結ぶ高速鉄道が開通し、出入国の手続きをする時間を含めても、1時間程度で行き来ができるようになりました。
さらにその1ヵ月後には、珠海(広東省にある経済特区、マカオと隣接)と香港を結ぶ巨大な橋(港珠澳大橋)が完成。香港~珠海間の所要時間は、これまでは船で4時間かかっていましたが、橋の完成で30分にまで短縮されています。
香港までの移動時間が大幅に短くなった広州は、いま注目の自動運転技術やAI技術の開発を手掛ける企業などが拠点を置く先進都市です。香港と広州は、お互いに強い影響を与え合いながら、発展を続けている状況にあります。将来的に、ますます世界の注目を集めていきそうなこの2都市から、今後も目が離せません。
花輪 陽子
ファイナンシャル・プランナー