「ベトナムの富裕層」は、急速に増加している
ベトナムの旧正月明け、米調査会社・ウェルス-エックス社による世界の富裕層を分析したレポート、「ハイネットワースハンドブック 2019」の発表がありました。これによると、2018年~2023年までに、100万USD(約1億1000万円)以上、3000万USD(約33億円)未満の資産を有する富裕層の年間平均増加率は、ベトナムが+10.1%と世界第4位になっています。
1位はナイジェリアで+16.3%、2位エジプトで+12.5%、3位バングラデシュで+11.4%でした。第5位はポーランドで+10%、第6位は中国で+9.8%という結果になっています。
前回ご紹介した通り(関連記事『経済成長が続くベトナム…2019年の不動産市場を予測する』参照)、2018年の経済成長率7.1%を背景に、ベトナム経済は内需・外需向けに関わらず、大きな成長を遂げています。ベトナムの富裕層ばかりではなく、これを見込んだ外国人投資家や外資企業にとっても、魅力的な市場となっているのです。
ホーチミン市の最新の不動産市場の動向は?
ベトナムの不動産市場は2分化傾向があり、富裕層向けの市場とミドル層向けの市場は当然ながら異なります。
ベトナム人の傾向として、銀行預金金利が7~8%(ベトナムドン金利、USDは0%)あっても預ける人は少なく、金利で稼ぐよりは市場で資金を動かし、利益を大きくすることを望む人が多いです。日本人の感覚からすると、銀行に預けた方が確実で、リスクが少ないように思えるのですが、これまでの歴史的な事情もあってか、紙幣(自国紙幣)に対する信頼度は低く、「現物」に変える傾向が強いのです。その対象が、金(ゴールド)や不動産となります。
不動産では、ベトナムでも中心地により近い地域に投資する傾向があります。その理由は「中心地の価値は落ちない」という土地神話に基づいています。特にホーチミン市中心地1区は「不動産のダイヤモンド地域」といわれ、ホーチミン市だけではなく、ベトナム全土の投資家から最も注目を集める地区です。1区に不動産を持つことは、成功者としてのステータスに繋がっています。リーマンショックの際にも大きな値崩れはなく安定しており、常に需要が供給を上回っている地区だといえます。
ベトナム人は基本的に戸建てを好みますが、供給が少なく、もともと価格が高い地区である点から、購入できる層はおのずと限られています。そのなかでも戸建てと比べて平米単価がお得な「コンドミニアム」は、かねてより投資の対象になっていました。そして今後も、戸建てとの販売価格バランスを見比べて「お得感」を感じられるならば、購入の対象になることが予想されます。
現在の1区中心地のコンドミニアムの販売単価は、1平米あたり5500~1万3000USD(約60万~140万円)と高騰しており、周辺の戸建ての販売価格より高い物件もあります。ベトナム人投資家がこの状況をどのように判断して投資に繋げて行くのか、今後の不動産市場の動向を見極めるうえでも、筆者は大変注目しています。
同地区の外国人向けの物件ですが、外国人枠の関係で購入できる戸数が限られているため、物件の完売状態が続いています。外国人投資家の多くは、中華系・韓国系が占めています。インカムを重視する傾向にある日本人には、なかなか手が出しづらい状況が続いているといえるでしょう。
ミドル層の傾向も、戸建て志向は変わらないものの、価格が高騰している中心地や、中心地近郊では購入できない状況が続いています。ミドル層の住居用としての購入価格は、9万~14万USD(約1000万~約1500万円)で推移しており、中心地近郊では戸建ては購入できず、ホーチミン市郊外へ移行している状況です。職場(中心地)に近い環境で住居を求めるなら、コンドミニアムも対象になります。ただ、9万~14万USDの2bed以上を求める場合は、自ずと中心地から離れて行くことになります。
上記の状況をまとめると、富裕層もミドル層も戸建てを求めているものの、価格の上昇もあり、中心地付近で戸建てを購入できる割合は限られています。また、条件が合えば、コンドミニアムも投資や住居の対象になります。
以上を踏まえながら、ホーチミンでの不動産投資を検討する場合は、購入する物件をベトナム人目線で見たときに、投資物件と居住物件のいずれに該当するのかを見定めることが重要でしょう。そして、しっかりと調査を重ねたうえで「ハズレ物件」を掴まないよう注意することが大切です。