法定相続を順守した結果、一軒家が19人の共有名義に

今回は、法定相続を意識し過ぎたことが原因で相続が失敗した事例を見ていきます。※家庭裁判所に申し立てられる遺産分割事件の75%以上は遺産額5000万円以下の案件。相続問題は、お金が少ないほうが深刻化しやすいのです。その原因として、法定相続分を「機械的に・平等に分ける」従来の相続の考え方があります。本連載では、機械的な平等を排し、公平感があるように分ける「不平等相続」を提案するとともに、相続人の誰もが納得する相続のあり方を考察します。

発端は、1億円の家を「みんなで共有せよ」との遺言

ここで、法定相続を意識し過ぎたことが原因で相続が失敗した事例を紹介しましょう。

 

吉田勇樹さん(仮名/72歳)には、和恵(長女)、美和(次女)、俊哉(長男)、浩二(次男)の4人の子どもがいました。吉田さんは、昔から平等意識が強く、相続でも4人の子どもには、平等に相続させたい、子どもに差別はいけないと考えていました。

 

吉田さんは、都内に家を持っており、土地の評価は1億円になりました。自分が亡くなった後に子どもたちが争うのは見たくないと考えて、遺言書も作成しました。1億円の家を皆で共有するように、遺言を残したのです。

 

家庭裁判所で検認をしなければいけない自筆遺言書ではなく、公証役場で作成した公正証書遺言です。内容はもちろん、全ての財産を法定相続分で分割するという内容にしました。

 

平等に相続するという考え方は、4人の子どもたちにも引き継がれ、父に相続が発生したときには、遺言に則って家を4人で共有するということに決まりました。幸い兄弟仲もよく、父の亡き後も兄弟喧嘩することなく過ごしていました。

 

さて、それから30年経過し、家が計画道路にかかることが決まり、市役所の人が訪ねてきました。今年中に契約して、来年3月までに明け渡してほしいということでした。ところが、家は4人の子どもの共有財産です。4人分全員の同意が得られないと自宅を処分することができません。市の担当者が調べてみると、すでに4人は全員他界しており、4人の子どもの内、一部相続放棄をしている相続人もいるとのことで、孫が財産を相続する代襲相続が進んでいました。そして、相続を繰り返した結果、現在の所有者は何と総勢19人になっていました。親戚といえども面識のない人も多数おり、なかには海外居住の人もいて、全員の同意を得るのにとても苦労しました。

 

平等相続、法定相続分をあまりに意識し過ぎた結果で、大変な思いをしたということです。

不平等=公平感があるように分ける

法定相続分で相続は分けなければいけない、という間違った考え方が流布していますが、相続は平等ではなく不平等で分けても良いのです。

 

しかし、私がいう不平等とは公平感があるように分けるということです。いくら不平等で分けるといっても、不公平であれば、お互いに納得ができずに、それが新たな火種になってしまうことになります。

 

では、平等と公平(公正)はどう違うのか? 瞬時に理解できる絵をご紹介しましょう。

 

[図表]平等と公平の違い

 

いかがでしょうか? 上記の平等の絵では、3人の子ども全員が同じ大きさの箱を1つずつ与えられ、野球を観戦しています。3つの箱を一人1箱ずつもらっていますので、平等ですね。しかし、背の高い子どもや中くらいの背の子どもは野球観戦ができても、背の低い子どもは、補助の箱が足りないため、見えません。しかし、公平の絵では、背の高い子どもは箱なしでも見られることから、自分の分を背の小さい子どもに与え、2箱使わせてあげているので、3人全員が野球を楽しめるようになっています。

 

一人ひとりの事情に合わせて、補助を適切に配置している、これが公平という考え方です。

 

皆さんはこの絵は納得していただけますか?

 

相続の場面でこの話をすると多くの人たちが、自分たちの相続・遺産分割の話になると別だと言い張るのです。感情的には分かるが勘定(財産)の面で納得がいかないということなのでしょう。しかし、それではいつまで経っても、相続争いは防げません。

家を守ることを前提に、皆が満足で幸せになれる相続を

これまで見てきたように、相続人も年齢、経済状況や置かれている立場などがバラバラです。その一方で、相続財産も現金といった分けやすい財産よりも、不動産や事業といった分けにくい財産のほうが多いということが理解していただけたかと思います。平等に分けること自体が難しいのであれば、不平等ではあるけれど公平感が出るように分けることを考えたほうがいいのではないかというのが、本書の提案です。

 

実際に、私はこれまで1000件以上の相続税申告書を見てきましたが、法定相続分どおりに分けている家族は、揉めた相続の結果であることがほとんどです。そういった意味では、法定相続分で分ける平等相続は、現実的な分け方ではないということです。

 

「相続財産は平等に分けなければいけない」

 

世の中では、それが正しいことだといわれています。しかし、よくよく調べてみると、相続財産もさまざまで、相続人もさまざまな事情を抱えています。平等に分けることは道理に合わないことが、よくご理解いただけたかと思います。そして、平等に分けることが、法律上でも規定されていないことも理解していただけたでしょう。相続財産を平等に分けることは、実はなんの根拠もないのです。平等に分けようとすれば分けようとするほど、誰もが不幸になるのです。

 

それならば、家を守ることを前提とした相続を目指し、皆が満足で幸せになる相続を考えたほうがより良いのです。

 

不平等といいますが、不平等は別の言葉で言い換えれば、公平ということです。相続人皆が公平で納得できるという爽快な相続(爽続)を目指していきましょう。

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株式会社財産ブレーンラスト 常務取締役

株式会社財産ブレーンラスト常務取締役。1965年7月生まれ。1988年、積水ハウス株式会社入社。戸建注文住宅および相続対策としてのアパート受注の営業マンとして約12年間従事。『相続対策=アパート建築』のスタンスに疑問を抱き、本当の相続対策を行いたいと考え、1999年株式会社船井財産コンサルタンツ(現:青山財産ネットワークス)に入社。主に個人の土地持ち資産家(都市農家、テニスクラブ、ゴルフ練習場等)の相続対策、相続発生後の遺産分割の取りまとめ、納税等の業務を行う。財産ブレーントラストの設立に賛同し、2013年4月の業務開始より参画。『お客様の期待を超えるサービスの提供』がモットー。主な保有資格は、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

著者紹介

連載相続人のすべてが満足する"不平等相続"とは何か?

相続財産は"不平等"に分けなさい

相続財産は"不平等"に分けなさい

成島 祐一

幻冬舎メディアコンサルティング

相続争いは分けるお金が少ない人の方が深刻化?家族の誰もが納得できる爽やかな相続―“爽続”に導く1冊 2016年、家庭裁判所に申し立てられた遺産分割事案の8割近くは、遺産額5000万円以下の案件でした。 これは分ける財…

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