約20%もの国家予算を「教育」に投入
英国の教育専門紙が発表した「世界大学ランキング」(2017年9月)によると、シンガポール国立大学は22位とアジア首位に位置しています。この順位は、日本の東京大学(46位)を大きく上回ったものです。
2015年に15歳を対象に行われた国際学力テスト(PISA)では、科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの三分野すべてでシンガポールが世界首位となりました。一方、日本は科学的リテラシー2位、読解力8位、数学的リテラシー5位という結果でした。
これだけシンガポールの学力が高い理由は、約20%もの国家予算を教育に投じているうえに(日本は5.5%)、各家庭でも子供への教育投資を惜しまない文化にあります。
シンガポール国民の多数を占める中華系には「倹約をして、次世代のために惜しみなく投資をする」という言葉があります。明晰な頭脳を手に入れることができれば、お金はあとから作ることができるという考えなのです。シンガポールの政治家で初代首相を務めたリー・クアンユーの「シンガポールの最大の強みは人材」という考えのもと、国を作る指導者や管理職の確保を教育のゴールとして、早期から成績別で生徒を選別して学校のコースを分けています。
ローカルの保育園や幼稚園でも、英語と中国語のバイリンガル教育は当たり前で、AI時代に欠かせないプログロミング教育が充実している学校もあります。4歳からそろばんを習ったり、中国語の書き取りの宿題が出たりして親も大変ですが、日本人の家庭で育った子供でも中国語が話せるようになります。
しかし、多くの日本人を含めた外国人はインター校を選びます。ローカル校の入学可否は、親の出身校、学区、ボランティアなどによって左右され、外国人にとって不利になるためです。
シンガポールは、東京23区と同程度の国土に20校以上のインター校があります。教育熱心な家庭が多く、教育レベルが非常に高いのです。また、多くの学校では日本人の割合が非常に低く、子供も英語を話さざるを得ないため、英語力が自然と身につきます。ほとんどの学校からスクールバスが出ており、遠くても1時間以内で通学できるため、選択肢はとても多くなります。
「多様な発想」を重視する教育スタイル
日本には、英語で授業を行うインター校が20校以上あります。しかし、東京都内のインター校は10校(世界共通の大学入試資格である国際バカロレア(IB)の認定校数、一条校を除く)とシンガポールより少なくなっています。また、都内(23区外を含む)の面積はシンガポールより広いので、東から西までバスで移動ということは難しいでしょう。そのため、自宅から通える範囲で考えると選択肢は限られます。また、日本人の割合は全体で約4割と高くなります。
日本では、学校の受け入れ以上に希望者が多いので、すべての人が希望の学校に入れるわけではありません。シンガポールと同様に富裕層の多い香港でも、学校の受け入れが需要に追いついておらず、希望校に入るのが非常に難しいと聞きます。その点、シンガポールは学校の数も多いので、希望に近い学校を選ぶことが可能になります。
シンガポールではさまざまな国の駐在員が生活しているため、日本、米国、オーストラリア、カナダ、インドなど、多くの国の学校があります。とはいえ、かつて英国領だったこともあり、シンガポールでは英国系インター校が目立ちます。
国際バカロレアと、それにつながる小・中・高校生の教育プログラムを取り入れたスクールも多く、さまざまな国の大学試験制度に対応も可能です。
インター校の多くは3歳前後から18歳までの一貫制で、大学入試までは受験の心配もないため、のびのびと好きなスポーツや音楽、アートなどに打ち込むことができます。語学教育では、英語に加えて、中国語かスペイン語を第二外国語として低年齢から学べる学校が多いです。また、放課後のアクティビティーも充実しています。多いところでは、数百のアクティビティーを用意しており、学校側も家庭もそれを全力でサポートします。
日本の教育は均質的な人材を育成することに優れていますが、シンガポール、特にインター校は発想力を育む教育スタイルです。夏休みも2ヵ月程度と長く、その間にキャンプや自然体験といった体験型の学習を提供する学校もあります。最近では、夏季に日本からキャンプに参加をする親子が目立ってきました。まずは、お試しにキャンプがお手頃かもしれませんね。
花輪 陽子
ファイナンシャル・プランナー