新築アパート投資では返済比率を重視すべき理由
今回は、不動産業者が販売する新築アパートの不動産投資物件例を見ていきます。
こうした物件を建売りする業者の工程は、①土地を仕入れ、②間取りを決め、③建物を建築し、④それらにかかる原価に利益をのせて売りに出す、となります。その際、売価の決定は周辺相場での表面利回り(関連記事「利回りよりキャッシュフロー…新築アパート投資が高収益な理由」)と同じくらいになる金額に設定します。
そのため、建物の建築費用を安くして、そこに利益をのせているので、購入者から見ると割高になりやすいのです。新築アパートは、築年数の経過に伴う家賃の下落が、一定の築年数が経過したアパートよりも著しいのが一般的です。
そのため、新築時の返済比率は余裕を持って考えておく必要があります。7%の利回りの新築アパートを[図表2]のような条件で購入した場合、月々の家賃収入と返済金額は、下部のようになります。
このように返済比率が60%ですと、3分の2以上の部屋が埋まっていないと返済ができなくなる計算です。新築なので、滅多なことでは3分の1以上の退去はないと思うかもしれません。事実、私も1棟目の時は同じように思っていました。
新築の場合、建物の完成後、一斉に入居募集をするため、入居する時期がほとんど変わりません(よくあるのは3月の繁忙期前に完成させ、入居者の募集活動をするケースでしょう)。そのため、2年後の更新期に複数の入居者の退去が重なることがあるのです。
私の1棟目の物件がまさにその状態になりました。2年経った更新時期に、6部屋中4部屋から退去の連絡が来てしまいました。その時の私の返済比率は60%近かったため、すぐに2部屋を埋めないと持ち出しが発生してしまう事態だったのです。結果的には早期に4部屋を埋めることができたので、問題なく経営を続けることができました。
それでも、早く入居してもらうため、家賃を10%程度低く設定したりしましたので、利回りは下がってしまいました。このようなこともあることを想定して収支計画は考えてほしいと思います。返済が滞ることが、不動産投資家にとって最も避けたいことですので、私はこの返済比率を最も重視しています。
注意すべき「利回りを高く見せている」ケースとは
不動産投資のポータルサイトを見ていますと、このエリアで利回り7%であれば、かなりよい物件なのではないかというような新築アパートが出てきます。
興味を持って詳細を確認しますと、部屋の広さが20㎡未満、駅から徒歩10分以上、バスルームではなくシャワールームなど、どちらかというと好まれない設備、競合と変わらない間取りの場合が多いようです。
確かに新築なので修繕等の費用については、しばらく発生しないと思います。しかし、肝心の入居付けができるのかという点で疑問が残ります。部屋を借りる立場から考えると、20㎡未満の部屋は、駅にものすごく近いとか、圧倒的に家賃が安いなどの他のメリットがないと、なかなか選択しようとは思いません。
そのような状況にもかかわらず、駅から10分以上の安い土地に多くの部屋をつくり、さらに想定家賃を高めにすることで利回りを高く見せているケースが多いのです。このような新築アパートは、数年が経過して新築ではなくなり、その他の物件と比較された時に何1つ売りがなく、入居付けができなくなることが想像できます。