患者が調べているのは「医療技術の専門性」
無事、開業ができたら、次に取り組むのはどのようにクリニックの認知度を上げるか、ということになります。
まず患者のニーズを分析するために、厚生労働省が2017年に調査した「受療行動調査」で患者の行動を分析してみましょう。
外来の患者の場合、病院を選んだ理由(複数回答)は1位が医師による紹介(37.3%)、2位が交通の便が良い(27.6%)、3位は専門性が高い医療を提供している(23.9%)、4位が家族・友人・知人からのすすめ(18.5%)、5位が医師や看護師が親切(15.6%)、6位が建物がきれい、設備が整っている(7.8%)となっています。
このデータを見ると医療機関を選ぶときに患者が求めるのは、まずは医師による紹介という信頼感だということです。次に信頼感と同じぐらい重要なのが立地という利便性です。その次に重要なのが、専門性の高い医療を提供しているという安心感です。
「受療行動調査」は経年で調査をしていますが、数年前までは「家族や友人、知人のすすめ」という口コミの方が医療機関を選ぶ理由として上位にあったのですが、スマートフォンが普及することにより、家族や友人、知人の口コミや紹介よりも医療技術の専門性を調べていることが明らかになりました。
他のクリニックと常に比較されているということを念頭において医療技術や専門領域の情報を日々、発信していくことが重要です。そして、その上でより多くの患者さんに来院してもらうためには安心感や信頼感もアピールすることがとても重要になります。
次に医療機関を選択するときに活用する情報源についてデータを分析してみましょう。そもそも患者は、医療機関を選ぶときにどのような情報を調べるのでしょうか。病院を選ぶときに情報を入手すると答えた人は外来で77.7%、入院では82.6%になっています。特に情報を入手せずに選ぶという人は、外来で17.2%、入院で14.1%になっています。外来も入院も事前に調べてから受診をする人がほとんどということです。
情報発信を正しく行っていないクリニックは、そもそも選ばれない時代なのです。
それでは、患者はどのような媒体で医療機関の情報を調べているのでしょうか。
外来の場合、1位が家族・友人・知人の口コミ(70.6%)、2位が医療機関が発信するインターネットの情報(21.1%)、3位が医療機関の相談窓口(16.3%)、4位が医療機関、行政機関以外が発信するインターネットの情報(SNS、電子掲示板、ブログなどを含む)(12.0%)でした。
昔から家族や友人、知人の口コミは圧倒的に多いのですが、近年の特徴はインターネットの情報の重要性が高まっていることです。2位のホームページなどの情報発信と4位のSNSでの情報発信の割合を合わせると、約3割がインターネット経由での情報ということになります。
また、1位の家族や友人、知人の口コミの際にも恐らくクリニックを紹介するときには、クリニックのホームページを見せて紹介するというケースが多いと思います。つまり、それだけインターネットで情報を発信するということは重要なことなのです。
さらに重要なのが、4位の医療機関、行政機関以外が発信するインターネットの情報(SNS、電子掲示板、ブログなどを含む)です。検索エンジンの上位表示はもとより、まとめサイトや口コミサイトなどの情報もチェックして情報発信をすることが大切です。
[図表1]どうやって病院の情報を調べるか?
明確な診療内容・料金が、患者の信頼につながる
ただし、ホームページを作ればいいというものではありません。医院で受診の相談をしなくても、ホームページを見れば受診するという決断ができるほどに豊富な情報を掲載しておく必要があります。過去に受診につながった説明の方法をそのままホームページに掲載するのもいいでしょう。
たとえば、美容外科業界の不明瞭な料金体系などを一新した湘南美容外科のホームページを見てみましょう。自費診療にありがちな不透明な価格から内容まで非常に詳しく書いています。自費診療の場合は価格設定を自由にできるため説明が不明確になりがちですが、診療内容などを明確化してきっちり情報発信することが患者からの信頼につながります。
[図表2]湘南美容外科ホームページの説明文
このように、クリニックに行かなくとも治療や施術に関してある程度の情報を取得できるようなホームページを作成するようにしましょう。
他の医院と比べて何に強みがあるのか、自分の医院の専門性をアピールすることも大事です。来院をしてくださった患者さんに「なぜ、自分の医院を選んだか?」ということについて、問診票でアンケートを取ると良いでしょう。問診票のアンケートも患者さんが答えてくれない、ということであれば、口頭で聞いておくと良いでしょう。
診療科目によっては、アナログ戦略も重要に
その次に重要なのが、地域の医院として目につきやすい工夫をすることです。病院を選ぶ人の約半数が、自宅や職場に近いということを選ぶポイントとして挙げています。医院の周辺に住んでいる人や働いている人がすぐに見つけやすいように看板を作ってみたり、パンフレットやチラシなどの紙ベースの販促物を用意したりすることも大切になるでしょう。
また、診療科によってもアプローチの仕方はそれぞれです。たとえば、一般内科の場合、後期高齢者と呼ばれる患者を集めたい場合は公民館の健康セミナーなどで講演会を行うなど、口コミを増やすアナログ戦略を取っていくことも重要です。
藤城 健作
ウェルス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長